入学試験
皇城に登城してから早、2週が経った。
その間、雄一達は、国王から下賜された武具装具になれるため、ひたすら戦闘訓練を繰り返していた。
一方で、一葉というと…
カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ
「お、終わった~」
ペンを机の上に放り、伸びをする。
ドンッ! という音と共に、本の山が机に積まれた。
「はい。 次は、この本の内容を覚えなさい。 その後に、またテストをするから」
と、シアが慈悲もなく告げる。
かれこれ、9時間。 食事の時間以外、碌な休憩もなく9時間もの間、本の内容を覚えさせられ、確認の為にテストを出される。
これには、流石に一葉でも放り出したくなった。
「うがぁあああ! もう、嫌だぁああ。 今日もずっとだよ! もう、勘弁してよ、シア姉!」
「そうは言うけど、もう少しで入学試験でしょう? これを覚えれば、おしまいだから。 もう少し、頑張りなさい!」
「イ ヤ!」
一葉は自室から飛び出し、屋敷内を疾走する。
「あ、コラ! 待ちなさい!」
シアが呆気にとられるほどの逃げっぷりで、気を取り戻し追いかけていく。
一葉は、階段の手すりに手をかけ、一階に飛び降りる。
シアもそれに続き一階に飛び降りると、一葉はそこにはもういない。
「何処いったの!? あの子はぁ!」
怒号が響く。
シアが一葉を探しに一階にある部屋の扉を虱潰しに探している一方で、一葉は一階には飛び降りておらず、鉤爪のついた鎖を右腕に嵌めてある腕甲から伸ばし、階段の柵に引っ掛けてぶら下がっていた。 一葉はあれから、《身喰いの剣》の形状を変える術を身に着けた。 それにより、戦闘の幅は増え、近接戦闘から遠距離からの砲撃と様々な距離から攻撃を繰り出すことができる方になった。
一葉はシアの気配が遠ざかった所で鎖を手繰って二階に戻り、一息つく。
「また、逃げ出したのか。 一葉」
後ろから、正義の呆れた声が、聞こえた。
「だって、ずぅっと勉強なんて勘弁してほしいよ。 マサ兄もいやでしょ!?」
「まぁなぁ。 だけどよ、もうじき入学試験なんだろ? なら、合格できるように頑張らなくちゃな」
頭をポンポンとされ、諭される。
一階から誰かが走り登って来る音が聞こえ、瞬時に察知して、窓を開けて、縁に手をかける。
「見つけたぁ!」
「やばっ!」
窓から外に飛び出した所で、シアに足を掴まれ、勢い余って壁に全身をぶつける。
「あ。 ごめん! 大丈夫!?」
「痛い」
「そりゃ、そうだろ…」
シアは一葉の足を引っ張り上げ、一葉を確保する。
正義はその様子を呆れた様子で眺めていた。
そんなこんながあって、入学試験当日。
一葉は国立メサイアベルテ学園の校門で校舎を見上げていた。
「君! 編入試験に受けに来たのかな?」
不意に横から、学園の制服を纏ったお兄さんに声をかけられた。
「はい。 おはようございます!」
「ああ、おはよう。 試験場が分からないのかな? 受験票持ってる?」
「はい」
一葉は受験票をお兄さんに見せた。
「うん、ありがとう。 試験場まで、案内するよ付いてきて」
「本当ですか!? ありがとうございます!」
一葉はお礼をしてから、お兄さんに付いていく。
校舎に入って、三階に登って直ぐに横にある教室に入って行く。
中はすり鉢状の教室だった。ドアは一箇所しかなく、教室最下層、中央の壁に上下にスライドさせることの出来る黒板が埋め込まれている。
そのすぐ前に教壇と教卓があり、それを囲う様に段状になっていて一段に5人づつ座れる。それが6段あり、それぞれの段に長机と折りたたみ式の椅子が一定の間隔で設置されていた。
教室には正義達と同じ年頃の少年少女が同じ服装を着て、緊張の面持ちで、指定された席に座っていた。
案内してくれたお兄さんが教壇に立っていた教師であろう男性に声をかけ、何かを説明していた。
「君の席は、一番上の段の右奥の右から2番目の所だね。 じゃあ、僕は行くよ。 頑張ってね」
お兄さんが応援の言葉をくれ、手を振っていた。
「わかりました。 ありがとうございます」
お兄さんが戻ってきて、場所を説明してくれる。
それに従い、階段を登って行き、席に向かうと、すれ違う人がこちらを見て驚いたり、息を呑んだりしている人達が目についた。
(ん? どうしたんだろう。 なんか、やけに見られてる気がする)
席に着くと、一葉の背丈には椅子の高さと机の高さが合っていなくて、椅子に座った時に肩の高さ位に机があり、このままだと、答案を記入しづらい。 どうしたものかと思案していると、出入り口の扉を閉める音がした。
「定刻の5分前だぁ。 全員席に着け〜。 用紙を配るぞ〜」
教師がのんびりしてるけど大きな声で受験生に伝える。
(そういえば、初等部って僕と同じ位の年齢の子が受けてるって聞いてたけど、みんな、随分でかいね)
横の席には薄いピンクの髪の小柄な少女が座って、ぱっちりと目が合う。
少女はギョッと驚くと、気を取り戻したのかフッと笑みを向けてきたのこちらも笑みを返してそっと、頭をを少し下げた。
「今から、用紙配るけど、筆記具が無い奴はその時に言え〜。一緒に渡すからな〜」
教師はそう言いながら、前列から順に用紙を配っていった。
一葉達の列まで来ると、少女が教師に声をかける。
「先生」
「ん~? どうした〜?」
「横の子。 椅子と机の高さが合っていないみたいで書きにくそうですよ」
と、一葉が気になっていたけど、気にしないことにしたことを教師に伝えてくれた。
「ん~? ああ、ホントだ。 う~ん、なんか椅子に敷けるものあったかな〜? ちょっと、待っててね~」
教師は慌てて、教卓付近に行くとゴソゴソと漁り、何かを引っ張り出して持ってくる。
「キミ〜。 これを椅子に敷いてね〜。ちょっと〜硬いけど〜、それはぁ我慢してね〜」
と言って、教科書だろうか冊子を何冊か渡され、それを椅子に敷く。 それと、教師がローブを脱いで、小さく畳んだものを渡してきて、それを教科書の上に敷いてクッション代わりに使ってとの事だった。
一葉に用紙と敷物を渡すと、下に戻って行く。
「定刻になったぁ。 始めェ!」
入試の開始の合図がなされた。




