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模擬戦!だった筈なんだけどなぁ…

今年、ラストの更新です!


 化け物の腕が振り抜かれ一葉を襲う。


「みーちゃん! 双剣!」


 そう叫ぶと、剣を持ってない方の手に長い棒状になった結晶が現れ、それを握る。

 すると、結晶が砕けていき同種の剣を握っていた。


 一葉は左手に持った剣で、伸びてきた腕をいなしながら、体を回して躱す。 体を回した勢いのまま右手に持った剣で腕を切り落とす。


「ぎぃああああ!」


 化け物を腕を切り落とされ、絶叫する。


 そこに、マリアが突っ込んでいった。


 後ろから剣を突き入れると刀身から風で舞う楓の葉が化け物の内と外から切り刻んでいく。


「マリア、うしろに飛びなさい」


 シアが告げて、マリアが化け物の背を蹴り飛ばして刀を引き抜いたあと飛び退る。

 それを見届けてから挙げた手を振り下ろした。


 無数の刀剣類が化け物の上から降り注ぎ、刺し貫いていく。


「みーちゃん、最大出力。 全力全開の一撃を出すよ!」


 二振りの剣が開き、魔力を剣身に集めていく。


 剣先から、魔法陣が幾つも積み重なって展開される。


「ってぇ!」


 2つの濃密で極太の魔力の奔流に化け物は呑まれた。


 耳を劈くような轟音が響き、熱風が一葉達頬を撫でていく。


 化け物がいた所には、放電している大きな火の玉ができていて、徐々に大きくなっていく。

 次の瞬間に、火の玉は一気にに収縮し、こぶし大にまで小さくなり、先程とは比べ物にならない衝撃を撒き散らした。


 それを察知したシアは、空から人の身を優に超える、大きな剣を一葉達の前に落とし、衝撃から身を守る盾とした。


「やりすぎよ、カズハぁ…。 はぁ…、ここじゃ無かったら、屋敷が吹き飛んでたわね」


「こ、これがカズハ君の『魔砲』…」


「これでも、多分加減はしてるでしょうね」


「え?」


「それよりも、アイツ、しぶといわね。 まだ、形が残ってるなんてね」


「うへぇ。 あれでも駄目なの?」


 カズハが身じろぎする化け物にボヤく。


 化け物は体の内に宝石みたいな物がはめられていた。

 その宝石の周りから傷が修復していく。


(あれ? さっきより傷の治りが速い?)


「みーちゃん、ブレット」


 もう一度、剣先を向け、今度は魔力弾を撃ち放った。


 すると、治りかけの肩を撃ち抜く筈だった魔力弾が宝石に吸い込まれていき、傷の治りがさらに早くなる。


「「!?」」


「あらら、魔力を吸収するのか。 じゃあ、斬ればいいね!」


「切り替えが速いですね、カズハ君は。 まぁ、でも、やる事は決まりましたね」


「ええ、そうね! マリア、カズハ付いてこれるかしら?」


 シアが手を振り、二振りの剣を手に出現させながら、一葉とマリアを挑発する。


 マリアはそれを聞いて、ニヤリと口角を上げる。


「あら、シア様。 私を誰とお思いで? 私は、五剣の一人、『剣聖』ゼファーの弟子。 そうそう、やすやすと遅れは取りませんよ!」


「僕も。 シアお姉ちゃん、忘れてない? 僕、シアお姉ちゃんに一撃入れてるんだよ?」


「ふふっ。 なら…、合わせなさい!」

 

 シアが足にグッと力を入れると、その姿がブレた。

 次の瞬間、化け物の横に剣を振り抜いた姿で立っていて、化け物の腕が宙を舞っていた。

 回し蹴りで蹴飛ばし、その先には一葉がいた。


一葉は、シアが飛び出すやいなや、足裏に磁力を生み出し、小さく爆発させる事によって、砲弾のように飛んで行く。

 シアと視線が合い、シアとは反対側に滑り込んだ。

 磁力を切り、着地して、蹴り飛ばされて来た化け物の胴を切り、振り替えり、頭を刺し貫いて地面に縫い止めた。


「お二人共、私の出番が無いのですが?」


 マリアが追い付いた時には事が終わっていた。


「おそいよ〜、マリアお姉ちゃん!」


「全くね。 剣聖の弟子が聞いて呆れるわ」


「貴方達が速すぎるんですよ!?」

 

 マリアが何か言っているが一葉とシアは笑って聞いていた。


 パァン!


 銃声が聞こえてきた。


 チュン!


 耳元を銃弾が通過していく音が聞こえてきた。


「何を敵の前でボサッとしてる!? 後ろだ!」


 遠くからジンの声が聞こえた瞬間、一葉の体が刺し貫かれていた。


「え?」


 一葉の手から剣が滑り落ちていき、間の抜けた声がでた。

 いつの間にか化け物は姿を消していて、すぐ後ろに人影が現れて、一葉の首の後に手刀を落とした。


「カズハ!」「カズハ君!」


 ドサッと、倒れ込んだ一葉をマリアは掬い取り、その場から飛び退る。


「おっト、その”器”は置いていケ?」


 マリアが横から蹴飛ばされ、一葉が奪い取られた。


 一葉を奪い取ったのは黒い肌、赤目の人の姿をした者。 普通の人と違うのは、頭に生えた巻角だろう。


「はっ!」


 シアが後ろから襲いかかり、首を斬ろうとするが、ギチギチと音をたてるだけで、刃が通らない。

 

「チッ。 どうして、その子を攫う!」


「それをお前に教える必要があるのカ? ニンゲン。 ん? お前、ニンゲンじゃないナ?」


「それがどうしたというの?」


「いヤ。 いずれにせヨ、死ぬゆくものダ。 他意はなイ。 ほウ。 はハ! ハハハは! よもや、”鍵”まで、持っていようとはナ! オレはツイてるナぁああ!?」

 

 魔族の男が一葉の腕を見て目を細めた。


 視線の先にあるのは『身喰いの剣』が姿を変えたもの、篭手がある。


 マリアが気を失った一葉を助け出すべく、動き出そうとした時に、魔族の男は、一葉を前面に出して鋭利な爪を喉元に突きつけた。


「おット。 動くな、ニンゲン。 こいつが、どうなってもいいノカ?」


「クッ。 卑怯な!」


「卑怯? ククク。 それは悪魔冥利に尽きるなぁ!」


「悪魔!?」


(マリアお姉ちゃんの驚いた声が聴こえる…。身体が動かない?)


――どうするの?マスター?


 誰?


――ひどいなぁ、ずっと、振り回してるのに


 振り回す? もしかして、みーちゃん?


――うん、そうだよ。 ようやく、声が届けられた。 ねぇ。チカラ、欲しい?


 え?


――誰にも負けない、世界を手中に納められるチカラ。欲しくない?


 ううん…。 流石に、そこまでの力はいらない、かなぁ?


――…欲が無いのね? でも、良いの? このままだと、他の人達も殺されちゃうよ? 自らを悪魔と明かしたアレは、口封じに全員殺すだろうね。 ふふっ。 どうするの〜?

 

 それは、嫌だなぁ。 うん。 力は、欲しい。 


――私はなら、マスターに力を与えられる。 でも、私を使うとなるとそれなりに対価を貰わなくちゃ


 対価? 良いよ、好きなだけ持ってって


――何か、勘違いしてないかな? まぁ、いいや。 そうだね、私の願いを叶えてもらおうかな?


 願い? え? 対価って、そういう類のもの?


――やっぱり勘違いしてたか…。 そうだよ。 私の願いはね。いつまででもいいから、”私”を助けて


 ん? どういう事?


――今は、気にしなくていいよ。 いつか、その時が来るから。 


 う、うん


――じゃ、私の名前を教えるね? ”魔剣”って言うのは真名があってね、その名を呼ぶことによって真価を発揮するんだよ。


 そうなんだ。


――そう。 だから、ちゃんと呼んで?


――呼べ、一葉! 私の名は………!

 

 腕輪から結晶が溢れ、一葉を覆い隠し、砕け散った。


「ナに!?」


 突如、一葉が消えた事に驚き、周りを見回すが何処にも見当たらない。


「『レティシエル』!」


 一葉が自称悪魔の目前に現れ、闇色の魔力を纏った白銀の大剣を突き入れた。

 付き入れられた大剣は自称悪魔の男を貫き、傷口から、口や目から結晶が突き破った。

 結晶は、徐々に自称悪魔の男の身体を侵食していき、覆い隠してしまった。


「ごちそうさま」


 一葉がそう呟くと、砕け散り、自称悪魔の男は悲鳴を上げる暇も無く消え去った。 


 砕けた結晶の粒子が『身喰いの剣』に吸収されていった。

 血は付いてないけど、大剣を振り、血を払う動作をしてから、上に放り剣を消す。


「カズハ君!」「カズハ!」

 

「大丈夫ですか!?」「大丈夫!?」


 マリアとシアが血相を替えて一葉に駆け寄る。


 怪我が無いか、痛いとこは無いかとペタペタと一葉の身体を触診しながら聞く。


「くすぐったいよ〜」


「なんとも無いようで安心したわ」


「ええ、本当に。 悪魔は? 結局、どうなったの?」


「ええとね、マリアお姉ちゃん」


 一葉がもじもじしながら、マリアを見る


「剣が食べちゃった♪」


「「はい?」」


 ◇ ◇ ◇


「つまり、カズハ君の剣。『身喰いの剣』の真名を解放して、その真価を発揮させたと。 それが、吸収?で、自称悪魔を吸収したと」


 シャイルが疲れたように情報を簡潔に整理する。


「うん」


「のようですね」


 マリアと一葉が返事をする。


 場所はマリアの執務室。

 

 ではなく、地下修練場に併設された医務室の中だ。


 屋敷の構造はシアが色々と弄っているため、マリアも全容を理解していない。 ただ、至るところに致死性の高いトラップが合ったり、迷ったら出てこれない迷路になっていたりと、訳がわからないことになっている。


 その医務室の中で、今後どうしていくかの話し合いをしていた。

 何故、医務室なのかと言うと、リンを休ませるためだ。

 ここなら、医療器具も揃っているし、検査器具もある。

 一葉は知らないことだが、最初、この屋敷に来たときにここで、検査を受けている。


 シアが検査室からリンを横抱きにして戻って来た。

 そのリンは顔を赤く染め、上気させている。


「リン先生、お熱あるの?」


「んぇ!? ううん! 大丈夫! 大丈夫だからぁ、気にしないでぇ」


 消え入りそうな声を出し、手で直接顔をかくしてしまった。


「?」


「ははは…。カズハ、あまり聞かないであげて。 カズハにはまだ少し早い事だから」


「? う、うん」


「あっち行って、ジン!」

 

 リンがベッドに降ろされ、近くにいたジンに八つ当たりをする。


「痛い! 何するんだよ、姉さん!」


「うるさい、うるさい、うるさい! ぅうう!」


 ジンを蹴飛ばし、シーツに包まり、顔だけ覗かせる。


「はぁ…、こんな姉さんは、初めてだ…」


 シャイルとマリアはそのやりとりを見て、苦笑いをする。


「それで…、後は」


「ええ、ユリウスの事ですね」


「ええ。 悪魔が擬態してたってことは…」


「もう…」


 マリアが肩を震わせ、服の端を握りしめ、言葉を捻り出す。


「それは、ないんじゃないかなぁ」


 一葉がそう呟くと視線が集まる。


「だって、ユリウスお兄さんって皇子なんでしょう? なら、護衛もいるだろうし、警備も厳重なはず。 もし、ユリウスお兄さんに何かしらあれば、騒ぎになっている筈だよね?」


「確かに…。 そういった騒ぎは聞いてないわね」


 シャイルがリンに視線を向けると、リンは顔を横にブンブン振る。


「私の方にも、そんな話しは…」


 皇族に何かあれば、何かしらの情報が入って来る筈だ。

 だが、そんな情報は出回ってないし、そんな不穏な様子も感じられない。


「向こうで読まされた本に、皮膚の一部で変装出来る魔法があるって書いてあったけど、こっちには無いの?」


「え!? カズハ君達の世界にはそのような魔法も!?」


「うん。 伝承では?」


「そう、なんですね…。 こちらの魔法にはそのようなものは…」


 マリアは記憶の中を探る。


「でも、悪魔なんでしょう? 人が使えない魔法なのかも?」


 一葉の鋭い指摘が飛び出す。


「ああ、そういう可能性もあるのか…」


 と誰かが呟いた。


 しばらく、沈黙が降りた。


 ぐぅ~

 と音がして、音がした方に視線が集まると一葉頑張らなきゃお腹を擦っていた。


「クフッ。 丁度いい時間ですし、ご飯食べに行きましょうか。 シャイル先生達もいかがですか?」


「そうね……。 ご相伴に与りましょうか」


 それを聞いた一葉の顔がぱぁっと笑顔になる。


 そういえば、一人少なくない?



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