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対価

 「双方! それまで!」

 

 その、声と共に刃を喉元に突きつけられた。


「やりすぎよ、『ゴウキ』。それと君はこれ飲んで!」


 白髪のおねえさんは、ぼくと男の行動が止まったのを確認すると突きつけていた剣を納めた。

 

 あの人、ゴウキって言うんだ。


 ゴウキさんを叱りつけていたおねえさんはぼくの体の状態を見て、「コレならまだ、なんとかいけるか…」と言って蓋を開けたビンを口の中に突っ込む。


 遠くの方から、中世の騎士を思わせる格好をした人たちがこちらに駆け足で寄ってくるのが見えた。


「す、すまねぇ。 にしても…やるじゃねぇか、小僧! お前、名前は何て言うんだ?」


「んッグ!! にゃ、なまえ? ないよ」

(まっず!! 苦味の中に辛さと酸味。ほのかに感じる甘さに後味がスッキリ。 え? ナニコレ!)


「無いってことは無いだろう? 周りの人間からなんて呼ばれてたんだ?」


「周りから……。『おい』とか、『おまえ』とか? あとは…、『11ばんめ』か『83号』かな?」



「…………」


 沈黙が降り、コロシアム内の空気が重くなった。


 そして、みんなの視線がさっきまで戦っていた桜色の髪のおねえさん達の元に集まる。


「ちょっ、こっちを見ないでくださいよ!? 私達もこの子の事は何も知らないんですから!!」


 黒髪のおねえさんが手をブンブン振って、何も知らないと意思表示をする。

 

「まぁ、詳しい話は後で聞きましょうか。 それで?ゴウキ。 勇者達の判定は?」


 ゴウキさんは未だ、腕を抑え、蹲っている水原?おにいさんを見て首を振り、気絶しているセイギおにいさんを見た。そして、その二人を介抱するハルおねえさんとクリーム色の髪のおねえさんを見て、口を開いた。


「不合格。 そこの小僧を除いてな」


 ぼくの方へ指差しながらゴウキさんが判定を下す。


「明らかな、魔物の見た目のヤツにはまともに戦える。それほど遅れは取らんだろうが、複数体相手だと、後手に回るだろうな。 まぁ、これは訓練次第でなんとかなるだろうが、問題は…」


 不合格だったおにいさん達の評価を述べていく。


「対人戦ね?」


 白髪のおねえさんがおにいさん達の問題点を上げた。


「ああ。 これは絶望的だ。 なんだ、あのふざけた正義感は。 人を殺したくない? 巫山戯るな! 一度、敵と定めたなら、殺せ! 姿形を変えたところで躊躇うな!殺せ!」


「それは、むずかしいとおもうよ」


 ゴウキに無茶苦茶な言葉に反論する。


 雄一、勇者達が暮らしていた世界で、人殺しは御法度。 その世界の住人だろうと()()()()()一度殺してしまえば、後ろ指を指されることになる。 


「おねえさん。セイギおにいさんたち、どう?」

 

 おにいさん達の治療をしているおねえさん達に尋ねた。


「周防君は…気絶してるだけ。 でも、水原君は……」


 桜色の髪をしたおねえさんが顔を伏せて、教えてくれる。


「おねえさん」


 次に白髪のおねえさんに声をかける。


「言いたいことはわかるわ。 でも、ごめんなさい。 君に飲ませたポーションはもう無いわ。 君に飲ませたのが最後の一本。」


「そう…ですか。 じゃあ、もう一個だけ」


 体にの感覚に違和感を感じながら、白髪のおねえさんに尋ねる。


「なにかしら?」


 訝しげながら、ぼくの問い掛けに答えようとする。


「ぼくとミズハラおにいさんは()()()()()()()()()?」


 試練を与えても、命のやり取りをさせるつもりは無かったシアに酷な選択をさせようとしていた。


「!?」


 目を見開き、シアは何かを悟った。


「何を言ってるのカズハ君!!」


「そうだよ!!」


 白髪のおねえさんは驚き、桜色の髪のおねえさんとシルバーブロンドの髪のおねえさんが声を荒げ詰め寄ってくる。


「……………そっちの少年よ。 やっぱり、()()()()()()()

 

 ぼくの違和感を感じ取っていたおねえさんが悲痛そうな顔をして、声を絞り出した。

 

「うん」


 おそらく、先程飲まされたポーションは、傷を回復させるものなのだろう。 だが、一葉の体に拳大の大きな穴が開いており、血の流れが止まる気配がない。

 

 だから、残りの命を有効活用しよう。と、即行動に移す。


「なにを言っているの?」


 桜色のおねえさんは、血の気が引いた顔で、声を震わせた。


「ねぇ!」


 おねえさんの声は無視し、ミズハラおにいさんの元に足を進める。


「〈其は造られし生命(もの)、咎を負いし者――〉」


 チカラを体に循環させ、言葉を紡ぐ。


「〈如何なる謂れあれど、理より外れん――〉」


 体に極光色―主にエメラルドブルー―のラインが不規則に屈折しながら顕れた。

 

「何をしようとしてるの!!」


 バチィ!


 肩を掴んで、止めようとした桜色のおねえさんが電気でも奔ったかのように弾かれた。


「な!?」


 おねえさんは驚きの声を上げ、弾かれた手が痛いのか擦っている。




 いずれ、来る災厄に備えて幾人の子供たちが犠牲となった。

 親に売られた者。天涯孤独な遺児。死刑判決或いは終身刑を言い渡された犯罪者。人格破綻者。等の死んだところで誰にも気に留められない者が選ばれた。


「〈其は甘んじて罰を受けよう―――〉」


 数多くの実験の末、成功したのは……たったの1人。


 何故、こんなに少ないのか。


 それは………


 実験過程で、命の()()()()()があったからだ。


 生き残るために、殺し合い、喰らいあったからだ。


 ()()()と言っても、人肉はバリバリと喰らうのではない。

 チカラを、魔力を喰らうのだ。

  

 そうして、吸収して自分のチカラを昇華させていく。


 体の、感覚が鈍くなっていくを感じながら足を進めていくと、ようやくミズハラおにいさんの元まで辿り着いた。


 ここまで、歩いてきた場所には足跡を残すみたいに、エメラルドブルーの結晶が地面から生えていた。

 

 しゃがみこみ、ミズハラおにいさんの踏み潰され半ば千切れかけている傷口に手を置く。


「なに……を!」

 おにいさんは傷口を触られたことによる痛みで顔を歪ませ、声を震わす。


「〈なれど、罪無きものには祝福を与え給え――――〉」


 だけど、チカラを持たない者に はどうか………


「〈理より外れし我が咎よ。 我に力を貸し与え給え!―――〉」


 みんな、ごめん。 


 でも、この世界にはお兄さんが必要なんだ。


 だから、力。 使わせてもらうね。


「〈開け! ラプラス!〉」

 

 極光の光に飲まれ、景色が変わった。


 薄暗い所から、真っ白な空間に。 

 

 気が付くと目の前には石で出来た扉があった。 その前に人の姿形をした靄の塊。


「なんだ、また来たのか。 ふむ……。今回も余に力を請いに来たわけではないらしい。 まぁ、良かろう。 だが良いのか? 過ぎた力は身を滅ぼすぞ」 


「わかってる。 でも、必要なことだから」


「……………()()()?」


「構わない。 元より、この命はあって無いもの。 今更なことだよ」


「………好きにしろ。 通行料を払えば特に言うことはない」


 そう言われ、頭から何かが抜けていく感覚に顔を顰める。


 扉を潜ると、青空の上に本棚が並んでいる場所に出た。


 本棚は、扉を潜ると左右に一列で並んでいて、先は見えず、棚の中にはギッシリと本が収められている。


 そんな、本棚の中から知りたい知識を引っ張り出すのは骨が折れるだろう。


 だけど、問題無い。 コレはあくまで、ぼくが創り出した幻影に過ぎないのだから。

 だから

 目についた本を手に取り、表紙を捲る。


 すると、頭に電気のようなもが奔り、痛みと共にナニカが侵食していく。

 

 知りたい知識は得た。 そう思った瞬間、本棚は消えていき眩い光に視界が潰された。


「余と契約を結べば、通行料は無くていいんだがな……」


 靄の人影がボソッと、何かを呟いていたがうまく聞き取ることが出来なかった。


 景色が元の薄暗いコロシアムに戻った。



「術式――転写。 対象――認識完了。 状態――確認終了。 範囲指定――完了。 〈ホーリーブレス〉」

 

 ミズハラおにいさんを中心に地面に魔法陣が描かれた。

 

「な…ナニコレ!?」


 おねえさん、誰のものかはわからないけど、驚いた声が聞こえた。 


 おにいさんの砕かれた骨が元の形に戻って行き、肉が盛り上がってくる。

 しばらくすると、傷口が綺麗に無くなり、傷跡一つ残っていない状態になっていた。


 ソレを確認すると共に、体の力が入らなくなり、意識が遠のいていく。


「―――――!」


 誰かの悲鳴が聞こえてくるけど…


 

 体の熱が抜けていくのを感じながら、意識から手を離した。


 

 

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― 新着の感想 ―
[一言] なんか一葉が色々と異常すぎる∑(゜Д゜)
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