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テレサ VS 正義

 雄一がヴィルとの模擬戦を終え戻って来た。


「(皆、聞いてほしい)」


 念話。 雄一達(一葉を除く)が、普通に喋りながら、魔力を通じて会話をする。


「お疲れさん、水原(どうした?)」


「うん、次は正義だよ(さっき、忠告されたんだ。 貴族に注意しろって。 それと、力を隠し続けろって)」


「わーってるよ(どういうことだ? まぁ、本気を出すまでもなさそうだが)」


 正義は念話を続けながら、武器防具の準備をしていく。




「気を付けてね。(極力、大技は使わず、素の力で戦って、叩きのめそう!)って、一葉君は何を食べてるの?」


 一葉は雄一の方をチラッと見るが口に入っているモノを飲み込んでから口を開く。


「サンドイッチ。 おなかすいたから」


「美味しそうだね。 俺も一つ、貰っていい? 動いたら小腹空いちゃった」


 雄一が愛莉栖に聞いた。


「いいよ。 好きなの持ってって。多めに作ってあるからね(力を隠すのはいいんだけど、私達はどうする? 魔法メインだからあまり、意味なさそうだけど…)」


「じゃあ、この、たまごサンド貰ってくね。 (そうだね…。 初歩的な魔法だけで、戦うとか?)」


「はい、どうぞ。 (初歩的な魔法かぁ。 ファイヤーボールとか、そのへん? それか、杖で殴る?)」


「のんきだな~、お前ら。 向こうも準備できたみたいだで行ってくるわ(殴るって…。 まぁ、そこらへんの加減は任せるがアイツらに気取られてちゃ意味ないからよ。 いっそのこと一撃で終わらせね? そうすりゃ、下手に手を出してくることもなくなるんじゃね?)」


 正義が対戦相手の方に歩いていく。


「行ってらっしゃ〜い(ああ、それもいいかもね! 私は、そうする!)」

 

「うん、気を付けてね(私もそうしようかな?)」


 沙月と理恵が正義を見送る。


「負けるんじゃないよ、セイギ!(一撃か…。ふふっ。 私もそうしよ)」


「頑張って!(みんな、殺る気出しすぎじゃない? 大丈夫? 私も、力を隠すなら、短時間で倒すようにはするけど、一撃だと、ちょっと…)」


 春希と華蓮が激を飛ばす。


(ったく。 力を隠せって言われてもよ、もう、既に隠してるつもりなんだがなぁ。 あ、腹ぁ減ってきた。 俺も後で貰うか…)


 雄一は一人愚痴りながらアルトの元に向かう。


「貴方が私の相手?」


 女性騎士が正義に訪ねた。


「ああ。 周防 正義だ。 よろしく頼む」

(コイツ、大丈夫か? 顔色メッチャ悪いんだが…)

 スッと、手を差し出す。


「ええ。 私は 第6騎士団所属 テレサよ。 生憎と家名はないの。 ごめんなさいね。 こちらこそ、よろしくお願いしますね」


(第6? 騎士団にも派閥があるのか?)


 正義は新たな情報に戸惑いながらテレサの手を取り、握手を交わした。


「うむ。 挨拶も済んだようだし、始めようか。 両者、立ち位置に着け」


 正義とテレサは数歩下がり、それぞれの武器を構える。


 テレサは腰に剣を吊るしてはいるが使わないことを見るに長槍が主武器みたいだ。

 正義はツヴァイハンダーと呼ばれる大剣を前方に構えた。


「始め!!」


 正義は肩に担ぐように大剣を振りかぶり、テレサの方に向かって走り出す。

 

「ヌォルァアア!」


 正義の振り下ろした大剣の先にはテレサがいた。


 テレサは自分の身に迫る重量級の武器握る臆する事なく、冷静に行動に移した。

 横にズレ、大剣を躱したあと、そのまま、正義との距離を詰めたのだ。

 

「こんな、重量級の武器をいきなり振り下ろすなんて、馬鹿ですか?」


 テレサはそう煽るが、正義の狙いはそこじゃない。


「生憎と、まだ修行中の身でな。 この手の武器は、使い慣れてないんだ」


 地面に刺さって引き抜けなくなった大剣を引き抜く為にテレサに背を向けることも厭わずに、力を込める。


「だとしても、敵に背を向け、その場に留まるなんて言語道断! 愚の骨頂!」


「っるっせぇなぁ! クソアマァ! 生き延びりゃいいんだよ! 生き残ったもんが勝者で正義だ! 死んだら、意味がねぇ」


「〈フィジカルエンチャント〉!」

  

 テレサが身体強化の魔法を使い動きが増した。


「クッソがァあああ! 抜けやがれぇええ!」


「私の勝ちです! ハァアア!」


 長槍の柄尻の方を両手で持ち、遠心力の力を乗せて振り下ろした。


 ニタァ


 テレサが振り下ろす動作に入った瞬間、正義の口元が歪んだ。


「悪いな。 俺の勝ちだ」


 大剣の柄を捻り、引き抜いた。


「んなっ!? し、仕込み…ですか…? これは、一本取られ、ましたね……」 


 正義が引き抜いたのは直刀。反りのない刀だが長さ的には脇差しになるのだろう。


 引き抜いた刀の柄をそのままテレサの溝尾に叩き込んだ。

柄尻がテレサの腹にめり込み鈍い音と共に嫌な感触がした。


 

 正義は気を失い力の抜けたテレサを受け止め、そして、ギャラリーに見られないように、テレサの体で刀を隠しながら鞘、元い(もとい)大剣に戻した。


「審判!」


「あ、ああ。 勝者! スオウ殿!」


「おおい! 誰か! 彼女を頼む!」


 正義が騎士たちに向かって声をかけた。すると、担架を持った白衣を着た者達が、駆け寄ってくる。


「溝尾に一発叩き込んだ。 中はイッてないだろうが診てやってくれ、嫌な感触がした。」


「心遣い感謝します。 スオウ殿はその(なり)と口調の割に随分と優しいのですね」


 ははは…と白衣を来た女性にそんなことを言われてしまった。


「スゥ〜。大きなお世話だ!」


「ははは! うん。 気を失っているだけだね。 しばらくすれば目を醒ますだろう。 スオウ殿はもう、戻っても大丈夫だよ」


 喋りながらも診察の手を緩めない。 医者か何かなのだろうか。

 特に問題ないと診断され。正義は安堵した。


「ああ、わかった」


 正義は、心配そうにテレサを見やり、仲間達の方に歩いていった。


「ニコル、ナコル。 医務室に運ぶわよ。 ったく。いくら勇者様達と手合わせしたいからと言って、仕事の調整するためにいったい何日、徹夜したのかしらね、この子は。 しばらくは、ベッドに縛り付けておきますか……」


 白衣の女性は我が子を見るように優しい目をしながらデコを小突く。

 

「「はい。 トゥスクル様」」


 同じ顔の同じ背格好の白衣を来た少年が担架にテレサを載せて訓練場から離れていった。


「総長殿」


 トゥスクルはアルトに近づき声をかけた。


「トゥスクル殿。 言いたいことは分かりますので、そのようなお顔をしないで頂きたい」


 そう。トゥスクルは怒っていたのだ。体から滲み出る魔力が物語っている。 もう、爆発寸前なのだ。


「分かっていると…? あのような状態の者まで戦わせて?」


 トゥスクルは手を握りしめ、声を震わせた。


「ああ。 申し訳ないとは思う。 だが、アイツも子供じゃない。 体調管理もアイツの仕事で、アイツの責任だ」


 トゥスクルはアルトの胸ぐらを掴み上げ、声を荒げる。


「ふざけるんじゃないよ! よくも、そんなことが言えるね!? 団員の体調や仕事の進捗を気にかけてやるってのが団長だろうが! その団長を監督するのが総長であるあんたの仕事だろう!? 自分の責任を放棄してるんじゃないよ!」


「分かっていると言っている! アイツが行っていたであろう業務を俺が、知らねぇとでも? 馬鹿言うんじゃねぇよ! アイツのとこの団長の不正の数々。 それの裏取りもやらずに捕まえられるか! 団員を守るためには先に彼奴からどうにかしないといけねぇ。 今回のアイツの事は、その間に起きたことで俺の責任だ」


「ッチ! あの娘は、しばらく医療班(うち)で預かる。 いいね?」


 納得はしないが言いたいことはわかるため、トゥスクルは舌打ちをする。

 そして、過労と睡眠不足、そして、今回の模擬戦で正義に意識を刈られたテレサに休養を足らせるべくトゥスクルはテレサを引き取るとアルトに告げる。


「ああ。 頼む」


 アルトもテレサの事を気にかけていたためトゥスクルの申し出に応じる。

―――――――――――――――――――――――――


「お疲れ〜」

 愛莉栖が帰ってきた正義に労いの声をかけた。


「おう」


「どうしたのアレ?」

 

 医療班かなにかであろう女性がアルトの胸ぐらを掴んでいたのだ。

 

「さぁな。 ただ、俺とやった奴。 あきらかにおかしかった」


「おかしかった?」


 愛莉栖が繰り返し聞く。


「ああ。 なんて言ったらいんだろうな…。 ああ、何徹もした職員みたいな感じか?」


「それ、ヤバイ奴じゃん」


「そうなんだよなぁ…。 まぁ、だから意識を刈ったんだがな」


「ああ、そういこと」


 近くで聞いていた春希が、正義の言葉で合点がいったみたいだ。


「普通に戦えば余裕で勝てるのに、わざわざ、仕込みまで使うんだもん。 何事かと思うよね。 アレは確実に当てれて、一撃で倒せるからだったってわけだ」


「ま、そういことだ。 俺も、一つ貰うぞ」


 そう言って、バスケットからサンドイッチを一つ摘んでいく。


「ああ、うめぇ…」


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