メイド−アリア−
使えない悪魔だ。
もっと他にいなかったんですかねぇ。
あんな、雑魚じゃあの子に勝てるわけないじゃない。
何か他の手を考えなくちゃ…
うーん…。とりあえず、邪魔な奴らは後で処すとして、問題は”器”と”鍵”か
「首尾はどうだ、アリア」
誰もいない所から声が聞こえてくる。男性の声だ。
「急に話しかけないで貰えます? 『ドク』」
柱にもたれかけ、男の気配がする方に呻くように声を発した。
「それは、すまない『レディ』」
『レディ』。アリアのコードネームだ。
「まあ、いいです。 ”器”候補と”鍵”を確認しました。 有力候補はまだ幼いですが、何か一物抱えてそうです。 戦闘に関して言えば、Aランク冒険者以上でしょう」
「ほう。 それはそれは…」
「ですが、他の”器”候補達が気にかけて可愛がっているため、手が出しづらいです。 ですので、その子を使って、他の候補を”器”として完成させようかと思います。運良く事が運べば、その子も成るでしょう」
「…いいだろう。手法は任せる」
「ええ、好きにさせてもらいます」
「「我ら、この世の総ての者に救済を与える者也!」」
スッと、男の気配が消える。
「ふぅ。 ええ、好きにさせてもらいます。妹の為ですですので。 例え、この身が穢れ、朽ち果てようともあの子だけは絶対に助けます」
メイド服を着た女はそう言い聞かせ、踵を返す。
妹、『エリナ』は病気しがちだ。
だから、ドクの元で治療を受けている。
病名は 魔素過吸気症。
これは、魔力の扱いになれていない幼い子供がかかりやすい病気で、年齢と共に治っていくありふれた病気だ。
だが、極稀に完治しない者が現れる。
体内に取り込む魔素が多く、体に蓄積していくと、体内で魔力が暴走し、体外に魔力が溢れる。最悪、死に至る事もある。
ただ、そのものが亡くなるならまだ良いほうだろう。
この病気が、治らない者は総じて魔力壺の容量が大きい。
魔力壺は魔力を使えば使う程容量が大きくなっていく。
人によって、その総量に限界があるが、これは、人の持つ防衛反応で、これ以上大きくすると制御できないというサインだ。
だが、『魔素過吸気症』はその限界を超えて、体内に魔素を吸収していく。
そして、蓄え過ぎた魔素は、一定値を超えると肉体を破裂させ、周りに甚大な被害を与える魔力爆発を起こす。
これの何が恐ろしいか。
その者が蓄えた、蓄えることができてしまった魔力にもよるが、一人の『魔素過吸気症』患者が魔力爆発を起こし、都市が一つ丸々吹き飛び、その地が不毛の地となるという災害があったのだ。
それからというものの、ある一定以上の年齢までに治らなければ、その者をその場で処分しないといけない。
エリナは今年で15歳。既に処分対象とされる年齢を越えている。 もし、これがドク以外の所で診てもらってたならば、そこで処分されているだろう。
『ドク』がどういう治療を施しているかはわからないが、偶にの面会時にあの子は、元気にしている。
だが、忘れては行けない。ドクは、善意でエリナを治療しているわけではない。エリナの生殺与奪の権は、握られているのだ。
少しでも不要と判断されれば、言わずもがなエリナはもちろんの事、『レディ』も口封じに処分されるだろう。
そうならないように、気をつけなければならない。
「そろそろ、戻って来てもおかしくない時間。 戻って、お茶の準備でもしますか」
アリアは、マリアの執務室に向かう前に食堂に向かった。




