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射撃試験

 シアの転移魔法により、新設された射撃場にやってきた一葉達。


 目の前に広がるのは、屋内射的場。入り口等は無く、シアの転移でしか入ることは出来ない、隔絶された空間。人、一人分の隙間を仕切りで分け、それぞれの仕切りの中に射撃訓練で使用する、弾薬等を置く台が備え付けられている。 

 その奥は広い空間が広がっており、人型のイラストが書かれた四角いプレートのターゲットがポツンと立っていた。


「そういえば、銃はどうするの?」

 

 一葉が銃が用意されてない事に気が付きシアに聞く。


「……マリア。持ってる?」


「え!? 持ってないですよ! てっきり、シア様が既に用意しているものかと思ってましたもん!」


「私は銃、苦手なのよ。 持ってるわけ無いでしょう?」


「威張って言う事じゃ無いでしょう!!」


 やいのやいの言い合っているマリアとシアをよそに、一葉はジンとリンに銃を持ってないかと聞く。


 ジンが持っているのは銃剣で、試験で使用するには特殊すぎる。


 リンの銃は単発の中折れ式の銃。 


 姉弟揃って、ピーキーな銃を使用しているのだ。


「誰か他に持っている人に心当たりはないの?」


 シャイルがため息を吐きながら一葉に聞いてきた。


「他は…、お姉ちゃん達くらい?」


「お姉ちゃん?」


「うん。 食堂でご飯作ってる」


「(ご飯作ってるって…シェフかしら?)そう。 借りて来られる?」


「ん~。 聞いてみない事には分からない。 ちょっと、行ってくるね!」



 たたた、とシアの元に駆けて行く。


「シアお姉ちゃん、食堂に行きたい」


「だから! って、え? 食堂?」


「うん。 アリスお姉ちゃんが持ってないか聞いてくる〜」


「アリスさんですか? 流石に持ってないのでは?」


 シアとマリアは言い争っていたが、一葉が乱入したことによって、一時休戦する。


「そうねぇ。 一応、聞いてみますか。 じゃあ、お願いできる? 」


「ん!」


 パチン! と指を鳴らす音が聞こえると、一葉は食堂の入り口の前に立っていた。


 扉を開け、厨房にいるであろう愛莉栖の元に向かう。


 コンロの前で鍋をかき混ぜていた愛莉栖に声をかけた。


「アリスお姉ちゃん」


「うん? 一葉君!? いつ入ってきたの!?」


「今さっき。 ねぇねぇ。 銃って持ってない?」


「銃? あるけど…、分解整備の途中だよ?」


「終わってるのもない?」


「うーん…。 でも、どうして?」


 一葉は事情を説明した。


「今からかぁ。 さっちゃんに聞いてみてくれる? 整備済みなのはさっちゃんに渡してるから」


「わかった〜。 ありがとー」


 厨房から出て、沙月を探すと、机に突っ伏していた。


「サツキお姉ちゃん」


「ん~? 一葉くん? どした〜?」


「銃、貸して?」


「ダ~メ」


「なんで!?」


「なんでも。 そもそも、何で銃を貸してほしいの? 危ないでしょう?」


「今から、再試験、受けることになって、射撃試験があるんだけど、肝心の銃が無いんだって」


「今から!? って、銃がないんじゃ、射撃試験なんてできないじゃん!」


「あるにはあるんだけど、銃剣か、単発式の銃しか無いの。 試験内容は止まっている的に撃つのと、動く的を撃つんだって。 その2つの試験どちらかに、リロードを行わないといけないんだって。 だからね、複数の弾数を装填できる銃が良いんだけど…」


「銃剣に単発式の銃って…。 はぁ…、試験ならしょうがないね。 ちょっと、待ってて、持ってくるから」


 沙月はそう言うと食堂から走って出ていく。


「というか、お前、撃てるのか?」


 正義から聞かれる。


「うん。 何度か撃ったことあるよ」


「マジかよ!?」


「へぇ。 ちなみに、何の銃使ってたの?」


 雄一も話に加わってきた。


「DE 50EA のカスタム?って言ってたかなぁ」


「ガキになんちゅうもん撃たせてんだよ!?」


「わぁ、バケモン拳銃の代名詞じゃんそれ」


 正義と雄一が呆気にとられる。


「持って来たよ〜」


 沙月がアタッシュケースを持って、食堂にやって来る。


「どうしたの、二人共」


「聞いてくれよ! こいつが前に撃ってた銃がデザート・イーグルなんだってよ!」


「え!? そうなの? じゃあ、丁度いいね! 持ってきたのも、デザート・イーグルだし」


「「お前もか!!」」


「え? だって、これしか整備終わってないんだもん。 あ、貸すのはいいけど、私も試験を見学していい?」


「ありがと。 うーん、どうだろ?」


「いいわよ。って私が許可出すのも可笑しいか。 ま、見学したいなら来ればいいわ。 来てしまえば、こっちのもんよ」


 シアがいつの間にか後に立っていて、勝手に許可を出す。


「じゃぁ、行こうか!」


 と、食堂にいる全員に声をかけ始めた。


「え? 俺らもいくの?」


「ほらほら、立って立って! 行くよー!」


「ハナちゃん達にも言っておかないと!」


 春希がそう告げるが、沙月が待ったをかけた。


「ご飯作ってる途中だから、連れ出すのは悪いよ。 それに、すぐ終わると思うよ!」


「え、いや。 でも」


 理恵が口籠りながらも戸惑う。


「大丈夫大丈夫。 ほーら」


「ええ? こんなに見られながらやるのは嫌だなぁ」


「ま、頑張りなさい」


 シアが肩を落とした一葉の肩をポンと叩き、声をかけた。


「結構、大所帯になったわね。 ま、いっか。 じゃぁ、行くわよ」


 シアが再び指を鳴らした。


 景色が切り替わり、マリア達がいる事を確認すると無事に戻って来れたと実感する。


「これはこれは。 また、大人数で来ましたね」


「マリア。 この方達が?」


「ええ。 勇者様とそのお仲間の方達です。 勇者様方、よろしいですか?」


「すみません、マリアさん。 こんな大人数でお仕掛けてしまって」


「いえいえ、構いませんよ。 こちら、一葉くんが通う事になるかもしれない学園の学園長で、シャイル・セブルス・アーカーシャ様です」


「初めまして、勇者様方。 マリアからご紹介を与りました、シャイル・セブルス・アーカーシャです。 よろしくお願いしますね」


 シャイルが正義に握手を求めた。


「初めまして、シャイル先生。 生憎と俺は勇者じゃあないが、一応、このパーティの司令をやっている。 周防、ああいや。 マサヨシ スオウだ。こちらこそ、よろしく頼む」


 正義が握手に応えた。


「ちなみに、そっちの優男が勇者だ」


 指を指し、伝える。


「そうでしたか。 これは、失礼致しました」


「ははは…。 構いませんよ。 自分でも、向いてないと理解していますから。 ユウイチ ミズハラ です。 よろしくお願いします」


「こちらこそ。 どうか、この世界のことをよろしくお願いします。 勇者様」


 一通り、挨拶が終わると、ようやく、試験の準備を始める。


 借りた銃と弾薬が詰まったマガジンを台の上に置いて、イヤーマフを頭につけていく。

 銃のホルスターを右太ももに括り付け、銃を引き抜く具合を確認する。

 最後に、腰にマガジンポーチを付けて、マガジンを仕舞う。


「先に静止した的を撃つのでいいのかしら」


「ええ。 そちらからお願いします」


 シアがシャイルに試験進行を聞いて確認する。


「あ、試射ってしていいの?」


 使い慣れていない銃を扱うのだ。 試射で感覚を掴みたい。

 そう思い、シャイルに聞くと、一マガジン分の試射はしてもいいらしい。


 デザート・イーグルの装填数は7発のマグナム弾頭。


 狙うは、人型の的の頭部。 そこに狙いを付け、引き金を引く。


 ガァン!


「いったぁ〜」


 銃弾は的の上部を掠めて通過していった。


 一葉は発砲の反動で、腕が振り上がり、そのまま後に倒れ、尻もちをついてしまった。

 腕は反動の衝撃で痺れてしまった。


「大丈夫!?」


 沙月とシャイルが駆け寄り、抱き起こす。


「びっくりした! こんなに反動強かったっけ?」


「まぁ、弾種が弾種出しね。 マグナム弾頭は他の弾頭より、火薬量が多いから」


 沙月が心配そうに見ながら、弾種の説明をする。


「やめといた方がいいかもしれませんね」


 シャイルが一葉の身を案じて、提案する。


「大丈夫!ちょっと、びっくりしただけだから!」

 

 やらせてほしいと上目でシャイルにお願いする。


「うっ! わ、わかりました! 次、尻もちをついたら、後日、学園で再試験よ。 それでいい?」


「うん! あ、はい!」

 

 一葉は返事をするが、直ぐに、言い直す。


「よろしい。 試射は続ける?」


「ううん。 もう、掴んだからいい」


「そう。 じゃあ、始めて!」


 一葉はもう一度、銃を構えて、照準を合わせて引き金を引く。


 静止した的を撃つのは5発。 動く的を撃つのが8発らしい。


 連続して発砲し、人型の的の両肩、両目、額の辺りを精確に撃ち抜いた。


「ぉぅ。 殺意高いくね?」


「ね。 両目に額って…」


 

 銃弾が当たった順番的には右肩左肩、右目、左目、額の順だ。


 これが、的ではなく人であったならば、両肩を撃ち抜かれ無力化された所に、右目を撃たれた段階で即死だろう。あとの2発は避けられたときの想定で撃ったのか、はたまた、確実に殺すことを念動に撃ったものなのかは撃った当人にしか分からない。

 だが、試験としては、きちんと当たっている事から満点とまではいかなくても、余裕で合格点をつけられる。


 因みに、学園での試験の的は人型ではなく、普通の円状の的だ。

 移動する的を撃つときはゴーレムの胴体中央に嵌められた的を撃つらしい。

 

「ふむ。 本当は点数制なんだけど、今回の的は学園の物とは違うから、点数ではつけられない。 でも、狙いは正確な事から、合格よ。 次の試験に移りましょう。 シア様、お願いします」


「了解よ」


 シアが返事をして、部屋の隅に備え付けてある操作盤を操作していく。


「準備が出来たわ。 あ、一応説明して置くわね。 これからの的は、サツキの要望に沿って、市街地戦を想定した物よ。 だから、撃ってはいけない的と撃っていい的が出てくるわ。 さっきの的は、白色だったでしょう? 撃ってはいけない的は少し、灰色がかっているから、見間違えないようにね。 間違えやすいように、色の違いをわかりにくくしてるから」


「え? シア様? それ、採点する方も大変なのですが?」


「大丈夫よ。 後で、こちらでわかるようになってるから」


 操作盤に目を向け、シャイルに伝える。


 だが、そうなると改竄する、隠蔽する余地が出てくる。


「それは、公平性にかけるのでは?」


「それを言ってしまうと、貴方の採点も貴方の裁量次第になってしまうわ」


「……いいでしょう。 私の採点とそちらの結果を照らし合わせて採点しましょう」


「あら。それは、いいわね。是非、そうしましょう。 カズハもそれで、いいわね?」


「うん、良いよ」


 頷き、答えた


「では、始めて」


 シャイルの合図と共に、ピッピッピーという音の後に的が地面のいたる所から、迫り上がっては、下がっていく。


 一葉は、それを精確に撃ち抜いていく。


(市街地戦という事は、結構、切羽詰まった状態だから、確実に殺す方向で、避難民を避けて撃ち抜かなきゃ)


 7発撃ったら銃のスライドが下がったままになり、引き金を引いても弾が出ない。

 マガジンをマガジンリリースと呼ばれるモノを押して落す。 

 直ぐに、予備のマガジンを押入れ、スライドストップレバーを解除し、スライドを前進させる。

 

 的を撃ち抜こうと構えたとき、白色の的の前に灰色がかった的が上がってきた。


 想定的には人質なのだろう。


 構わず撃ち抜いた。灰色がかっている的は下がって、後にあった的が見えると、両肩を打抜き、頭を最後に撃つ。


 ピー!と音がして、終了を知らせる。


 一葉は、銃のセーフティを掛け、ホルスターに仕舞う。

 

 ピッ!


 という、音と共にまた、的が上がってきた。


 一葉は、ホルスターから銃を引き抜きつつ、セーフティを解除して腰だめに発砲した。

 銃弾は的の頭を撃ち抜き、下がっていく。


「はぁ…はぁ…はぁ…」


 一葉は、手に感じている痛みに耐えつつ、結果を待つ。


「私が見てた限りだと、ターゲットを全て撃っていたと思うわ」


 シャイルが言うとシアも結果を確認する。


「こっちでも、白色の的は全て死亡判定で撃ち抜かれているわ。 灰色の的は一体だけ撃たれているけど……、見てもらった方が速いわね」


 操作盤を操作すると、件の的がシャイル達の近くに現れた。


「すっご〜! え!? これを狙うって、すごくない!?」


 沙月が喝采する。


「ああ、こいつはスゲェ」


 一葉が撃った灰色の的は的の首筋スレスレの所を撃ち抜いていた。

 そして、その後にあった的は、鎖骨の辺りと、両肩、頭を撃ち抜かれている。

 鎖骨辺りの銃痕が灰色の的を撃ち抜いて貫通していったモノだろう。


「これは……、当たって無いと判断しますが、シア様はどうです?」


 シャイルがシアの意見を聞く。


「当たってはないでしょうね。 でも、よくこんなところを撃ったわね。 後、数ミリズレていたら当たってたわ」


「ええ、本当に。 でも、なにはともあれ合格点を上げるしか無いわね」


「やった! じゃあ、次は、模擬戦?」


「ええ、そうね。 ここだと…少し、手狭かしら?」


 そもそもが、この部屋は射撃訓練の為の部屋で、消音と耐物理の加工位しか行っていない。

 魔法含みの戦闘となると崩壊の危険性があるため、また、違う所に転移するということになった。

 沙月や正義達は、食堂に戻るらしい。 

 銃は模擬戦の後に返してくれればいいと言う言葉を沙月からもらったため、そのまま預かっておく。


 シアに、一葉とシアがいつも訓練している場所に転移をしてもらう。


 それが、あんな事件が起こるなんて、誰も思っていなかった。

 

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