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害虫駆除

 夜も深まった頃


 ザルヴァートル邸のガーデンで息を潜めた者たちが恐怖に顔を染めていた。


 この屋敷に侵入したのは、8人。

 

 賊は、敷地内に入ると、散らばり任務を遂行すべく行動する。


 遮蔽物はあるが、そこまで高いものは無く、見通しは良かった。 そのため、仲間たちが良く見えた。見えてしまった。


 最初の一人は、胴体がズリ落ちた。二人目は額に穴があく。


 3人、4人と仲間たちが死んでいく。見通しはいいはずなのに、仲間たちの姿しか見えず、この惨状を引き起こした者は見当たらない。 気配も、音もなく仲間の死に様を見せられる。


「クソっ! こんな…、こんなの聞いちゃいねぇぞ!」


 垣根に身を隠した黒装束の人物が、そうこぼし、周りの様子を伺う。


 パシュッという空気の抜ける音が鳴り、右腕の肩口から鮮血が舞った。


「ぐあっ!」


「見ぃつけたぁ」



 生垣を突き破って腕が左後ろから伸びて首を羽交い絞めにする。


「どこの、誰かからか知らんけど、人様ん家に勝手に足を踏み入れたんだ。 しかも、こんな夜更けに、そんな格好で。 呪うなら、お前の主人と、お前自身を呪うんだな」


 首を絞めていた腕が一瞬緩み、首の右側が熱を帯び、身体から力が、抜けていく。


 男が最後に見たのは、先程は何も持っていなかったナイフを持った、異国風の衣装を着た男だった。


「ふぅ~、これで最後か…な!」


 異国風の衣装を着た男―――イオリは後ろに現れた人の気配に反応し、反射的に振り向きながら、左手に持ったナイフを振るい、腰に挿していた、()()()()()()()()()()()()を右手で引き抜き、発砲する。


 人影は振られた腕を払い避け、懐に飛び込み拳銃を下からかち上げた。


 月灯りがガーデンを照らしていき人影が露わになる。


「こんな、夜更けに部屋の外に出歩くのは良くないなぁ~。 いろいろと危ないからねぇ」


「ご、ごめんなさい! そとから、ひとのたたかっているけはいをかんじたから…つい」


「つい、じゃあないんだけどなぁ」


 人影は勇者召喚に巻き込まれた幼子――カズハだった。


 イオリは、ため息を付いて、頭の後ろを掻く。


「しょうがないなぁ。 ほら、お兄さんが部屋まで送るから、もう、お休み」


「はい。 あ、でも…」


「どうした?」


「あの、のどがかわいて…」


「ああ~。それで、目が覚めたら外から気配を感じた、と」


「うん」


「じゃあ、一旦、食堂に寄って水飲んでから戻ろうな」


 イオリはカズハを抱き上げ、食堂に向かう。


 食堂にはエントランスホールからも入れるようになっている。そこから入ると、食堂には明かりが付いていた。


「よう、ジーク。 終わったぞ」


「ああ。お帰り、イオリ……。珍客か?」


 ジークは食堂に入ってき来たイオリの声に反応して、そちらを見ると、幼子を抱いたイオリに驚いた。


「ああ。 急に後ろを取られてなぁ。驚いたよ。 それより、何か飲ませてやってくれ」


「喉が乾いたのか?」


 カズハはコクンと頷いた。


「そうか。ちょっと、待っていてくれ」

 

 ジークは厨房の中に入っていき、ゴソゴソと何かを漁っていく。


「む。 茶葉は…これ、か?」


「違うわね。 それは、畑の肥料よ」


 いきなり、背後から女性の声が聞こえ、袖口に隠していたナイフを滑らせ、それを握る。


「!?」


 振り向きざまに逆手に持ったナイフを突き立てるように振るうが、後ろにいた人物に気が付くと寸でのところで静止した。


「へぇ~。反射で動いたものを、また、反射的に止めるなんてね。 流石じゃない」


 その、人物とは、シアだった。


「シア殿。 気配もなく背後に立つのはお辞めください」


「どうした!? ジーク……って、シアの姉御?」


「姉御は辞めてちょうだい。 それと、こんなところにいたのね、カズハ君。悪い子ね、こんな夜更けに出歩くなんて」


「ごめんなさい。 のどがかわいちゃって…」


「ふふっ。冗談よ。 茶葉は切らしてるから…お水かホットミルクにしときましょうか」


「おねがいします」


 イオリとカズハは食堂の方へ戻って行った。


 「よしっ。久しぶりだけど、作りますか」


 シアは腕を捲り、鍋を探す。


「俺も見てていいか?」


「構わないけど、お仕事はいいの?」


「構わんさ。 流石にもう、この時間からは来ないだろう」


「そう、なら何も言うことはないわ。ご自由にどうぞ」


「ああ。 ありがとう」


 シアはミルクと少量の砂糖を、取っ手付きの小さい鍋に入れて、火にかける。


 かき混ぜながら加熱していき、しばらくすると、ぶくぶくと気泡ができて、沸騰する。 火から鍋を離して、カップに注ぎ入れ、カズハの座る、席に持っていき、渡した。


「熱いから気をつけてね」


「ありがとうございます」


 カズハはホットミルクをチビチビと飲んで、一息つく。


「ほぅ。 おいしい」


「ははは。 そいつぁ、良かったな!」


 イオリがカズハの頭を乱暴に撫でた。


 ホットミルクを飲んで眠たくなってきたのか


「ふわぁ〜」

 

 と欠伸をするカズハ


「そろそろ、戻りましょうか」


「あい〜」


「あらら。もう限界っぽいわね。 しょうがないわね」


「姉御。 俺が「大丈夫よ」」


「イオリ。あなた達、夜番でしょう? 休憩するのは構わないけど、サボりはダメよ?」


 シアは、あわよくば、サボろうとするイオリに釘を刺し、夢の世界に旅立ったカズハを抱き抱える。


「……バレたか」


「バレるに決まってるでしょ」


 顔を逸すイオリに呆れるシアだった。


「じゃあ、行くわね。 手が足りなければ呼びなさい。 直ぐに、駆けつけるわ」


「ああ。 感謝する」


 ジークとイオリはシアとカズハを見送り、椅子に座って今晩の状況を報告し合う。


「正面はどうだった?」


「賊は8人、俺が殺ったのは6人。 途中、気配が、2つ消えたって事は、あの子が殺ったんだろうな」


「記憶を無くしてもなお、暗殺者を2人、いとも簡単に殺るか…。末恐ろしいな」


「ああ。全くだ。 そっちは?」


「4人だな。 こっちは、暗殺者っていうよりは、傭兵だろうな。動きが暗殺者のそれじゃなかった」


「毎晩、毎晩。ご苦労なこって」


「本当にな」


「「ははは。 はぁ」」


 二人して笑い合い、ため息をつく。


「掃除に行くか……」


「そうだな」


 イオリの疲れが滲んだ言葉に応え、陽が昇る前に侵入してきた害虫(暗殺者)や空薬莢等の片付けをしに、行動を再開した。


 

 

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― 新着の感想 ―
[気になる点] キャラそれぞれの個性をもう少し強く示したほうがいいと思います。違うキャラでも大差がないように感じてしまう時があります。 [一言] 頑張ってください!
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