曰く付きの剣
宝物庫の通路に隠された階段。 それを降りていく勇者一行とロイヤルファミリー。
地下には曰く付き武具や装飾品。調度品、薬品等があるらしい。 ここの物に盗難防止の魔法は掛けられていないらしく、自由に触ることが出来る。だが、命の保証はない。
「ぶきがおおいね〜」
「そうだね〜。 勝手に触っちゃ駄目だよ、一葉君」
と華蓮が言う。
幾つもの剣がナニカ文字が刻まれている石碑に突き立てられ並んでいる。
その中に気になるものはがあった。
色は黒、いや、灰色だろうか。薄暗い場所だから判別が付きづらい。
形状は鍔無しの大剣。見た目はなんらおかしいところのない極々、普通の大剣だ。
「おうさまー。このけん、もってみていい?」
「む? その剣は…たしか…『身喰いの剣』だったか…?」
「みぐい?」
「ああ。 かつて勇者が使用していたと言われている剣なんだが、その剣の力を引き出すと身体の一部が結晶のようなものに覆われて、そこが失われるらしい。 その勇者は力の使いすぎで亡くなったらしいがな。 その後にその剣を使う者もいたが一人残らず同じ末路を辿ったらしい。」
「ふーん」
「ソレが気になるのか?」
「うん。 なんか、よんでるきがする」
「………。 よかろう、抜いてみろ」
「陛下!!」
マリアが避難の声を上げるが、一葉はそんなことお構いなしに『身喰いの剣』を両手で握る。
剣を握った手の甲をアイスブルーの結晶が突き破る。
一葉は手のひらに痛みを感じ、顔を顰めるが、剣から手を放さなかった。
「一葉くん!?」
見ていた華蓮達が悲鳴を上げる。
「だいじょうぶ」
そう応え、剣に集中する。
ナニカに侵食される感じがして、すぐにそれに抵抗する。
吹き荒れる魔力によって空気が震える。
(この力、ぼくのに似てる? でも、なんか…体の中に入ってきて、気持ち悪い。 いいよ、喰うか、喰われるか勝負だ)
『身喰いの剣』の剣身がエメラルドブルーの結晶に覆われると共に一葉の剣を握る腕がアイスブルーの結晶に覆われた。
(っ!? ナニカいる…?)
カチッと世界の時が停まった。
剣の向こう側は壁だった筈だ。 でも、剣の向こう側に体が薄く透けているが、髪で顔の半分が隠れた少女がいた。
彼女が手を剣に翳すと一葉の腕を覆う結晶が身体の方に侵食していく。
彼女の侵食する力と一葉の異能がせめぎ合う。
「っぐぅ!」
『魂喰らい』、一葉が勝手にそう呼ぶ異能。 他者の身を魂を喰らい、その者の力を簒奪する力。
一葉が身に付けた唯一の異能。それの力に意識を強めた。
少女の指先がエメラルドブルーの結晶に覆われ、砕けた。
少女はそれを見て驚いたと言わんばかりに目を見開いく。
少女は手を震わせ、フッと笑みをうかべた。
彼女の侵食する力が弱まり、抵抗が少なくった。
それは、突然の事で、一葉には彼女を本当に喰らうつもりはなかった。ただ、抵抗していただけ。
彼女の身体がエメラルドブルーの結晶に足先から覆われていく中を見ている事しかできなかった。
「○○○○○」
結晶が彼女の身体を覆っていき、それが顔にまでおよんだところで口が動いた。
何も聞こえない。
だが、口の動きでなんとなく分かった。
――――待っていた と。
彼女が結晶に覆われて砕けてしまった。その瞬間に停まっていた世界が動き始める。
一葉の腕を覆っていた結晶は砕け、エメラルドブルーの結晶が一葉の拳と剣をパッと覆い、剣先の方から結晶が崩れ落ちていく。
すると、台座から剣を抜くことができた。
剣は軽く、まるで重みを感じない。
「大丈夫なのか?」
ルーバー王が心配下に聞いてくる。
「うん。 だいじょうぶ。 あ、さやがないや」
「後で、見繕わせよう。 魔剣の鞘は特製でな、普通の剣の鞘では駄目なのだ」
「そうなんだ」
『身喰いの剣』が突如結晶に覆われて、次の瞬間、剣は失われて、ブレスレットが右手首に嵌っていた
「へ?」
「は?」
沈黙が降りた。
何故に?
「何が……?」
「さ、さあ?」
ルーバー王と一葉は首を傾げた。
他にめぼしい物もなかった為、上に戻ると、少し薄暗い場所に目が慣れていたから眩しく感じた。
「うわっ。眩しっ!」
正義が声を上げた。
「ははは! 仕方なかろう!我慢せよ」
ルーバー王が快活に笑う。
「ふむ。 そういえば、雄一殿達は下では何か気にいるものは無かったのか?」
「そうですね。 特にコレ!っていうのは無かったですね。見る分には楽しかったですよ」
「だな! こう、なんというかアガるよな」
正義と雄一は声を踊らせた。
「私達も、特には…」
と華蓮が応え
「う~ん、私もかなぁ」
と理恵が続く。
沙月や春希、愛莉栖も頷き、めぼしい物は無かったと伝える。
ちなみに、雄一達は下に降りる前に既に幾つか貰っていた。
雄一は『聖剣 ヴェルト』と呼ばれるロングソードを。
正義は『エイジス』と呼ばれる籠手を。
理恵と春希は魔石が嵌められ腕輪を貰い、華蓮はネックレスと指輪を。
愛莉栖は希少な鉱石を幾つも貰っていて、沙月は愛莉栖に造って貰うと言って断っていた。
「そうか。 ふむ…。ついでだ、城の中も案内しよう。 何処か見たいところはあるか?」
どうやら、国王直々に城内を案内してくれるらしい。




