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模擬戦!

 一葉とシアがいつも訓練をしている訓練場。 もとい、シアの創った固有結界の中。


 シアは一葉を後手に庇い、シャイルが杖を、ジンとリンはそれぞれ銃と銃剣を一葉に向けていた。

 マリアは頭から血を流し、グッタリしているユリウスを抱き起こし、胸に抱いて涙を流していた。

 ローズも魔法剣を直ぐに取り出せるように身構える。


「何故…何故! 殿下を撃ったの!?」


 シャイルが悲鳴にも似た声で詰問する。


「逆に聞くけど、何故撃っちゃ駄目なの? 敵は殺す。 当たり前の事でしょ? それなのに、なんで?」


 事は数分前。


 ◇ ◇ ◇


「ここは…? 今度はどこに転移を?」

 

 マリアがシアに聞く。


「一応、場所としては、マリアの執務室よ? 転移と同時に固有結界を展開しただけ。 この中なら、周りに被害は出ないわ」


「い、家精霊の出来る範囲を超越しているわね…」


 シャイルが呆れている。 ジンとリン、ユリウスは驚きしすぎて声も出ない。


「それにしても、貴方はお呼びじゃないわよ? アレス」


 アレスがカズハの影から這い出てくる。


「なぁに、随分面白そうな事しているようだと思ってな。 特等席で見学させてもらう」


「好きになさい」


 アレスはそのまま一葉の影に沈み込んで消えていった。


「今の方は?魔族では?」


 シャイルが警戒をしながらシアに聞いている。


「カレン。 勇者の仲間の一人の使い魔よ。 貴方の言った通り、魔族ね」


「そんな…! 魔族を使い魔にするなんて、そんなの「魔王みたいじゃないか!?」」


「かしら?」


 シアの言葉がシャイルに重なる。


「え?」


「大丈夫よ、あれに人を殺すことはできないわ。 カレンとそういう誓約を結んでいるからね。 それより、ほら。 模擬戦、やるんでしょ? カズハが待ち切れないみたいよ?」


 ソワソワしている一葉に視線を向け、準備を促す。


 この結界は、耐物理、耐魔法、遮音、遮断とイロイロとてんこ盛りな効果を盛り込んだ物だ。

 外からの干渉を一切遮断する、謂わば固有結界という名の檻だ。

 抜け出すにはシアに解かせるか殺すしかない。


「それと、カズハ!」


「ん〜? なぁに、シアお姉ちゃん」


「好きになさい」


「……うん」


 その一言で、気を入れ直し、模擬戦の相手をするジンを見据える。


 ジンはやれやれと頭を振り、肩を竦めて、一葉の前に立った。


「じゃあ、始めて!」


 一葉は銃を引き抜き、発砲する。


 ()()()()に向けて。



 ただ、観戦していたユリウスはなす術なく、頭を撃ち抜かれ、力なく後に倒れた。


 ジンが直ぐに一葉に向かって銃剣をぶっ放した。

 リンも銃を構えるがこちらの様子を伺うために発砲はしなかった。


 ジンが撃った銃弾は、途中で割り込んできたシアの剣により弾かれた。


 そして、冒頭に戻る。


「ジン!リン! 試験は中止。 王族殺害の咎人を捕縛する!」


「おう!」「了解!」


 シャイルが詠唱を開始し、ジン前に出る。 リンはその後ろを行き、ジンのサポートをする。


 空が煌めき、無数の刀剣類がジンとリン、一葉とシアの間に降り注ぎ、ジンとリンの進行を防いだ。


「待って!」


 一葉が大きな声を出して、呼びかける。


「誰が待つか! 王族殺しの大罪人がァ!」


 ジンが、ガリッと何かを噛み砕き、飛び上がる。

 リンもジンと同じく何か、丸薬を口に放り込む。


 一葉は手に持ったデザートイーグルでジンが振り下ろして来た銃剣を受け止めるべく、上に掲げる。

 だが、シアがジンの振り下ろしを受け止め、弾き飛ばす。

 シアはジンを弾き飛ばすと一葉の首根っこを掴み、後に大きく跳ぶ。

 一葉が居たところに、銃弾が撃ち抜いた。


「チッ」


 リンが舌打ちする。


 シアと一葉の前にトトトと刀剣類が降り注ぎ前を塞ぐと突如、爆発を起こした。


「カズハ。 男の方をやって頂戴。 私は、残りの二人をやるわ」


「うん…」


「ほら! しっかりなさい!」


 バシッ! と一葉の背を叩き、激を飛ばす。


「行くわよ!」


「うん!」


 一葉とシアは爆炎の中から飛び出し、それぞれの目標に向かう。


 ダァン!ダァン!


 とジンに向かって発砲しながら走って行く。だが、当たらないように慎重に。

 当てる気がないことに気がついたジンは怒り心頭だった。


「巫山戯るなぁ! 今更、人を殺したくないとでも言うつもりかァ!?」


 ジンが銃剣の鋒を一葉に向け、引き金を引き続けた。


 一葉は乱射される銃弾を躱しつつ前に詰める。 


「そうだよ! 誰が、好き好んで人を殺すか! 人を殺すっていうのは怖いことなんだよ!『来い! オモイカネ!』」


 一葉はデザートイーグルを持つ手とは反対の手に刀を喚び出した。

 刀を逆手に持ち、体を回して回転斬りをする。

 

「なら、どうして! どうして、殿下を撃った?!」


 ジンは回転斬りを上に跳んで躱し、空中で体を前に回し、銃剣を振り下ろした。


「ぐう!」


 銃剣を刀で受け止めた一葉は苦悶を上げる。


 そのまま押し込まれ、地面に叩きこまれた。


「ガハッ!」


 起き上がろうとすると、首筋に冷たいモノが触れた。


 ジンが銃剣の剣身を突きつけている。


「なんのつもりだ?」


 一葉は銃口をジンに向けていた。


「まだ、抵抗するのか? これ以上、抵抗、するなら、殺 す ぞ 」


(まずい! アイツまだ!)

「みーちゃん!」


 一葉の右腕から結晶が迫り上がり、やがて一葉を覆い隠し、砕け散った。


「なに!?」


 ◇ ◇ ◇


(なぜ…なぜユリウスが? おかしい。 あの子は、一葉君は何かない限り、人は殺さないはず)


 マリアはイオリ等から夜な夜な襲撃してくる族の内何人かは一葉が始末をしていると報告を受けている。 隠蔽も完璧で、血の一滴、髪の毛一本すら見つからない程の徹底ぶりらしい。 しかも、誰も見ていない時にしか動かないらしく、本当に一葉が始末をつけているかは分からないが十中八九、一葉だろうとのこと。


 そんな、一葉が人前で人を撃つだろうか?


 もし、なりふり構っていられない状態だったとしたら?

 ユリウスを撃たないといけなかった理由は?


 分からない…。


 なぜ?


「迷っているようだな()()()

 

 マリアの影から重く深い、男性の声が聞こえてくる。


「アレス様…?」


「『様』はいらん。 それよりも、もしこの事件に頭を悩ませているなら、まずは情報の整理からだ」


「はあ…」


 いきなり、この人は何を言っているの?と間の抜けた返事をしてしまう。


「被害者と加害者が分かってるんだろ? なら、お前は()()()()()()?」


「え?」

(何を…言っているの? この人は…)


「何を信じたいか、と聞いたんだ」


「いえ、あの。 聞こえて無かった訳では無いんです。 ただ、言っている意味が…」


「難しく考えすぎだな、お前は。 『ホワイダニット』だ」


「はい?」


「あの子供の行動原理を思い出せ。 」


「カズハ君の……」

(たしか、あの子は…。 そうだ。 誰かを守る。 誰かを助けたい。 そう思った時に行動に移すときが多い! なら! このユリウスは…!?)


 ユリウスのからだがピクリと動き、急に貫手をマリアに繰り出した。

 

 すんでのところで、ユリウスから離れる事で貫手を躱した。

 本来なら、避けれていた筈だった。


 ユリウスの腕が伸び、マリアを襲う。


 突如、マリアとユリウスの間に結晶の棘が突き出し、ユリウスの腕を貫いた。


 結晶が砕けると一葉が飛び上がったかのように上空に現れた。

 

「みーちゃん! 轟雷!」


 一葉がそう叫ぶと、手に持っていた『身喰いの剣』が電気を帯びた。

 上空から帯電した『身喰いの剣』をユリウスに投げつける。


「殿下ァ!」


「そんな…」


「………」


 ユリウスに剣が突き刺さる様を見せつけられたジン等は悲鳴を上げる。


 ユリウスに突き刺さった『身喰いの剣』が雷光を放ち、ユリウスの体を灼き尽くす。


 思いの外、高く飛んでいた一葉は落下中に体制を崩し頭から落ちていく。


「クソッ!」


 ジンが2丁の銃剣の鋒を落下中の一葉に向け、その先に魔力を集めていく。

 銃剣のシリンダーがガチャン!と回るたびに集まった魔力の密度がましていく。


「駄目! ジン!!」


 空中でなす術のない一葉に向かって、当たればひとたまりもない『魔砲』を放とうとするジンに、リンは叫んだ。


「ぶち抜け!」


 シアに組み伏せられているリンは、感じていた圧から解放され、驚くと共に、直ぐに銃口をジンの放った『魔砲』に向けて、引き金を引く。

 弾に込めたのは『魔力霧散』。

 

 だが、供給され続ける魔力には焼け石に水状態。


 シアが一葉を抱きとめ、着地するのが見える。


 魔砲は一葉とシアの頭上を通過するが、クイッと曲がり、一葉達を襲う。


 戦闘前にジンとリンが飲んだ丸薬は「魔力増強と魔力感度上昇」の効果を与える薬だ。

 効果は飲んで5分後から現れ、10分後に効果が消える。

 効果が切れたあとは、極度の疲労感を感じて、数時間は魔力を扱うのが難しくなる。


 丁度、飲んでから5分が経ち、薬の効果が出てきた。


 恐らく、ジンも効果が現れたことによって攻勢に出たのだろう。


「『オーバークロック・ダブルアクセル』!」


 リンの感じる時間が停まる。

 静止した時間の中で、銃から薬莢を抜き、先程と同じ『魔力霧散』の効果を付与した魔弾を薬室に押し込み、銃を跳ね上げてリロードする。

 銃口を『魔砲』に向けるとともに静止した時間が動き出す。

 引き金を引き、シアが一葉を連れて避けるための時間を稼ぐ。

 

(たしかに、あの子は殿下を撃った。 だけど、殺すのは違うでしょ!? 出るとこ出て、ちゃんと裁かなくちゃ。 だから、今は…)


 リンは魔法を行使し続け、リロードと発砲を続ける。



「はぁ、はぁ、はぁ」


 リンの魔法は体への負担が大きい、静止した時間の中で体を無理やり魔力操作で動かすのだ。

 これは、"時間静止"ではない。”加速”だ。


 卓越した魔力操作が出来るものにしか出来ない、一種の極致だ。

 心臓が一回鼓動するまでの間に一つの行動を行えるまでに加速させる。

 そう、何度も使えるものではない。

 それをリンは使い続けた。


「ゴフッ!」


 終ぞ、体の限界が現れた。 口から血を吐き、地に手を着いた。


「リン!」


 シアが創り出した刀剣類に体を拘束されていたシャイルは何もできない自分に歯噛みする。

 ご丁寧に、魔力封じの魔法陣を、()()()()()()()()()()()()()によって展開されていたのだ。

 

「ま、だ…!」


 リンは再度、魔法を使おうとする。


「辞めなさい! リン!!」


 リンの周りに剣が降り注ぎ、二つの魔法が発動する。


 一つは、治癒。


 もう一つは魔力封じ付きの拘束魔法だ。


「大人しくしていなさい。 カズハ、大丈夫?」


「大丈夫。 リン先生は、大丈夫そう?」


「きちんと、治療すれば、問題ないわ」


「良かった。 ねぇ、シャイル先生、ジン先生。 アレ、殿下に見える?」


 ユリウスに視線を向けながら、シャイルとジンに聞く。

 ユリウスはもはや、人では無かった。


「ケッ。ケッケッケッ」


 皮膚はドロドロに溶け落ち、爬虫類を思わせる舌をチロチロ出している。

 鼻も耳もない、腕はダランと垂れ下がり、長く鋭い爪が伸びた、無貌の化け物。


「魔族…。 いったい、何時から!」


 シャイルがユリウスだった物を見て驚愕する。


「ねぇ、この国の王族の方は、人じゃ無いの?」


「人だ。 アレはなんだ? 何故、殿下に…」


 ジンから、一葉に対する戦闘の意思が消失したのを感じた。


「知らなーい。 アレに聞いて?」


「クソッ! 何時からだ!」


「少なくとも、屋敷に居た時には?」


「何故言わない!」


「言った所で聞かないでしょ。 今さっきみたいに襲われるに決まってる。 『無礼者!』『不敬罪だ!』、ってね」


「〜っ! 俺が悪かった、すまない」


「ジン、それは私達も一緒よ。 カズハ君、本当にごめんなさい」


「謝罪はいらないよ。 あと、どれくらい動ける?」


「俺は、弾が12発。 魔力は、少し余裕があるが、戦えるのは、5分って所だな」


「…その時間の根拠は?」


「薬だ。 お前と戦う前に、飲んでただろ?」


「ああ、アレ。 シャイル先生は?」


「私は、正直あまり戦力にならないかも。 シア殿と戦った時に、大分消費したから…」

 

「うーん…。 よし! ジン先生は、シャイル先生とリン先生を守ってあげてよ。 シアお姉ちゃんは僕と一緒にアレの処理をしよう」


「私も加わるわ。 あの子の仇を討たないと…」


 マリアが怒りを滲ませながら参戦を申し出た。


「手伝ってくれるのは嬉しいけど、武器は? ステゴロでやる?」


「これがあります」


 マリアが懐から派手な装飾がされた短剣を取り出し、見してくる。


「マリア。 それ、王位継承権を象徴する短剣でしょう? 流石に不味いわよ」


 シャイルがマリアの短剣を見て、苦言する。


「え? 王位継承権は放棄したって、言ってなかった? マリアお姉ちゃん」


「陛下にお返ししたけど、突き返されたのよ。 『好きに使えばいい』って言ってね。 だから、普段はペーパーカッターとして使ってるわ」


「うん、まぁ。でも、価値ある物っぽいから違うのにしよう? うーん、どうしよっか…」



 一葉はマリアの武器について少し悩むと一ついい事を思いついた。


「おじちゃん!いるー?」


 虚空に向かって声をかけた。

 すると、白い光の玉が集結して来て、人の形になっていく。


 光が散らされると、一人の男性がそこにいた。


「呼んだか? 坊主」


「うん! あのね、マリアお姉ちゃんに貸したいんだけどいいかな?」


「そこの女にか? ふむ」


 男性がマリアに近づき、舐め回すように眺めていく。


「あのね、オモイカネ。 女性をそんな風に見るのは良くないと思うよ。 それに、どうして、貴方の契約者である私では無く、一葉の呼び声に応えたのかしら? おかしいわよね?」


 とシアは注意しながら詰め寄っていく。


「こちらからも言おう。 お前は確かに、俺の契約者だ。 だけど、使用者はこっちの坊主だ。 契約者の呼び声はもちろんの事だが、使用者の呼び声に応えるのもおかしくないだろう? うむ。 坊主、良いぞー。 貸してやれ。 だが、今回だけだからな〜」


「分かったー!」


「いや、だから。私、契約者」


 シアがぞんざいに扱われて不満気にするが、オモイカネは知ったことかと、その姿を消していってしまった。


「来て! 『楓花』!」


 一葉が上に手を上げ、そう呼びかけると一振りの刀が現れる。


「はい、マリアお姉ちゃん」


 一葉は刀をマリアに手渡す。


「あ、ありがとうございます。 でも、いいんですか?」


 シアの事を気にしながら聞いてきたが、この刀の内なる魂であるオモイカネが良いって言っているのだから良いのだ。

 そう伝えると、しぶしぶと受け取ると、柄を握った瞬間に表情を変えた。


(オモイカネが声をかけたかな?)


 刀身が突如現れた楓の葉を含んだ竜巻に包まれた。

 数秒後、竜巻が一陣の風となって一葉達の髪を揺らす。

 すると刀は一振りの細身の長剣に変わっていた。


 ユリウスだったモノは体の治癒が完了し、こちらを睨みつけていた。


 どうして、動かず治療に専念していたときに倒さなかったのかって?

 『窮鼠猫を噛む』。窮地に立ったアノ化け物に攻撃を加えて、こちらに甚大な被害が出る事を恐れたからだ。


「さてさて。 お姉ちゃん達! 準備は良い?」

 

「もちろん!」

 

 とマリアが応え


「ええ、いいわよ。 オモイカネは後で話があるから覚えておきなさい!」


 シアが続くが最後の一言で剣へと変わった『楓花』が震えた。


「じゃあ、行くよ!」

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