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実技試験 1

 入学試験はつつが無く進んでいる。


 学科試験も、シアに扱かれたおかげか、難なく解くことができた。


 自己採点では90点は難いだろう。 あとは、考察を何個か書く問題だったから、それは、正解してるかどうか怪しい。


 学科試験の次は、実技試験らしく、場所を移動するみたいだ。

 周りの生徒達が移動を始めた。


 席から降りて、移動する前に試験開始前に机と椅子の高さが合っていなくて困っていた所に、教師を呼んでくれた、おねえさんを探す。


「お、おねえさん!」


 席から立ち上がった所に声をかけた。


「ん? どうしたの〜?」


 一葉に気がつくと、しゃがんで一葉と目線を合わせた。


「さっきは、ありがとうございました」


 一葉は頭を下げてお礼を言うと、おねえさんはふわっと微笑み、お礼がちゃんとできて偉いね~と一葉の頭を撫でる。


「ふふっ。 どういたしまして! 編入生かな?」


「はい!」


「じゃあ、修練場の場所も分からないよね? 一緒に行こっか」


 おねえさんは手を差し伸べて、一葉はその手をとる。


「お願いします」


 修練場に行く間におねえさんの名前を教えてもらった。

 名前は『ベリー』というらしい。

 修練場は主に魔法を使用する授業に使用する場所で、建物には耐魔法、耐物理、騒音防止の付与魔法が施されているらしい。それと、有事の際の避難場所になっているとの事。教師を含む学園に通う者全員が避難できるらしい。

 ちなみに、この学園は初等部6学年、各3クラス。中等部3学年、各6クラス。高等部3学年、各6クラス+特科クラスが一つの計55クラス。 各クラスの生徒数は30人前後。合計で約1630人からなるモンスター校。 教師陣を含むと総人数はもう少し増えるが、非常勤講師も多く、定年間際の方から教員免許取り立ての新人もいて、人員の入れ替えも非常に多いらしく教師の人数は分からないらしい。


 教師の人数が分からないって、大丈夫なの!?

と思わなくはないが、中等部までは決まった教師や講師が担当していて、高等部から専門的な分野に入るため、選んだ学科の授業以外では殆ど絡みが無い。だから、特に知らなくても問題無いらしい。


 そんなこんなの事を聞かせてもらいながら歩いていると(くだん)の修練場に着いた。


 見た目は、ただのボロい平屋建ての家屋だった。

 入り口の上の方に『第三修練場』と乱雑に書かれた看板が掛けてある。

 

「ここ?」


 一葉は戸惑いを隠せずベリーに確認をする。


「そうだよ〜。 さ、行こ!」


 戸惑う一葉の事などなんのその手を引いて中に入って行く。


 中も建物の外観の通りの広さしかなく、とても、1000人以上も避難できる場所とは思えない。

 入っても100人位?の広さしかなく、道場と言った方がしっくりくる。

 入って、目の前の壁際に生け花が置いてあり、壁に掛け軸が2つ掛けてあった。


 『見敵必殺』の文字の左に『人魔不問』の文字。


 コレってあれかな?人であろうと魔物、魔獣であろうと、敵と見定めたら必ず殺せっていう、そういうアレ?


「ここはね~、人口ダンジョンなんだよ~」


「はい?」


 ダンジョン? ダンジョンってあれだよね? モンスターが蔓延る迷宮。

 主に、冒険者や傭兵の稼ぎ場所で、彼らの墓場となりやすい場所。


「あ、ああ、ああ。大丈夫だよ、モンスターは滅多に出ないから」


 と手をぶんぶん振って一葉を安心させようとするが、一葉は聞き逃さなかった。


 ”滅多に”という事は、たまに出るという事だ。


 本当に、大丈夫なの? この場所…



「ひー、ふー、みー……。ん、全員集まった」


 眠たげな表情の、ベリーと同じ年代に見える少女が受験者の数を数えていた。


「じゃあ、少し早いけど始める。 全員、付いてきて」


 少女が生けてある花を退かし、2つの掛け軸を外すと『見敵必殺』の掛け軸があった場所の壁を押す。

 すると壁がクルッと回り、人が一人通れる位の隙間が出来た。


 中は明かりが無く真っ暗。 そこに、躊躇いもなく入っていった。


 ああ、また、過去の勇者製か……


 一葉は一人そんな事を思いながら皆について行き壁を潜る。


「へっ? ぇえええぅおああああ!」


 潜った先は地面が無く、下に落ちて行った。


 落ちていく途中で足に地面がついたが斜面になっていて、しかも、やけに滑る地面で、そのまま滑落していく。


「ひぃああああああああ!」


 明かりが見えてきて、徐々に光が大きくなっていき、スポッと放り出された。


「おっと。 大丈夫?」


 一番最初に入って行った少女が空中に放り出された一葉を受け止め、心配そうに見つめる。


「はぁ…、はぁ…。し、死ぬかと思った…」


 涙目で少女をにらみつけるが


「大丈夫。 人間、そんな簡単に死なない」


 と一葉を降ろしながら、淡々と言い放った。


「先に、言ってくれればいいのに…」


「……。ああ!」


 と何かに気がついたみたいにポンと手を叩く。


「キミ、編入組? ごめんね、編入試験の子もいるなんて聞いていなかったから、説明、省いちゃった」


 少女は申し訳なさげに謝ってきた。


「ううん。 少し、驚いたけど、怪我もなかったし、大丈夫!」


「ありがと。 優しいんだね」


 一葉の頭をポンポンと撫でて、少女は微笑んだ。

 

 周りはを見回すと、広大な、岩をくり抜いたかのような場所。

 天井は非常に高く、四階建ての建物もすっぽり入りそうなくらい。

 岩山が所々に聳え立っていた。


「ゴホン! じゃあ、皆聞いて。 初めての試験の子もいるから説明する。 ここでは3つの試験を受けてもらう。 まず、1つ目。 ここから先に見える的に魔法を当てること」


 と言って、的の方へ指をさす。


「2つ目。 あっちで、射撃」


 違う方向を指差し、そちらを見ると、長机が置いてあり、その上に拳銃と弾薬。耳当てが並べてあった。

 その奥で、射撃用の的が岩山の前に横一列で突き立てられていた。


 

「3つ目。 後で来る冒険者か傭兵とあっちの広い場所で模擬戦。 私が監督、審査する。 以上」


 と説明を終えた。 


(魔法かあ…。 魔剣使ってもいいのかな?)


 一葉は服の袖に隠れた白銀の腕甲に目を向ける。


『火よ 踊れ、踊れ。 総てを燃やし尽くす火球と成れ! 《ファイヤボゥ》!』  ボスッ!


 詠唱を唱えた男子生徒が放ったのはこぶし大の火の球だった。

 ()()()()と進んで行き、的に当たると黒く焦げた跡を残して消え去った。


 しょっっっっっっっっぼ!


 え!?


 火球って亜音速で飛ぶ物だよね? 今の160キロ位の速さじゃない?

 遅いし、威力も弱い…、的を焦がしただけって…

 ハナおねえちゃんの、当たった所で爆発させてたけど、それが普通じゃないの?


「うん。少し、威力は弱いけど、速さに申し分なしっと。 次」

 

「はい!」

 

 男子生徒が評価を聞いて、ヨシッとガッツポーズをして、その場を離れる。


 次は、女子生徒が詠唱を始めた。


「水よ 吹き上げなさい! 《スプラッシュ》!」

 

 ブシャァア!


 的の下から水が吹き出した。 

 的は特に目立った傷跡も無く、只々、水に濡れただけで、女子生徒はやってやりましたわ!とでも言いたげにドヤ顔をしていた。


「略式詠唱。 少し発動までに遅れがあったけど、きちんと発動してたし、狙いも悪くない。 次」


 と評価をして、手元に用意してある紙にメモをしていく。


 次々と進んで行き、一番最後。 一葉の番になった。

 

「キミで最後」


 一葉は立ち位置について的を見据え、距離を測る。


 今までの人達の試験風景を見ていて、魔道具を使用する事も問題ないと分かったため、遠慮なく魔剣を使う。


 ピシッ!


 腕が結晶に覆われた。


 シャン!


 結晶で覆われた腕から、結晶が、迫り上がっていき、次の瞬間、結晶は砕け散った

 手首から指先にかけては未だ結晶に包まれ、甲の上から《身喰いの剣》を短くして、取り回しやすい長さになった剣身が生えていた。

「……魔剣?」


 試験官は目を丸くして、様子を見る。

 

 ジャコッ!と剣身が二股に開き、周囲から魔力を開いた剣身間に集めていく。


 二股に分かたれた剣身を的に向けると、開いた剣身から一条の光となって、的に向かっていく。


 的は魔力の光線に撃ち抜かれ、そのまま貫通して後方の地面に着弾する。

 着弾と同時に轟音と衝撃を撒き散らし、周囲を爆風と熱波が襲いかかる。

 熱波が一葉達の頬を撫で、次いで爆風が迫って来た。


「っ! 皆、こっちに!」


 試験監督の少女が叫び、すかさず一葉の前に出て障壁の魔法を張る。

 他の人達が一葉の近くまで駆け寄って来て、少女と同様に障壁を張る。

 障壁は試験監督の少女の前方、少し離れた所に重ねて張られる。


 一葉達の所まで衝撃と爆風がついぞ到達して、障壁を揺らす。


「っく! 」


「おい!おいおいおいおいおい! やべぇぞ! 全員、気張れよ!」


 男子生徒の一人が声を荒らげながら檄を飛ばす。


「「応よ!」」


 何人かがそれに応え、障壁の維持のために踏ん張る。


 やがて、爆風は治まり、試験監督の少女含め、一葉以外全員が息を切らせその場に座り込んだ。


 一葉はその場に、呆然と立ち尽くした。


 一葉が撃った魔法の着弾地点は大きく抉らえ、所々ガラス化しており、未だ、冷めぬ様子。

 的の後にあった岩山は姿を消し、均等に均された地面のみ残されていた


 突然、肩を掴まれ振り向かさせられ、頬を殴られた。


「テメェ、クソガキィ! 俺らを殺すつもりか!?」


 胸ぐらを掴まれ、床に叩きつけられ、顔の横に拳が落ちた。


 声からして、さっき他の人達に声をかけていた男子生徒だろう。

 その顔は怒りに染めていて、一葉を射殺さんと睨みつけていた。


「ごめ、ごめんなさい。 ひっぐ…グスッ」


「ちょっ! やりすぎだって、アクセル!」


「んなもん、分かってるんだよ! だが!ここで、きちんと言っとかんと同じ事しでかすぞ!」


「ごめ゛ん゛ざい゛〜。 ごんな゛、つもりじゃ…。うわ~ん」


 アクセルが言わんとすることは理解できるが、子供相手にする仕打ちでは無いと、どこか責める様な視線を向けられ、アクセルは一葉から手を放した。


「ッチ!」


 居心地悪くなったアクセルは一葉から離れて行った。


「うわ~ん。 ごめ゛ん゛ざい゛〜、ぅああああ!」


 

 ザリッと地面を踏みしめる音がして


「何が、あったんだ?」


 と、冒険者と思しき男性が立っていた。

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[一言] 一葉、早速やらかしてんね〜
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