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従魔召喚

 一頻り(ひとしきり)文句を言い放ち、溜飲が下がった正義達は、この場を後にしようと扉に向かって歩きだした。


 一葉もそれに続くが、右手首に嵌っていたブレスレットが勝手に動き一葉の右腕を持ち上げ、ハリボテに向ける。そして、再び結晶に包まれた。

 一葉の足元からも結晶が現れ、ハリボテの方にまで伸びていき、やがてハリボテさえも呑み込んだ。


「えっ!? ちょっと、まって! え?えぇえええ!?」


 一葉は混乱し、アタフタする。そこで、ようやく気がついた。体が動かない事に。


「おい! どうした…って、えええええ?! 何やってんの、お前!?」


 正義が一葉の声を聞いて後ろを振り向くと一葉が結晶に包まれていた事に驚いた。


「しらない! からだがかってに!」


「とにかく、そこから離れろ!」


「むり! からだがうごかない!」


「はあ!? あぁああ!」


 そうこうしているうちに、結晶が砕け散った。

 そこにあったはずのハリボテが、綺麗サッパリ消失していた。


「お前、どうすんの?コレ」 


「うぅ…。ぼくのせいじゃないのに。 このうでわのせいだもん!」


 ブレスレットを見ると、形状が変わっていて、白い装飾のないシンプルな篭手になっていた。


「ふむ。 気にするでない。 所詮、ただの置物だったのだ。 寧ろ、清掃の手間が無くなり城内の清掃員も大助かりだろうよ。 ここの清掃は、大変だと、よく苦情が来ておったからな」


 ルーバー王が近くに来ており、半泣き状態の一葉の頭をポンポンと叩く。


「怪我は無いか?体におかしいところは?」


「う? とくには」


「そうか! なら良かった。 さぁ、行こうか」


 ルーバー王に手を引かれ、この場を後にする。


 そこから、食堂によって昼食を食べて、再び、城内の案内をされようとしたとこに、宰相閣下が走って来て、すごい剣幕でルーバー王に詰め寄る。


「ルーバー!! 見つけたぞ!! お前!今まで何処ほっつき歩いてたんだ!?」


 怒号が食堂に響き渡り、何事かと食堂にいる全員が視線はむける。

 

 宰相…だよね? 強すぎない? 相手、この国の王だよ。


「げっ!」


 ルーバー王は『しまった!』と顔を顰め、視線を逸らす。


「げっ!とはなんですか!? さぁ、行きますよ! 楽しい、楽しい政務のお時間ですよ!」


「楽しくはないだろ!? こら! 放さんか! 余を誰だと心得る!」


「誰が放しますか! サボりぐせのついた愚王が!!」


 うわぁ。 言っちゃったよ、この人。


 そのまま、ルーバー王は宰相に首根っこを掴まれ、というより片手で首を締められながら連れ去られていった。


 国王が侮辱されるというある意味、事件だというのに、『またか…』という空気が流れていた。


「さて、皆さん。次のとこに行きましょうか」


 と、マリアが声をかけてくる。


「えっ!? いいの、アレ?!」


 愛莉栖が目をギョッとさせ問う。


「まぁ、いつもの事ですし」

 としれっと言う。


「ええ…」


 困惑しながら、マリアについていくと、城門前に馬車が2台待っていた。


「もう、かえるの?」


「いえ、まだですよ。 今日は、このあと『聖堂教会』という所に行って、カレンさんの従魔の召喚を行います。 そのための触媒ももらいましたし」


「セイドウキョウカイ?」


「そういえば、その話もまだでしたね。 馬車の中で軽く説明いたしますね。 ローズ、そっちはお願いね」


「かしこまりました」


 ローズが礼を取って正義と雄一。春希と理恵を馬車の中に案内する。

 他はもう一台の馬車に。


「それでは軽くお話させていただきますね」


 聖堂教会とは、この世界にある宗教のうちの一つで、神の教えを説く。

 だが、本来の役割は人々を魔獣や魔物。 又はそれに準ずるモノを排除することを目的としている。

 そのため、魔獣や魔物を倒すための特殊な武装やアイテムが多数ある。その中でも最たる例が()()()()魔獣や魔物が街に攻め入って来ても教会だけには近づかない。

 それは、ひとえに魔獣達とは対となる聖属性の魔力が教会に満ちているからだ。


「とまぁ、そんな訳で、教会の中で従魔を喚び出したほうが、万が一の時があったときに対処しやすいのですよ」


「なるほどね。 でも、それって教会の人達的には問題ないんですか?」

 

 華蓮がマリアの話を聞いて気になった事を聞く。


「いや〜。もし、従魔契約が失敗すれば、喜々として討伐するでしょうね。 基本的に頭のネジが数本壊れている方たちですので」


「え、えぇ…」


 華蓮は困惑しながらも、絶対に成功させると胸に誓う。


 馬車が停まり外に出ると、尖塔が大きくはりだし、ステンドグラスが嵌められた、荘厳な雰囲気のある教会だった。


 中に入ると天井が高く、ステンドグラスから入る陽の光で満ちていた。

 ステンドグラスはよく見ると、色々な図になっていた。


「マリアおねえさん。 あれってなにかいみがあるの?」


 とても、抽象的な質問をマリアに聞くと、何が知りたいか汲み取ったマリアは答える。


「あれは、創世神話の一節ですね。 神はまず最初に大地を創った。 次に植物を。「次に生物をお創りになった。」!?」

 

「お待ちしておりました。 勇者様方。  私、この教会の司教をしております『ダンテ』と申します。 以後、宜しくお願いします」

 

 と低く重厚な声がし、そちらを向くと若い神父が頭を下げていた。


「ダンテ神父お久しぶりですね」


「ええ、お久しぶりですね、マリア」


「申し訳有りませんね、急なお願いを聞いていただいて。 あと、普段通りの口調でお願いします。 貴方にそんな口調で話されると怖気が奔ります」


「では、遠慮なく。 なぁに、構わんさ。 お前の無茶な願いは今に始まったことではないからな。 で? 今日、従魔契約を行うのは誰だ?」


「はい! 私です」


 華蓮が手を上げる。


「お嬢さんが? まあ、いいだろう。 ついてきなさい」


 ダンテは踵を返すと一人、スタスタと歩いていく。 華蓮はそれに慌てて付いていく。


「教会なのに椅子は無いんですね」


 理恵が不思議に思い尋ねる。


「召喚したモノが暴れないともかぎりませんから」


 とマリアが答えた。


――――――――――――――――――――――――

 ステンドグラスか洩れる陽の光に照らされた魔法陣が教会の中心にある。

 側には黒ローブのフードで顔を隠した人が数人控えていた。


 華蓮は地面にチョークで描かれた大きな魔法陣の前に立つ。


「触媒を陣の中央に」


 ダンテ神父の指示が飛ぶ。


「はい」


 言われた通りに魔法陣の中央に触媒として貰った魔力が詰まったルビーの嵌まった指輪を置く。


「陣に触れて、魔力を流せ」


 魔法陣に少しずつ魔力を流していくと外周部のサークルが手で触れているところから時計回りに発光していき、サークル全体が発光し終わると、次に中に描かれた紋様が発光する。


「流す量が少ない。 もっと流せ」


「はい」


 魔力の量を増やすと発光が強くなり、中央に置いた指輪が閃光を放した。


 パァン!!!!



「いったぁああ!」


 指輪は弾け飛び、嵌っていたルビーが飛散する。

 その勢いは強く、遠くから様子を見ていたマリア達のところまで飛んでいて、ルビーの欠片は一葉の頭に直撃した。


「大丈夫か!? って、おぅ。 これは、どうすればいいんだ? 引っこ抜くのか?」

 

 雄一が一葉を見て驚き、対応に困る。 何故なら、一葉の額にルビーの欠片が刺さっていたのだ。


「え? なにがおこったの? え? いたいんだけど!? え? なにこれ」


 一葉は額を触ると異物が刺さっている事に気がつくと、それを掴んで引き抜いた。 

 その瞬間、血が吹き出した。


「あ、駄目! きゃぁぁぁ!血が! 何で抜いちゃうの!? 兎に角、止血しないと!」


「大丈夫だ。 あれくらいなら直ぐに治る。 見てみろ」


 一葉に駆け寄ろうとした華蓮の肩を掴んだダンテ神父はよく見ろという。


「何を……!?」


 キッ!とダンテ神父を睨みつけ、一葉に視線を戻すと額の傷がみるみる治っていく。


「え?」


「だから、大丈夫だと言ったであろう。 ここは、神聖なる教会。 聖属性の魔力で満ちている。 純然たる人種なら多少の傷ならここに入れば今みたいに治る」


「少し、言っている意味が」


「失言した。 今は必要のないことだ、気にするな。 まだ、触媒はあるか?」


「あと、一つだけ」


 エメラルドを装飾としたネックレスを取り出す。


「駄目だな」


「え?」


「さっきの指輪はルビーが嵌っていたな。 これは、大きさはあるが、内包出来る魔力の量がルビーよりも少ない。召喚魔法っていうのは術者が魔法陣に魔力を流すことで発動する。 魔法陣に流す魔力の量で喚び出せるモノの強さが変わる。 喚び出した魔獣や魔物が召喚時に襲って来るとも限らないからな、触媒に貯めてある魔力を使って拘束するのだ。 だから、術者の魔力とつり合いが取れてない触媒を使うと、壊れる。今みたいにな」


 召喚魔法は二通りのやり方がある。触媒を使用する方法としない方法。

 

(触媒を使用しない場合)

 『魔法陣に魔力を流す』+『喚び出されたモノを拘束する』+『契約』

 

 の三工程を術者の魔力で行う。


(触媒を使用する場合)

 『魔法陣に魔力を流す(術者)』+『喚び出されたモノを拘束する(触媒)』+『契約(術者)』

  

 と触媒を使用した方が一工程節約出来るため、その分、魔法陣に流す魔力を増やし強い魔獣や魔物を呼び出せる。 もしくは、そこそこの魔力を流し、契約時に使う魔力を増やし契約を確かなものにすることが出来る。


「と、召喚魔法というのはこういうものだ。 理解したか?」


「はい」


「よろしい。 で、触媒をどうするか…。 ネロ! お嬢さんに魔力ポーションを」


 ダンテ神父は黒ローブの一人に声をかけ、ポーションを持ってこさせ華蓮に渡す。

 

 華蓮は渡されたポーションに顔を引き攣らせながら受け取る


「…デカくないですか?」


「いいから飲め」


 華蓮が渡されたポーションは大きく、かるく2リットルはある大きな丸いフラスコだった。


「失敗するたびに飲んでもらうからそのつもりでおけ」


「鬼ですか!?」


「なら、次で成功させろ。 おい、マリア! 触媒は他に無いのか?」


「手持ちはそれだけです!」


「ほう? 王族が泣いて呆れるな。 シケ過ぎではないか?」


「王族といえど、庶子なので」


「チッ! ………投影魔法を使うか? だが、あれは贋作を造るだけだしな。 さて、どうするか…」


 と軽口を叩き合うマリアとダンテをわきに一葉が華蓮に歩み寄ってくる。


「うぷっ。 どうしたの? 一葉くん」


「ハナおねえちゃん、コレつかえる?」


 と、一葉はポケットからバタフライナイフを取り出し、華蓮に見せる。


「え、でもそれって一葉くんの大切なナイフでしょう? 流石に使えないよ」


 一葉が華蓮にナイフを見せているのを見て、目を見張った。


「ほう。 少年、いいナイフじゃないか。 ルビーなんかよりも容量がデカい。触媒には丁度いい」


 ナイフの造られた素材が分からない。 だが、その内包する魔力量は桁違いの量だった。

 よく見ると、角度によってナイフの色が変わる摩訶不思議なナイフだ。


「でも…」


「なにか問題が? 少年もそれを許しているのだ。 使わせて貰え」


「……わかりました。 ごめんね、使わせて貰うね」


「うん!」


 華蓮は一葉からバタフライナイフを受け取り、魔法陣の中央に置きに行く。


「少年。 マリア達の所まで下がっていなさい」


 ダンテ神父が一葉を後ろに下がらせる。 それを見届けてから、言う。


「始めろ」


「はい。 っっ!」


 再び、魔法陣に魔力が流れ、光が教会内を呑み込んだ。

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