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臨時試験官

 私は『シャイル・セブルス・アーカーシャ』。ここ、メサイアベルテ学園の学園長をしています。


 私は、いつも通り学園長室で、教師や生徒からの意見書、陳情書に目を通していた。

 その中から、急を要するものをピックアップし、優先順位を付けていき一つずつ改善させるためにスケジュールの調整をかける。

 もちろん、それだけではなく教師や非常勤講師等の授業内容を監査し、問題があれば是正命令を出す。


 他にも、貴族家当主からの相談に乗ったり、皇国騎士団の騎士団長会議に出席させられたりもする。

 式典があれば、それにも出なければならない。


 国や貴族等の上級階級の方たちから学園運営のために援助を受けている以上、ある程度の便宜を図らないといけない。 

 例えば、貴族家のご子息やご令嬢が平民出の子と諍いを起こした時に、黙殺、あるいは黙認、傍観したり。

 単位が足りなくても進級させたりとか、認めたくはないが認めざるを得ない。

 

 それに、今日は学園全体の試験日。入学試験、編入試験。学年を上げるための昇級試験。 初等部から中等部、中等部から高等部へと進むための進級試験


 コンコン


 ノックの音が聞こえ、書類から目を離す。


「どうぞー、入ってらっしゃい!」


 入っていいと合図を出す。

 すると、ローブを着た女性教師が入って来た。


「学園長、お客様です」


 と淡々と伝えて来る。


「ありがとう。 通して頂戴」


「はい。 どうぞ」


 女性教師は道を開けて、客人を学園長室の中へ促す。


 中に入って来たのは長身痩躯の若い男性。二十代から三十代前半くらいだろう。

 ヨレヨレのシャツにズボン。 そこに、ジャケットを羽織り、ボサボサで肩口まで髪が伸びていて、顔が殆ど隠れていた。

 どこにでもいる、ズボラで、だらしなさそうな青年だった。


 彼は、こんな容姿だが、ある地位にいる。


「ようこそ、お越し下さいました。 Aランク 冒険者 ジン様。 それとも『沈黙(サイレント)ジン』とお呼びしたほうがよろしいですか?」


 ジンと呼ばれた青年は心底嫌そうに顔を歪めた。


「その、呼び方、辞めろ!」


 一言一言区切って、たどたどしくも非難の声を上げた。


「ハハッ! 久しぶりね〜。 貴方の噂は、ここまで聞こえてきてるわよ〜。 やれ、単独で魔物氾濫(スタンピード)を抑えた〜とか。やれ、飛竜を墜とした〜とかね」


「ホント、勘弁して下さい。 先生」


 ジンはかつて、この学園に通っていた。 その時、



「ふふっ。 おしゃべりもここまで。 本題に入りましょう」


「ああ」

 

「あなたには、今日行っている、進級試験及び編入、入学試験の実技試験の内の1つ。 試験者相手に軽く、模擬戦を行ってもらいます」


「ああ」


「剣を数回打ち合うだけでいいわ。 その動きを試験監督の担当者が採点するから」


「わかった」


「人数が人数だから、あなたが担当するのは3グループ。 場所は第一から第三修練場。 第一から順番に周って頂戴」


「わかった」


「何か、ここまでで質問はあるかしら」


「1つ」


「何かしら」


「『試験する必要なし』と、俺が判断した場合は?」


「それは、実力を測るまでもないと判断した時って事?」


「ああ。 これでも、人を見る目はあると自負してる。 ある程度の判断は出来る。 まぁ、進級組は問題無いと思う。 編入試験を受けてる奴は、未知数、だから」


「編入試験の受験者に関しては、あなた達、外部から来てもらった方たちの判断を優先させるように通達してあるわ。 そのために、Bランク以上の冒険者か、傭兵団の上の方にいる方たちに依頼を出しているんだもの。 それ位の判断は出来てもらわないとね。 もし不正をするなら…ね?」


「やらねぇよ。それに、地味に、プレッシャーをかけるの、辞めろ! 言外に、実力を隠した奴を、見逃すなと言ってる、みたいだ!」


「まあ! そんな事は、ないわよ? ……そろそろ時間ね」


 シャイルは時計を見やり、積もる話もあるが、切り上げる。

 

「はあ…。 じゃあ、行ってくる。」


「ええ、よろしくね」


 ジンが学園長室から出ていき、それを後ろから見送る。


「ふぅ。 相変わらず、人と話すのが苦手みたいね。 それにしても、やりすぎないといいんだけど…。 学園次席で卒業したけど、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 と頬に手を当てて、生徒の無事を祈った。

―――――――――――――――――――――――――


 俺は試験場所に向かうまでに身なりを整えるため、空き教室を借りた。 普段の俺を知ら無い奴。俺に幻想を抱いてる奴の前に出る事になるんだ。 流石に、気を遣う。ボッサボサの髪で、家着のようなヨレヨレの服装で行く訳にはいかないからな。

 冒険者として活動する格好に着替えて、『ヨシッ』と頬を叩いて気合を入れる。


 その後、第一修練場に向かい、生徒達と模擬戦を行っていく。

 若さ故か、俺が、Aランク冒険者と知ると、試験そっちのけで、手合わせ感覚で立ち向かってきた。

 もちろん、彼我の実力差は歴然だから、軽くあしらったが。

 中には、結果に納得がいかず、再戦しろと言ってくる輩もいた。

 軽く、殺気を当てたら泡吹いて倒れたが。


 そんなこんなで、第一修練場の試験は終了した。


 貴族のボンボンが多いから、精神的にもの凄い疲れる。


 それに、進級組しかいないから、変に実力がある分、加減が難しい。 一撃で落す事はできるが、これは実技試験。 一撃で倒すわけにはいかない。


「はぁ。次は、第二か…」


 第二修練場は、編入試験組が多く、第一のときより、余計に神経を使う。


 編入試験を受けに来ているのは、平民階級しかいないから、そこだけはやりやすいか。


 冒険者ギルドで見たことのある顔がチラホラ見えた。


 そいつらには、少し本気を出してやったら、顔を青くさせて、引き攣らせていた。

 それでも、数度打ち合えるんだから実力はそこそこあるみたいだ。


 試験監督員は彼らの経歴を知っているのか、苦笑いしていた。


 冒険者じゃない奴らは、すっかり、萎縮してしまっていた。


 そのせいか、動きがぎこちなく、本来の実力を発揮できて無いと感じた。


 全員とやり終わって、試験監督員に冒険者上がりの奴以降にやった受験者の採点を少し甘くしてやってくれと頼み、第二修練場を後にする。


 第三に向かっているときに、()()が起こった。


 僅かに、地面が揺れたのだ。


 何かイレギュラーが発生したと判断して駆け出す。


 第三修練場に付き中入っていき、下に降りていく。


 そこで見たものに目を疑った。


 一部にどデカいクレーターができていて、砂埃が俟っていた。


 しかも、その周りは綺麗に均されており、ジンの記憶の中の景色と大分食い違っていた。

 

 ジンの記憶では、岩山が所々に聳えていたはず。

 それが、綺麗サッパリ、クレーターの辺りだけ消え去っていたのだ。


 そして、幼い子供の声だろうか、甲高い声で泣きじゃくる声が聞こえてくる。



 何が…あったんだコレ?



 

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― 新着の感想 ―
[良い点] スラスラ読みやすくて、学園の雰囲気も分かりやすかったし、前話含めて今までで一番状況理解しやすかったです! [気になる点] ストーリーの面白さにより磨きがかかってとっても良い作品を作れること…
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