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召喚前の出来事

 今日は、国立星彩学園の編入日。


 桜樹さんたちが、勧めてくれた学校のうちの一つで、日本では珍しい、飛び級制度が導入されていた。

 

 ”学園”と名前がつくように敷地が大きかった。

 

 最初、この学園のことを聞いたときに、「なに、馬鹿なことを」って思ったけど、パンフレットを見る限り、本当のことらしい。


 小中高の一貫校で、中等部と高等部は、全寮制。小等部は、地方から来た生徒、自宅から通学することが難しい生徒のための寮があった。


 ぼくは、飛び級制度とやむを得ぬ理由のため、高等部に編入することになっている。


 校門まで大城さんに送ってもらい、そこから、遠くに見える校舎に向かって歩き出した。


 周りには、生徒がまばらに歩いていて、こちらに気がつくと、驚いているのが見える。


 男女で歩いているのは、カップルだろうか。男子生徒が、こちらをジッと見ていると横に居た女子生徒が、横腹をついていた。

 

 というより、遠くなですかねぇ!?


 校舎につく頃には、息が切れて、ヘトヘトになっていた。


「君、大丈夫か!?」


 男性職員が腕を捲くって、校舎前に、たっていた。


「小等部はこっちじゃないぞ」


「すみません。だいじょうぶです。ぼくはここに、へんにゅうしてきました」

 

 息を整えて、編入生だと伝えた。


「編入?…………ああ!たしか、そんなこと言ってたな! そうか、君が………。校長室はわかるか?」


 校長に挨拶をしに行かないといけないけど、どこにあるかわからないため、素直にそう伝える。


「すいません、わからないです……」


「………。わかった。案内しよう。付いてきなさい。」

 

 少し、逡巡したあと、付いてくるよう言われる。


「えっ?でも……。いいですか?」


 校舎前に立っているって事は生徒の何かのチェックをしているのではと思うが、問題ないみたい。


「大丈夫、大丈夫。身だしなみチェックなんて、ほとんど意味ないしね。あ。靴は脱いで、そこの階段の前。どこに入れるかは後で、担任の先生から聞くといいよ。」

 

 校舎に入って、下駄箱を素通りすると、一段上がる所があった。そこの前で、靴を脱ぎ、支給されていた青いスリッパに履き替える。

 靴は言われた通りに、揃えておいておいた。


「こっちだ。」


 男性職員に促され、校長室まで案内され、部屋の前で待つように言われた。


「ちょっと、待っててね」


 コンコン


 部屋の中から「どうぞ―」と入室許可が出た。


「失礼致します。校長。編入生をお連れしました」


 男性職員は軽く、頭を下げ、入室していく。


「ありがとう。……下がっていいわ。ああ。相澤先生を呼んできてもらえないかしら。」


「わかりました。では、失礼致します」


「あなたも、入っていらっしゃい」


 一葉にも、入室許可が降りた。


「はい。しつれいいたします」


 部屋に入り、一礼して、扉の方に向き、両手で閉める。


 部屋の中には、まだ年若い女性がいた。


 この人が、校長なのかな。


「ようこそ。星彩学園ヘ!私達はあなたを歓迎するわ!さっ、そこに座って。」


 部屋の中央には、大きめの木でできたテ―ブルが置いてあり、そこに向かい合うように、ソファ―がおいてあった。

 促されたように、ソファ―に座ると、体が、沈む。

 

「私は、ここの校長の、氷山雪江よ。よろしくね!」


 ショ―トボブの栗毛。出るところは出て、女性らしい体つきの、まだ若そうな女性だった。

 

 

 氷山先生がお茶を淹れてくれ、ボクの前に、置いた。


 お茶を手に取り、ちびちびと飲んでいると、氷山先生は悲痛そうな表情をしながら口を開いた。


「あなたことは雅人から聞いたわ。壮絶な環境だったらしいわね」 


 どうして、氷山先生が、悲しそうな顔をしているのかわからなかった。

 たしかに、普通の生活は送ってはいなかった。でも、それがぼくたちにとっては普通だった。


「だいじょうぶです。たしかに、ふつうじゃないかもしれないです。でも、あれが、ぼくたちのふつうだった。だから」


「もう、いいのよ。もう………大丈夫だから………ね。ここでは…………。はぁ。駄目ね………。あの話を聞いてしまうと…ね。 ごめんなさいね。さっ!切り替えて、これからのことを話しましょう! とりあえず、ここに通っている間は、居、食、住はもちろんこと、できる限りのフォロ―はさせてもらうわ。だから、困ったことがあったら、すぐに、近くの先生たちに言いなさい。そこからすぐ、私のところに連絡が来るようにするわ」


「わかりました。おねがいします」


「あとは、そ『コンコン』。丁度いいわ」

「入ってちょうだい!」


「失礼致します」


 これは、また随分と若い女性だ。

 黒のビジネスス―ツに、スカ―ト。つややかな黒髪でセミロング。タレ目で左目の下に泣きぼくろのある。スラリとした体型のキレイな女性だった。


「そちらの子が、編入生ですか?」


「ええ、そうよ。あとはお願いできるかしら?」


「はい!」


「じゃあ、おねがい。一葉君。彼女が、あなたがこれから通うことになる教室の担任で相澤先生よ。なにか、困ったことが、あれば彼女に言うといいわ。もちろん、直接ここに来てもいいわ。」


「はい。ありがとうございます」


「じゃあ、行こっか」


「はい、これからおねがいします」


「うん!よろしくね!」


「失礼致しました」

「しつれいいたしました」


 一礼してから、部屋を出て、先生についていく。

「そういえば、私の名前言ってなかったね。」


「私は相澤希(あいざわのぞみ)。あらためて、よろしく」


「よろしくおねがいします」


 教室の方へ歩いていると、下駄箱のエリアに近づいてきた。

「先に、使う下駄箱をおしえるね」


 そう言って、エリアの端にある靴箱に案内され


「え―と……。あ~。あったあった。ここ。右下のところ、2段目。そこに入れて。」


「わかりました」

 

靴箱は縦に8足、横に16足分のある棚で。そのうち、一番右下の2段目学園空いていて、そこがぼくの使う場所らしい。

 靴を入れたら、下駄箱のエリアから出て、教室の方へ歩きだす。


「それにしても、すごいね!」


「え?」


「飛び級でしかもいきなり、高等部にでしょう?職員室の方でも話題になってたよ!すごい生徒が来た〜って」


「ははは。すごい、ですか」


「すごいよ!それに……すんごいかわいいし!」


「か、かわいいですか。」


「うんうん。クラスのみんな。狂喜乱舞するんじゃないかな〜」


「ぼく、おとこ。ですよ?こんななりですけど……」


「はははは。………えっ。ウソッ。」


「ほんとです」


「ッと、。着いたね。じゃあ、後で呼ぶから。呼んだら、教室に入ってきて」


「はい」


 そう言って、相澤先生は教室に入っていき、いろいろと説明をしているのだろう。


 時折、うぉおお!とかよっしゃぁああ!とか騒がしい声が、聞こえてくる。


 すると、「入って来て!」と声が、かかったので、教室に入っていく。

 

 引き戸の扉を開け、教壇の横まで歩いていくと、教室が静まり返った。


 教壇横にたどり着き、クラスメイトの方へ向くと。


 地面に、光が奔った。


 突如、目の前が真っ白に染まり、浮遊感を感じながら意識を失った。


 最後に目にしたのは地面に映し出された、幾何学模様のサークル――魔法陣だった。

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