いや、スゲェわ
陽の光が窓から差し込み朝を告げる。
「うぅー」
その朝陽に照らされ、カズハは光から顔を背けようとモゾモゾと寝返りを打つ。体そこで、ふと、体が柔らかく、温かい物に包まれている事に気がつく。
「んぇ?」
「おはよう。 よく、眠れたかしら?」
目を開けると誰かに抱きついていて、顔を上げると、すぐ近くに、シアの顔があった。
「ぉぁょぉ?」
「はい。 おはよう。 ちゃんと、挨拶できて、偉いわね〜」
シアはカズハの頭を優しく撫でる。
「食堂に行こっか」
「ぁい。 ふぁ~」
カズハを抱きかかえ、部屋を出ると
「あ、おはようございます。 シアさん! 一葉君もおはよう」
「ええ。おはよう。カレン」
「おぁようごじゃいます」
「ふふっ。まだ、眠そうだね〜」
ちょうど、一葉を起こしに来た華蓮とかち合った。
一葉は目を擦りながら、まだ、寝ぼけているのかふわふわした言葉で挨拶をしていた。
「起こしに来る必要はなかったみたいですね。 シアさんもいるとは思いませんでした」
食堂に向かいながら華蓮はシアに話しかける。
「ええ。まぁ。 夜中にこの子が喉が乾いたみたいでね、出歩いていたから、同伴していたのよ。 それで、寝ちゃってね。 ベッドに寝かして戻ろうとしたんだけど、服を掴まれていてね~。無理矢理剥がすのも悪いかなって」
「あー。そうだったんですね。 そういえば、夜中にバン!って大きな音がしたんですけど、それってもしかして、シアさんが?」
華蓮は夜中にした大きな音についてシアに聞いた。
(ああ…。聞かれていたのね)
「ええ。 両手が塞がって開けれなかったから、蹴破ったのよ」
「蹴破って…! ……ええ!?」
「あはは…。後で、直しておくわ〜」
「は、はあ」
華蓮とシアは話しながら歩いているとすぐに、食堂に着いた。
「カレンさん、おはようございます。 シア様とカズハ君もおはようございます」
「はい! おはようございます! マリアさん!」
「ええ、おはよう」
「おはようごじゃいます」
「ふふっ。朝から元気いっぱいですね」
「おう、嬢ちゃん等も起きてきたかぁ。 おはようさん」
「イオリさん! おはようございます! 眠そうですね? 夜番だたんですか?」
「おう。 そうだぞぅ」
「お疲れ様です」
「はは…。ありがとさん。 確か…今日からだったか?」
「はい。 だから、気合入れていかないと!」
「まぁ、気楽にやりな。 お前さん等に責任を負わす。なーんて事にはさせねぇからよ」
イオリはポンポンと華蓮の頭に手を置く。
「華蓮! 来たなら、手伝えぇ!」
朝食の準備を手伝っている正義から声がかかった。
「あ、ごめ~ん! すぐ行く! すみません、イオリさん…」
「おう、行って来い」
「いい子達だな。 この世界に無理矢理連れてこられたってのに…」
「まったくだ」
イオリとジークは、この世界の人間である自分たちの分まで朝食の準備を手伝っている子らに感心する。
「そう思うならあんた達も手伝いなさいよ」
「おや。 ヘレネーじゃない。おはようさん」
「ええ、おはよう」
「うーっす!」
「バッカスもおはようさん」
「夜、どうだった?」
ヘレネーが小声でイオリとジークに聞く。
「襲撃者は12人。 内おそらく、8人がどこぞの家の子飼い。 残り、4人は陽動で雇われた素人だ」
「おそらく、8人ってのはどういうこと?」
「俺が殺ったのは6人だ。 2人はちょうど、喉が乾いて起きてきた坊主が殺った。 しかも、処理も完璧だ。 血痕、一つも有りやしなかった」
「……そう。 さすがといえばいいのか、末恐ろしいといえばいいのか悩ましいわね。 コレはもう、報告を?」
「ああ。 あの子等が起きてくる前に、マリアに伝えてある」
「お待たせしました〜!」
3人で、小声で情報共有をしていると小柄な少女―愛莉栖―が朝食を左手に二人分、右手に一人分の盆を持ってやってきた。
「お、おう。 すげーな嬢ちゃん。 どう持ってんだ?」
「普通に持ってますよ? 両手に一人分ずつと左腕に一人分乗っけてるだけですね」
愛莉栖は朝食を並べながらイオリの質問に答えていく。
「だけって…。 バランス感覚がいいんだな」
「ヘヘっ。ありがとうございます! では、ごゆっくり」
まだ、配膳するものがあるためか、小走りで戻っていく愛莉栖を眺めるイオリ達だった。
すると、今度は、雄一が皿を持って、やってくる。
「はい、お待ちどうさま」
「おう、ありがとうな」
「いえいえ。 あ、俺たちの事は気にしないで、先に食べていてください。 冷めちゃ、勿体ないですから」
「ふむ。 では、お言葉に甘えようか」
ジークが答え、運ばれてきた料理に手をのばす。
「そうですね。 すみません、先に頂きますね」
「はい!」
「ほら、次の皿だ」
雄一と入れ替わるように、正義も皿を持ってくる。
「んぐ。おう、悪いな」
「気にすんなって。 ここに、住まわせて貰うんだ、できることは手伝うさ」
「普通はそんなことは思わんだろ? こっちに無理矢理連れてこられたってのによ」
「そうか? 向こうでは、これが当たり前のことだったからなぁ」
正義は頭の後を掻きながら答える。
「いや、本当にすごいわ」
「ああ、ああ。いいからさっさと食えよ。 あんた達の分はまだ、あるみたいだからよ」
正義は照れくさそうにして、食事を促す。
「はいはいはい。退いて、退いて」
新たな料理を春希が持ってくる。
「セイギ。もう、あと何皿か持ってきたら、終わるから、手洗って、待ってなさい」
「あいよ。じゃ、行くわ」
「おう、ありがとな。 嬢ちゃんもありがとうな」
「いえいえ。私も、行きますね」
それから、華蓮、理恵、沙月の順でそれぞれ3皿ずつ料理を運んできて、最後にマリアが厨房から大量の、山になった料理が盛ってある大皿を運んでくる。
「みんな、おはよう」
「おはようございます。マリア様」
「お嬢、おはようございます」
「おはよう」
「マリア様。おはようございます」
ヘレネー達は順に挨拶をしていく。
「今日から、雄一様達の指導を始めますので、そのつもりで。 あと、加減を間違えないように」
「「「「了解!」」」」
「よろしい! じゃ、朝食を続けましょう」
マリアは席に着くと、料理に手をのばした。
それを遠目で正義達は見ていた。
「相変わらず、スゲェ食うよな。あいつら」
「はは…。凄いもんね。あの量…」
沙月が顔色を悪くしながら絶句する。
「一葉君もあれぐらい食べて、とは言わないけど、もう少し、食べれるようになろうね」
「はい」
一葉は相も変わらず、華蓮に介助されて朝食を摂っていた。
「そういえば、今日からだね」
愛莉栖おもむろに話題を振る。
「そうね。 まず、何をするんだろうね」
春希がこれから始まる、訓練内容に思い馳せる。
「う~ん。 魔力操作とか、そのへんじゃない?」
理恵がこれじゃない?と予想立てる。
「ああ。魔力関係はありそうだね。 あとは、立ち合い?」
沙月が理恵が予想したものとは他の候補を上げる。
「なんだか、皆さん楽しそうですね」
シアが和気あいあいと話す女性陣を見て、微笑ましいそうにする。
「うん。たのしそう? お、おねえさん」
「ん? もう、無理そう?」
「はい」
「うん、分かった。 じゃあ、あとは私が食べるね?」
「ごめんなさい」
「うんうん。 謝らなくていいんだよ」
申し訳無さそうに謝ると、大丈夫だから気にしないでと頭を撫でられる。
『ごちそうさまでした!』
朝食を終えると、一時間位の小休止を挟んで、1階のロビーに集められた。
「皆さん、揃いましたね? これから、皆さんには私達が課した訓練を受けてもらいます。 カズハ君も目覚めた事ですしね。 それで、お伝えしないといけないことがあります」
マリアは言葉をいったん切って、順に雄一達の顔を見ていく。
「まず、この訓練では、怪我をすることがあります。 もちろん治療はしますが、痛みを伴わないと理解できない事もあるでしょう。 その事をご理解していただきたいです。 命の危険は無いように致しますが、皆さんの行動次第ではそのリスクもあることを忘れないでください」
『はい!』
皆、気を引き締め、返事をした。
「マリアさん。いいですか?」
雄一が手を上げる。
「はい、雄一様」
「訓練内容はそんなに危険な物なんですか?」
「模擬戦を主にするつもりなので、危険は伴います。 まぁ、でも、先に魔力の扱い方を会得してからになりますが」
「ああ、俺からもいいか?」
「ええ、いいですよ。マサヨシ様」
「こいつにも受けさせるのか?その訓練」
「皆さんより幾分か軽めにしますが、受けてもらう予定です。 この世界では、危険がいっぱいですので、最低限、自分の身を守れるようにするつもりです」
「ッチ。 仕方がねぇか……。 分かった」
「他は、ご質問ありませんか?」
もう一度、雄一達を見回し、無さそうだった。
「では、こちらへ」
そうして、一つの部屋に案内された。




