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異なる力

 食堂での食事が終わり、もらった飲み物を飲んで、皆の談笑を聞いていると、ふわりと人が何処からともなく現れた。

 現れた人は、僕の体を診てくれた人だった。


「あら? ちょうど、食べ終わった頃かしら?」


 食堂を見回してながら言う。


「シアさん。 ご飯はどうします?」


 華蓮達は特に驚くことなく当たり前のこととして、目の前で急に現れたシアの事を受け入れていた。


「私は…、いえ、そうね。 頂くわ」


「ちょっと待っててくださいね。 貰ってきますので」


「ありがとう。 カレン」


 シアは華蓮に礼を言って、空いている席に座る。


「さて、みんなが気になっているであろう事の報告をするわ」


 シアがそう切り出して、喋りだす。


「どうぞ」


 華蓮が厨房にいるローズからシアの食事を受け取り、お盆に乗せて持ってきた。

 

「悪いわね、カレン」


「いえいえ」


「じゃあ、カレンも座って? 少し、長くなるかもしれないから」


「分かりました」


 華蓮はさっき座っていた席に座る。それを確認してから、話の続きを話す。


「まず、その子。 カレンから聞いてるかもしれないけど、記憶を失っているわ」


 シアはパンを千切って、スープに浸してから口に運ぶ。

 一口食べてから


「勇者様達にお訊ねします。勇者様達のアノ力は元の世界から使えたモノですか?」


 正義達は顔を見合わせて、軽く、頷いた。


「ああ、そうだな」


 セイギおにいさんが答えた。


(? あの、チカラ? なに、それ)


「そうですか…。ありがとうございます。 セイ、マサヨシ様はソノ力は何時から使えたのですか?」


 話しながらも、食事を続けるシアさん。 そのスピードは凄まじく、あっという間に完食していた。


「この力を使えるようになったのは……。8年前からだな。 一応、10年前から魔力に目覚めていたけどな」


「10年前から魔力が使えて……。 因みに、今はお幾つなんですか?」


「今年、16になるな」


「という事は6歳の時に魔力に目覚めて、8歳の時に今の力が使えたと…。 他の皆さんも同じですか?」


「そう、ですね。 でも、シアさん。私達のこの力、実は少し、違うんです」


 理恵が実は…。と理由を話そうとする。


「? 違う? どういうことですか?」

 

 正義が引き継ぎ、日本での事を話し出す。


「俺から話すわ。 そうだな。 まず、俺達の世界にも魔法は()()()()() これは、過去にこの世界に来た勇者達は知らない事だと思う。だから、その情報はこっちには無いだろ?」


 それを聞いてたマリアが記憶を探る。


「たしかに、歴代の勇者達は自分たちの世界には魔法は無いと言っていたと記録があったと思います」


「そうだ。 おそらく、先代、もしくはそれ以前の勇者がこっちに召喚(呼び出)されてから、異世界、もしくは異界と繋がりやすくなったんだろうな。 それのせいでモンスターがあっちで暴れるようになった。 それと同時に魔力に目覚めるヤツも出てきた。 俺達はそのうちの一人だったって訳だ。 んで、そのモンスター共を討伐する仕事を学業の傍らに担っていたって訳だ」


「そう…。ジョウイチロウが危惧していたことが起こり始めているのね」


 シアはため息を付いて、組んだ手の上に額を乗せた。



「んで、話を戻すと、俺達の世界の魔力の目覚め方には幾つかパターンがあるらしい」


「パターン…? らしいですか…」


 マリアが相づちを打ち聞いてくる。

 正義がお茶を飲んで、一息ついてからまた、話を続けた。


「ズズ。ふぅ。 ああ。詳しいことは知らんからな。 んで、まず一つ目。英雄や偉人と呼ばれるヤツの力を借りて、そいつの武器や防具、修めていた技術を使える力」


 シアが顔を上げて目を輝かせる


「過去の英雄! まさか、実際にいるかも分からない伝承や伝記の人物もですか!?」


「お、おう。 そういうヤツもいたな。 力を扱いきれていなさそうだったが…」


「それはどういう」


「つまり、武器と知識を得るがそれを扱えるかどうかは俺達の努力次第って事だな。 んで、2つ目。 これは、自分の今まで努力してきたこと、得意な事を魔法へと昇華させるものだ。 例えば…」


「歌だね」


 愛莉栖が答えた。


「歌、ですか…? ああ、あの時の歌ですか?」


 シアとマリアはそういえばと、ゴウキと勇者達の試練の時に歌っていたなと思い出していた。


「そうです。 私達はみんな歌が好きで、気がついたらそれが魔法になっちゃってたんです」


「らしい。 まぁ、こいつらは頭がおかしいから別だけど」


 華蓮達、女性陣に視線を向けて断言する。


「ひどくないかな!?それ!」「そうだー、そうだー」


 頭がおかしいと言われ、野次を飛ばす女性陣だが、そこはかとなく自覚はあるみたいで、その言葉に正義を責めるようなトゲは無かった。


「酷くはねぇだろ! 実際にお前ら2種類の力が使えるんだからよ」


「え? 2種類?」


「ああ、3つ目。 自分達の想像した力を魔法として具現化させる。 こいつらはその2つを使える」


「自分の想像したものを魔法に……。 もう、なんでもあり、みたいな魔法ですね。 そちらの世界は混沌としすぎじゃないですか?」


 シアが顔を曇らせて呟き、目頭を揉む。そして、あることに気づく。


「あれ? では、カズハ様の魔力を感じない力も?」


「いや、多分それは無い。 というより、魔法に関してはそっちの方が詳しいだろ。 魔力の無い魔法なんてものは無い」


「では…」

 

「だが、魔力を隠す技術や魔法はある。らしい。 俺らは知らんし、使えんけど」


「そんなものもが……」



 魔法はこの世界の方が歴史が深い。にもかかわらず勇者達の世界の方が技術力がある。 


 何故なら、元々、魔法というのは物語での産物でしかなかったものだ。 つまりは、想像でしかない。 物理法則もヘッタクレもない、なんでもありな力。 元々、魔法がある世界特有の固定概念がない。そんな世界で、魔力なんてものが発見され、実際に魔法が使えるとなれば、科学者や研究者がこぞって調べ上げるに違いない。


 そこで、気づいたのだ、魔法はイメージ、想像が明確であればあるほど、発動しやすく、効力も高い。


 例えば、炎。 日本、ひいては地球では、火が燃えるにはある、条件がある。一つ、可燃物(木材、紙、有機化合物)。 二つ、支燃物(酸素)。 三つ、点火源(火気、静電気、摩擦熱)。の三要素がある。 これの内、一つでも欠ければ火が燃えることはない。 

 バーナーをイメージしてほしい。 アレはガス(可燃物)、酸素(支燃物)、それにライター(火気)で火を付ける。

 ガスだけだと、空気中の酸素を消費して黒煙を上げながらオレンジ色の炎がメラメラと揺らめいて燃える。

 それに、バーナーには酸素を送り込む機構が付いている。それによって、酸素を送り込むと、ゆらゆらしていたオレンジ色の炎が、円錐状の形になっていき、色も薄くなっていって、青い炎とそれの周りに半透明な青色の炎が覆った二層構造になる。温度も外側の半透明な青色の炎では1400℃〜1500℃もある。

 ただ、これは一般的なプロパンガスでの話だ。

 金属を繋ぎ合わせる溶接では、バーナーと似たトーチというものを使用する。 それも、ガスと、酸素を調整している。温度は高いところで3200℃ほどする。


 そういった、カガクの知識を魔法へ転用しているのだ。

 そして、その知識をよく知らないものが、聞きかじった知識で。想像だけ魔法を発動できるのだ。 


 アニメや漫画、ゲームの力もあるだろう。 なんでもありだ。 知識が足りないものを想像で補っている。


 ()()()()()()()()()()()()()()()のだ。



 そんな事を知らないマリアやシア達は驚きを隠せなかった。


「それと…。なぁ、お前ら。アノ噂話は知ってるか」


 正義はそう雄一達に聞くが、


「噂話なんて、ごまんとあるからわかんないよ」


 雄一は苦笑しながら答えた。 


「んあ~、あれだ。 何処かに研究所があって、そこで、ありとあらゆる魔法を使える人間を作ってるだとか。 あとは…()()()使()()()()()()()()の一部を身体に移植する実験だとか。 魔法と科学を駆使して、ヒトを作ってるだとかな? あとは…身体を弄くり回して、魔法とは違うが、モンスターと戦える者。超能力者を作ろうとしているってぇ話だ」


「ああ~。私、何個か聞いたことがあるかも」


 愛莉栖が幾つか聞いたことがあると答えて、そういえば、と続ける。


「ここに来る前にさ。 先輩達が何処かの施設に立ち入り調査しに行ってたの憶えてる?」


「ああ、あったな」

 

「あの時、多分、作戦が終わって帰って来てた時にちょうど、会ったんだよね。 その時に先輩達、顔を真っ青にして震えてたんだ。『あんなの、人間のすることかよ……! チクショウ……』って言って」


「お前…」


「その時にね。 言ってたんだ。 『”死神”の正体があんな子共達だったなんて』って。 あと、『なんで! 孤児院があんな事やってんだよ!』って」


「孤児院? ニュースになってたやつか? 取り壊しになるってヤツ」


「多分」


「たしか……」


「「月城孤児院」」


「「!?」」


 正義と愛莉栖達は召喚される前の出来事を思い出し、それに関わった人の話から一つの仮定を立てた。


 それを聞いていたマリアとシアもそれに感づく。


「つまり、その子は何らかの実験に関わっていた……と。 なるほど。 それで、あの名前」


「『11番目』とか、『ウンタラカンタラダブルオーエイティスリー』でしたっけ?」


「ええ。 もし、普通の生活を送っていたなら自分の名前はあるはずでしょう? でも、それがない。ということは、物心ついた頃から関わっていた。もしくは、そうあれと作られたかのどちらかですね。 胸くそ悪い話ですね…」


「はい」


 鎮痛な空気になり場が沈黙した。


 うつらうつらとその長い話を聞いていた一葉は舟を漕いでいた。


「とりあえず、その子の力は何なのかは分からない。 けど、アノ力を使えば記憶を失っていくと見ていいわ。 もしかしたら、勇者様達のその力も使っていく内に身体に何らかの異変が現れるかもしれないわ。 極力、使わないようにしてください。 あと、あれから時間は経ったけど、覚悟はできた?」


「……私達には出来ません。人を傷つけたくない。 殺しなんてもっと嫌なんです…! それに、誓ったんです。 この力得たときに。 例えどんな事があっても、どんな目に逢おうとも絶対に人を殺さないと」


 華蓮が代表してごめんなさいと、でも、その顔は覚悟を表した表情をしていた。

 人を殺さない覚悟。 

 それは、茨の道だ。 どこの世界でもそれは変わらない。人を殺すことより生かす事の方が難しい。

 それを理解しながらも、その道へと進むという勇気。覚悟をした目をシアに向けていた。


「……そう。何が、あなた達をそこまでさせるか分からないけど…まぁ、いいわ」


「すみません」


「いいえ、いいのよ。その志は綺麗だわ。 でも、これだけは覚えておいて。 いつか、誰かを殺さないといけない時が来るわ。その時は…躊躇わないで。 あなた達のその躊躇いが取り返しの付かないことになるかもしれないわ」


「わかり、ました」


 華蓮達は納得はしておらず、渋々という感じで返事をする。


 シアとマリアは「「まだ、青い」若いな」と思いながらも、それを咎める事はしなかった。


 パンパン!

 とシアは手を慣らし

「さて、話はこれでお終い。もう、いい時間ですからね。 戻りましょう? それに、その子もおねむのようだし。っていうよりはもう、寝てるわね」

 と話を切り上げた。


「あっぶな〜。 もう少しで、頭ぶつけるところだった」


 舟を漕いでいた一葉は終ぞ動かなくなり、力が抜け、テーブルに頭を打つ前に愛莉栖に抱き止められ、そのまま寝入ってしまっていた。

 


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