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それぞれの訓練

 マリアとローズが魔法を発動すると、視界がブレ、気が付くと違う場所に立っていた。


「ここは…。 たしか…」


「そうだね。 ここに来たときに最初に飛ばされた場所だよ。まぁ、厳密には違うけど」


 後ろから声が聞こえ、振り向く。


 シリウスさんがいた。


 周りには他に誰もいない。 シリウスさんと俺しかいない。


「ここは、あのときの場所をいくつか複製して、特殊な結界を組み込んだ別次元の闘技場。 君達の訓練用に創り変えてもらったんだよ」


「特殊な結界? しかも別次元って……異世界、なんでもありなのか?」


「なんでもあり、なんてことはないさ。 さて、こうして、喋ってても意味ないからね、訓練始めようか、() ()() ()()


 シリウスが模擬剣を抜き、突撃してくる。


「ちょっ。 いきなり!?」


 シリウスの剣を弾き、態勢を立て直す。


 ◇ ◇ ◇


「ウォラァ!」


 正義はツヴァイヘンダーを振り下ろす。


 バッカスはそれをいとも簡単に受け止め、押し返す。

 

 押し返された正義はたたらを踏みながら後退した。 態勢を立て戻した後、剣を引きずりながら駆け、バッカスの手前で体を横に捻り、横薙ぎを振るった。


「ヌン!」


 横薙ぎを上からツヴァイヘンダーで叩き落とした。


 武器を取り落とした正義に剣の柄を突き入れる。


「ウッ!」


「お前の持つ剣は取り回しにくい物だ! なんのためにリカッソがついてると思ってる!」


 叱責が飛ぶ。


 ツヴァイヘンダーには、リカッソと呼ばれる刃のついてない部分がある。そこを握る事によって、間合いを短く取ったり、刺突をしやすく、振り回す時も力を乗せやすくなる。

 また、持ち運ぶ時に革紐を括り付ける為の場所でもある。


「クソッ!」


 正義は直ぐに落としたツヴァイヘンダーを掴み、もう一度、バッカスに挑みかかる。


 ◇ ◇ ◇


「よ~し。始めるかぃ、サツキの嬢ちゃん」


「はい!」


「おうおう。 いい返事だぁ。 とは言っても、今日は武器は使わねぇんだよなぁ」


「そうなんですか?」


「おうよ。 だから、とりあえず、武器はおいて、座禅でも組んでもらおうか」


「? わかりました!」


 沙月はロングソードを置いて、だだっ広いコロシアムの中で座禅を組んだ。


「いいかぁ。 座禅ってのは気を落ち着かせ、己を見つめ直すためのものだ。 まずは、自分の内にあるもんを認識させな。 武器を持っての訓練はそれからだ」


「はい」


 イオリは座禅を組んで、集中している沙月を険しい目で見つめる。 

 まるで、直ぐ殺せるように動くためのように。

 

 ◇ ◇ ◇


「ここの説明は終わった。 訓練を始める」


 ジークは言葉少なめに、訓練を始めた。


「はい!」


 春希は返事をして、訓練内容を聞く。


「まず、魔力を引き出す。 やってみろ」


「………」


「………」


「はい? え!? それだけ!?」


「うむ」


「いやいやいや! こう…なんかないんですか? 引き出し方とかコツとか」


「引き出し方は人それぞれだから、教えようがない。 コツもソイツの感覚でしかないから、教えるのは難しい」


「え、えぇ…」


「とにかく、魔力を感じてみろ」


「はあ、わかりました」


 こうして、なんのアドバイスもなく、春希の訓練が始まった。


 ◇ ◇ ◇


「訓練始めるよー」


「はい。でも、ハイネンさん。 何をするの?」


「まずは、魔力を引き出すところからだね! 魔力は感じられる?」


「うーん。 どうしても、いままでの力を引き出しちゃいそう」


「そうか〜。 うん。 とりあえず、弓を射ってみようか」


「はい? なんでです?」


「まぁまぁまぁ。 とりあえず、やってみようよ」


「はあ。 まぁ、弓の鍛錬とでも思えばいいかのかな…?」


 魔力を引き出すという話から何故か弓を射ることになった理恵だった。


 ◇ ◇ ◇


「相変わらず、あの二人は、バカ魔力ね」


「あ、ヘレネーさん。 あの! ここって…」


「華ちゃん。 あそこじゃない? 私達がここに来たときに飛ばされた場所」


「正解よ。 厳密には違うけどね」


「えーと…」


 華蓮はなんと答えていいか、言葉に詰まった。


「ここは、あなた達為に訓練場として新しく創り変えられた場所よ。 他の子達も同様の場所にいるはずよ」


「ヘレネーさん、いいですか〜?」


「ええ、どうぞ? アリスさん」


 愛莉栖がヘレネーに疑問をぶつけた。


「どうして、私達をバラけさせたんです?」


「ああ。 それは、君達の力が強すぎて、周りに、お互いに被害が出ないようにするため、ね」


「えぇ…。 そんなに危険なの私達…」


 華蓮と愛莉栖はヘレネーの言葉に驚き声を失った。


「それじゃあまずは、これを持って」


 ヘレネーが手のひらサイズの石板を渡してきた。


「石板?」


 愛莉栖が不思議そうに石板を眺めていると


「それは、魔力量と魔力強度を計測する魔道具よ」


「「魔力強度?」」


 華蓮と愛莉栖は首を傾げる。


「そうね…。同じ魔法でも魔力強度が違うと消費する魔力の量が違うの。 だから、同じ魔力消費で同じ魔法を放つと、威力と規模も変わってくるのよね」


 火球で例えるならば魔力強度が1の人が魔力消費が10だとすると、魔力強度が2の人が火球を使うと5になる。

 つまり、同じ魔力消費で同じ魔法を放つと2倍の威力になる。


「というわけね。 まっ、簡単に説明したけど、実際はこんなに簡単な計算にはならないけどね。あくまで例えよ」


「「へ〜!」」


 そうこうしているうちに、石板に数字が浮かび上がってきた。


「あ」


 華蓮が声を発し


「私も出てきた」


 愛莉栖もそれに続く


「二人共キチンと計測できたみたいね。 見せて頂戴」


「「はい」」


 二人は、石板をヘレネーに見せた。


「えーと、華蓮が…魔力量128,000、魔力強度20,000。アリスが、魔力量140,000で、魔力強度13,000…と。はぁ…」


 ヘレネーがため息をつき、思い詰めた顔で熟考している。


「へ、ヘレネーさん?」


「もしかして、私達の魔力少ない感じ? どうしよう、華ちゃん!」


「ど、どうしようって言われても…前みたいにいかに効率よく敵を倒すか研究するしか…」


「ああ!大丈夫よ、二人共。 ちょっと、驚いてしまっただけだから」


「どう、でした?」


 華蓮が聞いた。


「二人共、魔力量も多いし、魔力強度も十分にあるわ。 というより、多すぎよ! 場所を分けてもらって正解ね、これは。 いい? この国の魔法騎士の平均魔力量は5,000位で魔力強度は1000あれば、騎士団長、までいかなくても分団長クラスの強さよ。 因みに、魔法騎士、騎士団長は魔力量23,000で、魔力強度は1800よ。 つまり、この時点で、あなた達は魔法騎士団、騎士団長よりも強いって事よ。 まぁ、数字上はだけど」


「「ははは…。 え?」」


「はぁ…。荷が重いわ…。 とりあえず、あなた達、二人は強すぎて、周りに被害を及ぼすから、魔力操作を覚えてもらうわ。そうしないと、あなた達、危険人物として、この国に居られなくなってしまうわ」


「え!? そのレベルでヤバいの、私達!?」


「はは…」


 愛莉栖は驚愕し、華蓮は驚き過ぎて、笑いしか出てこない。


「とりあえず、魔力は感じることはできる? それができないと進めないのだけれど…」


「一応、あるのは、わかるんだけど…」


 華蓮が困った様に言って


「ね。 これを使おうとすると…」


 愛莉栖も困りげ、同調する。


 すると、華蓮と愛莉栖が光に包まれ、戦闘装束に身を包んでいた。


「変身しちゃうんだよね」


「……今、魔力を開放している状態?」


「「はい」」


「じゃあ、閉じてみて」


 ヘレネーの言われるまま、魔力を閉じると変身が解除されて、元の服装に戻った。


 魔力の扱い方にはいくつか種類がある。

 まず、華蓮や愛莉栖がやった様に、魔力を開放する。 つまり、体から常に膨大の魔力を垂れ流すということ。 魔力消費が激しい割に、強化される度合いが少ない。

 2つ目、魔力を体の部分的、あるいは全体に纒わらせる。 局地的に強化出来るので、その分、魔力を集めやすく、効果を得られる。

 3つ目、武器に魔力を纒わらせる。 剣で説明すると、切れ味が良くなり、摩耗しなくなる。 しかし、魔力を流しっぱなしになるため魔力切れを起こしやすい。


「う~ん。 開放するのではなく、魔力を右手に移動させる事はできる?」


 ヘレネーに言われた通りに魔力を開放じゃなくて、右手に移動させてみた。


「ん。 難しい…」


 愛莉栖が呻きながら、集中している。


 一方で華蓮は


「こう? うん? 違う…………出来た!」


 右手に魔力が集まり、波打つ光が明滅していた。

 多少、覚束ないが、右手に魔力を移動させることが出来た。


「え? もう!? ちょっ、華ちゃん!? どうやったの?」


「私、前に師匠からチラッと聞いてたんだよ。 それでね? 感じてる魔力って、塊じゃん?」


「うん」


「その、塊をね。 餅みたいに柔らかいものに置き換えてね、それを手の方に持っていくんじゃなくて、伸ばすイメージをしてみて」


「んん? …………出来たぁ!」


 愛莉栖も右手に魔力を移動させることができ、右手が波打つ明滅する光に包まれていた。


 二人は、魔力を右手に移動できたとヘレネーに報告をする。


 実際に、ヘレネーの前で、やってみせた。


「確かに、できてるわね。 でも、駄目ね」


「「え?」」


「ごめんなさい。 これは、私の説明不足だったわ」


 見ていて。とヘレネーに言われ、右手に魔力が集まり次第に右手が光に包まれた。 だが、華蓮と愛莉栖とは違い、魔力の光が波打つことも、明滅することもなく安定した光を放っていた。


「これが魔力操作よ。 光はどう? 安定しているでしょう? これは魔力が均一に、均等に行き渡っている証拠よ。 まずは、この状態になれるよにしましょうか。 でも、まだまだ序の口だから、この後が大変よ? 流れを言うと、この状態を維持できる時間を増やすこと。 次に、違う場所でも同様の事ができる様にすること。 同時に2つ、3つと違う場所に移動させて、維持させること。っていうのを全身くまなくできるようにすることが、あなた達の最初の課題ね」


「「うわぁ…」」


「ふふっ。そんな絶望した顔しないの。 大丈夫よ。誰が教えると思っているの? 魔力操作で私の右に出るものはこの国にはいないわ」


「え? じゃあ、ヘレネーさんが魔法騎士団、団長なんですか!?」


 華蓮と愛莉栖は、ヘレネーが騎士団長をやっていたと思っていなかった。


「違うわよ! あんな、ボンクラと一緒に、しないでちょうだい!」


「「ごめんなさいぃ」」


 ものすごい勢いで、物凄い剣幕で否定され、即座に謝罪をした二人だった。


 ヘレネーが言うには、魔法騎士団 騎士団長は貴族出身で、自分の家の身分より低い者をいびり倒すクズらしい。

 だが、魔法の腕は騎士団長に上り詰めただけはあるらしいが、ヘレネーに言わすと、魔力操作が甘いらしい。 それに、魔法選びも下手だとか。 自分の力を誇示させるためのパフォーマンスか知らないけど、そこまで、高威力の魔法は必要ないのに、わざわざ、高威力、広範囲の魔法を放つらしい。 しかも、部下が弱らせた敵に対してだ。

 聞いているだけでも、嫌悪感を感じた。


「いい? あなた達はあんな奴みたいに、なってほしくないの。 だから、徹底的にやるわよ」


「「はい!」」


「あ」


「どうしました?アリスさん」


「じゃあ、ヘレネーさんは何者?」


「私? 私は元々ハンターでマリア様に騎士に抜擢されて騎士になった、忌み子よ。 魔人と呼ばれる種族と人間のハーフよ。 だから、魔力も多いし、強度も強い。 寿命も人より長いしね」


「うっ。 また、知らない情報が…」


「ああ…。そういえば、そこらへんの説明もまだ、していなかったか…。 この話もおいおいされるとは思うけど、簡単に説明すると、魔人は魔物が知性を得た者の達の事よ。 偶に、魔力が意思を持って発現することもあるけど、それは稀ね」

 

「じゃあ、魔王も魔人ですか?」


「ええ、そうよ。華蓮。 あれは、魔力が意思を持って発現するらしいから、滅法強いらしいわ」


「うへぇ」


「大丈夫。 魔王と戦う時は総力を上げての戦闘になるから、あなた達だけに負担をかけることはしないわ。 さぁ、おしゃべりもここまで。キチンと魔力を操作しないと、魔法が暴発するかもしれないし、魔力が暴走するかもしれないわ。 華蓮。もし、貴方が魔力を暴走させたら、私達がいるこの、貴族街が消し飛ぶわ。 愛莉栖も、この屋敷は余裕で吹き飛ぶわ。 だから、気を引き締めてね」


「ちょっと、ヘレネーさん!? プレッシャーを掛けないでくださいよ!」


「そうですよ!」


 さらっと、圧を掛けてくるヘレネーに抗議する華蓮と愛莉栖。


「大丈夫、大丈夫。 その、被害が出ないようにするための訓練で、そのための結界よ。 多少の魔力暴走なら私が抑え込めるから安心して。 さっ、始めましょう」


 

 こうして、それぞれの訓練が始まった。 始めてしまった。 

 

遂に訓練が始まり、雄一達一行は、戦いに身を投じる準備を始める。


一方で、一葉にも訓練が課されるが、戦いに赴く事はないが…


どうやら、魔王は魔力が意思を持って発生するらしい。 なんの意思を持って、誰の意思を持って世界を蹂躙するのか!?

それは、また別の話。



ここまで、読んで頂いた皆様。 誠にありがとうございます。


章分けはしていませんが、私の中では、ここまでが、第一章で御座います。


面白い!と感じて頂けていればいいのですが……


もし、面白いと思ってくれている方、続きが気になると思ってくださっている方がおりましたら、評価 ☆☆☆☆★ と いいね! を押して頂けると幸いです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 初めて投稿された時から読んでいるけど、どんどん良くなって行ってるから、作者と主人公の成長が楽しめて一石二鳥! [気になる点] 戦闘している場面の時、文面の密度があった方が緊張感や臨場感があ…
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