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私の負けよ

 この世界に来てから2週間が経ち、ここでの生活も慣れてきた頃。


 一葉の訓練は相変わらずシアとだけで、勇者達はもう、合同でやっているらしい。


 最初こそ、魔力の暴走に危険があるからと言って分けられていたけど、一葉の「かみさまって、そんなにポンポン、チカラをくれるの?」という一言でハッとして、魔力計測の魔道具等を駆使して調べると、()()()()()()()()()()ということで、今まで通りの力の使い方でいいという事になったからだ。


 ちなみに、魔力壺というのはその人の魔力を蓄積させるための概念的な器官の事で、魔力を扱える者は全員持っているらしい。基本的に胸と鳩尾の間にある。


 そして、今日もシアと訓練をしていた一葉はボロ雑巾の様になりながらも、シアに食らいついていた。


 夕暮れの戦場跡地の様な丘で、剣戟の音のみが響く。


「っ!」


 刀とロングソードの二刀流でさながら、舞の様に剣を振るい、シアの振ったを受け流し、その力を利用して、攻撃に転じる。


「ハッ!」


 シアの振った剣を身体を捻りすり抜け、懐に入った一葉は左手に持った刀で左上から斜め下に向かって振り下ろした。


 シアは、それをバックステップで躱した。


 一葉はシアについていくが、


「今日はここまでね」


 と、シアの言葉と共に世界が回った。

 カランカランと地面に金属製の物が落ちる音が聞こえ、背中に衝撃と痛みが襲い、漸く投げられたのだと気づく。


(あいかわらず、シアおねえさんがほんきでうごくと、うごきがみえない)


 手を差し伸べられ、その手を取って立ち上がった一葉は痛みに顔を顰める


「〜っ」 


「大丈…夫ではなさそうね。 結界を解くわ」


 景色が入れ代わり、もうすっかり見慣れた場所に戻って来た。


 剣の稽古をするには少し手狭な裏庭だ。


 背中の痛みはこの場所に戻ってきたことにより無くなっていた。 訓練に使用していたロングソードを拾い、鞘に収める。


「ありがとうございました」


 シアに礼を取って、訓練は終了した。


 そして、何故か毎回、一緒に風呂に入っていて、身体を洗われていた。


 そんな、日常を過ごし、数日後。


「ハッ!」

 

 シアが振った剣を体捌きだけで躱し、躱せないと判断したものは手に持った剣と刀で受け流し、時には弾く。


 稽古をし始めた頃に比べると剣を弾く事が少なくなったのだ。 受け流す際にも、剣を添わせて流すのではなく、剣の触れる瞬間に力を抜き、別方向に押し出すのだ。 これは、オモイカネが編み出した剣技で、最小限の力で攻撃を逸らせる事ができ、更には相手を崩しやすい。 何故なら、剣を弾く時と同じ動作で剣を振るい、だけど、実際は、剣は弾かず、剣と剣が触れる瞬間に力を抜くので、相手にしてみれば、弾かれまいと力んでいるところに、ふっと力を抜かれるのだ。踏み込んで、剣を振って躱されたときみたいになり、そこをやんわりと力を加えられ逸らす。 言うは易く行うは難し。 そんな離れ業を一葉は行ったのだ。


 シアにしてみれば、完全な想定外の躱し方。 驚愕のあまり、振った剣を戻すのが遅れ一葉の次の攻撃を防ぐには間に合わない。 そこで、シアは剣で防ぐのではなく、剣を握り直し、柄を握る右手左手の僅かな隙間で受け止めた。

 そのまま、押し除け横薙ぎを繰り出す。


 一葉は押し出される瞬間に剣を放し、身体を沈め、シアの剣を掻い潜り、刀を突きだす。


「はぁ、はぁ、はぁ」


「…………ふぅ。 おめでとう。 私の負けよ」


「〜っ。 やった~!」


 一葉は飛び跳ね、喜びを表す。


  それは、さながら親におねだりをして許可をもらった幼子のよう。 傍から見たら、幼女が喜んでいるようにしか見えなかった。


「(フハッ! 本当、幼女が跳ね回ってるようにしか見えねぇな)」

 

「……。オモイカネ、うるさい。 ぼく、おとこだもん!」


 何度も、刀を地面に叩きつける。


「(あ! ちょっ、まっ。 待てって! あぶっ)」


 オモイカネが何か言っているがお構いなく叩きつけ続ける。


「あ。 シアおねえちゃん」


「ん?」


「つぎのくんれんから、おねえちゃんたちといっしょにできるんだよね?」


「ええ。 いいわよ。 あ、そうだ。 明日、どれくらい強くなったか、お披露目しよっか!」


 シアが、いい事と思いついたと提案する。

 

「うん!」


「明日の皆の顔が楽しみね〜。 じゃあ、戻ろっか」


 シアが指をパチンと鳴らすと、裏庭に戻った。


 毎度の如く、シアと風呂に入り、晩御飯を食べているときマリアから知らせがあった。


「皆さん。 明日の訓練は中止致します!」


「え? 何? 休み?」


「ハルキさん、残念ながらお休みじゃ無いんです。 実は、今日、城から書状が届きました」


 マリアがそう言いながら、便箋を掲げた。


「まぁ、内容としましては、いい加減、勇者達の顔を城に見せに来い。という物です。 ユウイチ様は召喚された日に顔合わせしていますが、他の皆さんはまだですからね。 それに、皆さんもそろそろ、実戦に出ても大丈夫な位、強くなっているとの事。 なので、武器を貰いに行きましょう!」


 どうやら、明日はお城に行くらしい。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 読みやすい!! 初めの頃のものと比べてシーンのまとまりや、読みやすさが段違いで、作者さんの成長が見ていて楽しいです。 [一言] 完結まで頑張ってください!
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