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認めねぇ

「そこで、何をしている!」


 突如、城内の廊下に怒号が響いた。


「あ、マリアさん」


 てっきり、親子水入らず話していると思っていたから、ここに来たマリアに皆が驚いた。


「これはこれはマリア殿下。 御機嫌麗しゅう御座います。 『何を』と問われましても、更衣室に案内をしていたところです」


「へぇ~。 更衣室に…。ふふっ。そう…更衣室に。ははは…」


 マリアは可笑しそうに笑い始める。


「何か可笑しいことでも?」


「ええ、そうね。だって、更衣室なら訓練場にあるはずでしょう?」


「ああ。 確かに在りますね。 ですが、()()()に使わせるわけにはいかないでしょう?」


「部外者…?」


((((((あ、やばい!))))))


 マリアはタラスの言葉を聞いて、声音は変える事はなかったが、手を良く見ると、握りしめていて、力を込めすぎているせいか震えている。


「皆様、こちらへ」


 いつの間にか近くに来ていたローズに耳打ちされ、マリアとタラスから離れる。


「ええ、そうでしょう? 我々はまだ彼等を勇者とは認めていないのですよ。 客人? まさか。 ただ、ぽっと現れた異世界人に何故敬意を表さないといけないのです? ただの穀潰しですよ?」


「穀潰し…?ステータスの職業欄に勇者とあるのは、どう説明する?」


「はっ! そんなの隠蔽したに決まってる! 異世界人っていうのは総じて能力が高い。 隠蔽に特化したものがいるのでしょう」


「そうか……」


 ドガン!と轟音が響いた。


 マリアが壁を殴り壊した音だ。 

 直立の状態から腕の力のみで、壁を、部屋を一室丸々破壊したのだ。


「なっ!?  グォッ!」


 タラスが壁を殴り破壊したマリアに驚き、立ち竦んでいたところを顔に拳を叩き込まれた。

 殴り飛ばされたタラスは後方に回り込んでいたマリアに襟首を掴まれ、地面に叩きつけられた。


「グォハっ!」


 マリアはタラスの胸ぐらを掴み上げた。


「お い 。 名前言え。 貴様の上官に報告しないといけないからな。 一人、クビにするってな」


「はぁ、はぁ、はぁ…」


 タラスは顔から血を流し、声を出すことができなくなっていた。


「ッチ! ローズ。 拘束しておいて」


 マリアは舌打ちをして、一呼吸置いて落ち着いてからローズに指示を出す。


「…承りました」


「皆さん。 この度は我が騎士がご迷惑をお掛け致しまして、誠に申し訳ありませんでした!」


 マリアが深々と頭を下げるが、雄一たちは今、目の前で起こった、惨劇に目を丸くする。


「気にしないで下さい、マリアさん。 俺達はそんなこと気にしていませんから!」


「そうだぞ、姫さん。 というより、やりすぎ。 こっちにはガキもいるんだ。 そこらへんも、気にしてくれると助かる」


 雄一が気にしないでとマリアに伝え、正義がそれに続く。


「はなおねえちゃん、みえない」


「いいんだよ〜。 一葉君は見なくていいの」


 一方、一葉は華蓮に後ろから抱かれるように目を塞がれていた。


「ねえねえ、マリアさん。 結局、訓練場はこっちじゃないってこと?」


「ええ、そうですね。 訓練場はここから真反対の場所にあるんですよ」


 愛莉栖がマリアに訪ね、それに指を指しながら答える。


「え!? 全然方向逆じゃん!」


「すみません!」


「あ、いや、別にマリアさんを責めてるわけじゃないですよ!?  と、とりあえず、行きませんか? アルトさんでしたっけ? 待ってるんじゃないですか?」


「そ、そうですね。 案内します。こちらへ。  ローズ。 ソイツも引きずってでも連れて来なさい」


「……はぁ。 少し、治療しますが?」


「…いいでしょう。 ただし! 歩けるくらいまでよ」


「『彼の者を癒やし給え』ヒール!」


 ローズがタラス(仮)を治療し、歩けるように拘束していた縄を縛り直す。


 もと来た道を戻って行き訓練場に向かう。


「なぁ、姫さん」


「はい?」

 

「俺達は喧嘩売られたのか?」


「ええ、そうですね…」


「アイツら倒していいのか?」


「……。 寧ろ、完膚無きまでに叩き潰して下さい」


「くはっ! はははは。オーケイ、オーケイ。 みんな、聞いたな?」


「はぁ。 別に目くじら立てることでもないでしょうに…」


 正義が言わんとする事に呆れる春希。


「まぁ、でも。 舐められっぱなしってのも嫌だよね~」


 沙月が、目を細める。


「うん。 確かに!」


 理恵が同意した。 華蓮と愛莉栖は苦笑しながら頷く。


「鍛錬した俺達の力を見してやろうぜ!」


『応!』


「あ、でも全力は出すなよ? 死人が出るからな」


「台無しよ、セイギ。 この奮起した気持ちをどうしてくれるの!?」


「ワリぃ、ワリぃ。 これだけは、言っとかんとなぁ」


「はぁ…」


 奮起した気持ちに、水を差され何故かため息が出る。


 そうこうしてる間に、吹き抜けのそこそこ間を取った開けた場所に出た。


 そこには、もう模擬戦相手の騎士達が睨みを効かせながら待ち構えていた。 

 まるで、「態々、遅れてくるなんていいご身分だな!」とでも言いたげに。


「待たせたわね。 アルト」


「い「いいご身分だな!勇者様ってのは! 態々、遅れてくるなんてよ。来ないもんだから、尻尾巻いて逃げたのかと思っちまったぜ!」お゛い゛。 俺の話を遮るなんて、いい度胸だな! ヴィル・ジョンソン!」


 訂正。実際に思っていたみたい。


 そして、話を遮られたアルトは、遮ったヴィルの胸ぐらを締め上げる。


「申し訳ありません! しかし「黙れ!」」


「いつから、騎士団は野蛮な奴らの塊になった! 騎士たる者、紳士であれと教育してきた筈だが?」


「し「黙れ、と言った!」」


「たとえ、貴様らが認めなくても、勇者様達は、この地にやってきた。 それが、現実だ。 なら、納得いかなくても礼儀を尽くす。 それは、当たり前のことだろうが!」


 何を見せられてるんだろう…。 騎士の教育なら別の時間にやって欲しい。


「ねぇ、まだ~?」


「しっ! 今、大事なところだから静かにしようね」


 一葉が待つのにも飽きてきて、声を出すが、それを華蓮に咎められていた。


「んん! アルト。 始めませんか? こちらも、そちらの後ろに控えている騎士たちも待ち切れないみたいですよ」


「申し訳ありません、殿下。 勇者様方も我が騎士がご無礼を致しました」


「ははは…。 まぁ、遅刻した俺達が悪いので、なんとも。 しかし、これにも訳があるのですよ」


 雄一が自分たちに非があるとし、謝罪を受け取る。


 だが


「ほう。 それは、ローズが縛り付けている者のことですか?」


「はい。 どうやら、我々は碌に訓練場にも案内されないくらいに皆様に受け入れられてないみたいだ」


 嫌味ったらしく、宣う。


「ふむ……。 そちらに関しても、申し訳ない。 どうやら、手違いがあったようだ」


「いえいえ。 そういえば、サシでやるとのことですが、順番はどうします?」


「うむ。 そうですなぁ。 勇者様を最初にお願いしたい。次に、マサヨシ殿。サツキ嬢。リエ嬢。ハルキ嬢。アリス嬢。カレン嬢。最後にカズハ嬢で、どうですかな?」


「はい。 じゃあ、その順番で。あぁ、それと一葉君は男の子ですよ?」


「……。報告では確かに、男児とあったが…、アレでか…?」


「はい。 アレで、ですね…」

 

 雄一とアルトはなんとも言えない表情をしながら一葉に目をむける。


「まぁ、いいだろう。 よろしく頼む」


 アルトがスッと手を差し伸ばす。


「はい。 こちらこそ、よろしくお願いします」


 雄一が手を取り握手を交わす。


「ヴィル! 来い!」


 アルトは雄一の対戦相手を呼び出す。


 先程、突っ掛かって来た若い男性の騎士が、相手みたいだ。


「は!」


 駆け足で近くに来たヴィルは雄一を如何にも下等なものを見るように、上から見下ろすように睨めつける。

 対して雄一を飄々と受け流し、ニコニコとしていた。


 戦いの邪魔にならないように、他の騎士達や正義達はその場から離れる。


「うわぁ〜。 態度悪いな~。 いい、一葉君。 あんな、大人になっちゃ駄目だよ」


「う、うん」


 愛莉栖から注意を受け、頷く。


「ッるっせぇぞ! 小娘共ォ!!」


 ヴィルの方まで声が、聞こえていたのか怒鳴られた。


「はぁ。 両者、始めてもいいか?」


 アルトは溜め息を付き、開始してもいいか問う。


「はい!」 「応よ!」

 

 雄一は訓練用に用意されていた刀―何故か大太刀―を鞘から引き抜き左足を前にして半身になり、刀を顔の右横で握り、水平に構える。


 対して、ヴィルは左手に持った、盾を前面に突き出し、剣を後方下段に構える。


「始め!!!」

 

 アルトの声が響き、騎士達との模擬戦が始まった。



 

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