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魔力色

 まだ、幼い少年が死地へと走っていく能力を見守ることしかできなかった。

 

「行ってしまわれましたね」


「ええ。不甲斐ないばかりで悔しいですね」


「はい」


 マリアとローズは自分達の不甲斐なさに落ち込んでいた。


「そういえば、シリウス。何故、貴方は彼を行かせたのですか?死地に向かうってわかっているのに」

 

 マリアはふと、気になっていた事をシリウスに聞く。


「あの子が威圧を発した時の事、憶えてる?」


「ええ」

(アレには驚きましたね)

 

「あの時、師匠の顔が思い浮かんだんだ」


 シリウスは目を細め、思い出しながら言葉を溢す。


「ゼファーの?」


「ああ。なんて言ったらいいんだろう。醸し出す雰囲気が少し、似ていたんだよね」


「…………なるほど」


「シリウス団長の師匠があの子と同じ?ははは、ダンチョウ〜、ボケるには早いんじゃないですか?」


 イオリが、マリアとシリウスの話に割り込み、シリウスをからかう。


「やめなさい、イオリ!」


 イオリがシリウスをイジり出して、それをヘレネーが咎める。


「ヘイヘイ」


「まったく!すみません、シリウスさん」


「いや、いいよ。俺も自分で言ってておかしいって思うし」


 シリウスは苦笑しながら、大丈夫とヘレネーに言う。


「でも、な~んか、おかしな子だよね〜あの子」


 イオリは、カズハの変貌の様を思い出した。


「そう!そこなんですよ!」


 イオリの言葉に食い込み気味に同意するマリア。

 

「マリア…」


「ンンッ!カズハ君の様子がおかしくなってから、コロコロと雰囲気が変化していました。こう……」


「人が代わったみたいに。かな」

 

 後ろから声がかかる。


「そうです!」


「ぅおわ!ビックリしたー」


 マリアは後ろからかかった声に共感したが、イオリは今まで、口を挟むことのなかった少女から声をかけられ驚いた。


「ふふふ。ごめんなさいね。面白そうな話をしていたからね」


「そういえば、貴方の事はなんとお呼びすればいいのでしょうか」


 今まで、何度か言葉を交わしたが名前を聞いていなかった事に気づいたマリアが尋ねる。


「そうね……。シアとでも呼んでくれればいいわ」

 

 少し間があった事から今、考えついた名前だろう。もしかしたら、本当の名前を省略したものかもしれないが。


「シア様は何故あの子を?」

 とりあえず、シアさんの本当の名前を気にしていてもしょうがないから、他に気になったいた事を聞いた。


「あの子、私の剣を防いだのよ。しかも、何も付与されていない剣で魔剣を。生憎と私の魔剣はただの鋼製の剣に防がれるほどちゃちなものじゃないわ。でも防がれた。おかしいと思わない?気にならない?だから、あの子の事を”鑑定(みた)”の。驚いたわ。あの子、適性職がないのね。しかも、魔力がなかったわ。」


「!それって…。どういう」


「さぁ?でも、気づいたかしら。あの子、私の剣を防いだ時と結界に穴を開けたとき。確かに、あの刀には魔力が籠められていた。どうしたらあんな芸当ができるのかしらねぇ?」


「………まさか!!」

 

 

「ヘレネー?」



「イオリ…。魔力が少ない人が上級魔法を使った時、どうなるかわかる?」


「あん?そりゃあ…!!……お前ぇ!アイツを死なせるつもりか!?」

 

 ヘレネーが言わんとすることに気づいたイオリは食って掛かる。


「まさか。それは、ないわ。それと貴方。名は? 「マリアです」 マリアの質問。『何故、あの子を行かせたのか』だったかしら?それは、あの子に()()()()()()()()


「?」


「わからないかしら?魔力がないのにも関わらず、武器に魔力を籠めることができた。それだけじゃないわ。あの子の、眼に一瞬だけど、魔力が灯ったわ」


「……魔眼…?」


 ローズがはっと気付き、漏らす


「そう。でも、魔眼持ちだから、行かせた訳じゃないわ。問題はその魔力の色よ」


「色?」


「そう。え~と「シリウスだ」。シリウス、魔力色とその人の適性属性の関係はわかるかしら」


「ああ。火が赤。水が青。土が茶。風が緑。雷が黄。光が白。闇が紫だな」


「そうね。よく、出来ました。そう、この世界では今、シリウスが言った事が常識になっているわ。そこで、あの子の魔力が問題になって来るのよ」


「ふむ。人が代わったような事になったみたいに、魔力でも変わったか?」


  パチパチパチパチ


「すごいわ!よく、わかったわね、あなた。名前はなんて言うのかしら?」


「ヴェイン」


「そう!ヴェインが言ったように、魔力の色が変わったのよ!最初、あの子を視たときは茶だった。でも、私の剣を防いだ時と眼に灯った色は、…………そうね。どの属性の色にも属さない色だったわ」


「………まさか、あの子も勇者だと?」


「いいえ。勇者の魔力の色とも違うわ。勇者の魔力は金色よ。そうじゃないの。どう表現していいか……。エメラルドグリーン?いえ、違うわね。でも……どこかで……。あ。オーロラ!そう、オーロラよ!綺麗な色だったわ~。でも…魔力を持ってないのにも拘らず魔力が見えた。おかしいと思わないかしら?気にならない?」


「だから、行かせたと?」


「ええ!でも、安心して?あの子達を死なせるつもりはないわ。多少、怪我はするかもしれないけど」


「………ふぅ。わかりました。その、言葉。今は、信じておきます。でも、もし。あの方たちの誰かが死ぬことになったなら……。その首、落 と し ま す」


「ふふふ。ええ、ええ。どうぞ?」


 シアとの話し合いをしている間に、勇者達の試練は拮抗状態に陥っていた。


 黒鬼は4つの腕を駆使して、勇者達の攻撃を凌ぎつつも、その膂力で押しつぶそうとしていた。


 後方から魔法で攻めていく、花蓮と愛莉栖。だが、黒鬼の魔力耐性が高い為かその体から漏れ出た魔力で傷つけることは構わなかった。


 このことから、なんとか、この鬼を倒せないかと、あの手この手と尽くした。そのかいあってか、今まで、「守る」という行動をしていなかった鬼がその、動作をした。何故か。沙月が撃った銃弾が頭に当たる。というところで、顔を横に反らしたのだ。


 それから、沙月、花蓮、愛莉栖は黒鬼を体を張って戦っている皆に当たらないよう、黒鬼の隙を見て、頭を狙う。


 何度か、それを繰り返し確信する。


  黒鬼は頭。その中でも角が傷つくのを嫌っている。


 そのことを、前で戦っている勇者達の司令塔。周防に知らせる。


 目測で4メートル弱の巨体の黒鬼。その頭に生えている角を狙うとなると、取れる手は少ない。


 考えあぐねていたところに一人の幼い少年がその場所に辿り着いた。


「なら、ぼくがうでひとつおさえるよ」


                   と


 状態はスローペースで、だけど、着々と進んでいた。


 シアという謎の少女に勇者達が与えられた試練に参戦を認められたイレギュラーな少年が悲劇を起こさない為、自らの身を顧みず行動を起こした。


 


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