試練
周りには魔物の集団。とは言ってもゴブリンとスケルトンしかいないが。
それでも、数の暴力には抗えない。
普通なら。
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一部のスケルトンは何か奇行に走っているがこちらに攻撃をする素振りがないため優先度を下げる。
(フィーア。あの馬鹿も目が覚めたし、あとはお前に任せる)
(それは構わないけど、いいの?お弟子さんと肩をあわせて戦いたいんじゃないの?)
(なぁに。渡すもん渡せたしそれだけでいい)
(わかった。それじゃぁね、ゼン。アナタと過ごした日々も楽しかったわ)
(ああ。また、な。)
「『創造』」
両手に細剣を一振りずつ創り出した。
「また、変わった」
「『よく、気付くわね』」
「そりゃぁね。職がら相手の観察はよくやっているからね」
「『そう』」
襲って来るゴブリンやスケルトンの斬りつけを避け、時には受け流し、すれ違いざまに首を落とす。
シリウスは相変わらず初動からの速度が早く、常人にはただ、歩いているようにしか見えない。
「このカタナ。切れ味良すぎない?刃こぼれもできてないし」
「『ああ、それいろいろ付与されているからね。私でも全て把握できていないわ』」
「魔剣か。って!どんだけ付与されているかもわからないのかよ!?」
「『私達で適当に良さげなものを付与していったから』」
「おいおい……」
私は背後から襲って来るゴブリンの攻撃をしゃがむ事で躱し、その場で体を反転させ足を切り飛ばす。足を失った事でジタバタ暴れるゴブリンの喉元に細剣を突き刺しとどめを刺す。
しかし、これは反射的に動いているだけで、意識は彼の動きに向いている。
(あの動き、加速がない。”停止”か”最大速度”かのどちらかしかない。だから目が追いつかない。瞬歩とは違う。あの動きは何?どうやってるの?)
大剣を持った大柄のスケルトンが正面からシリウスに向かってその剣を振り下ろした。
シリウスはカタナの強度の確認の為か受け止めようとしていた。
「『ダメ!』」
私は彼に警告するが遅かった。
大剣が振り下ろされ、シリウスの姿が消えた。
「いや〜、危ない危ない。まさか刃を合わせただけで斬れるとは思わなかったよ」
「『警告する必要はなかったみたいね』」
「はははは。まぁ、心配してくれてありがとうね」
やめなさい!撫でないで!
いつの間にか私の目の前にいたシリウスが私の頭を撫でていて、その手を払いのける。
「『鬱陶しい』」
「おっと。これは失礼」
「『ねぇ。粗方片付いたけど、あの奇行に走っているスケルトンは何をしているの?この世界ではああいうのも普通なの?』」
「いや。俺も初めてだなぁ。何か規則的な動きなんだろうけど、検討がつかない」
「『そうよね。まぁ、サクッと片付けましょう』」
「応!」
何か舞のようなものを待っていたスケルトンは5体。
私達はそれに向かって地を蹴った。
ズン!
私とシリウスはあと一歩で一体ずつ倒せるというところで、奇行をしていたスケルトンから圧を感じ足を止めた。
スケルトン達は手を繋ぎ円になっていて、その中央にナニかがいた。
グシャッ
突如、スケルトンが薙ぎ払われた。
目の前には見目麗しい少女がいた。白銀で先の方が紫がかっている髪。雪の様に白い肌。まだ、幼さが残るあどけない顔たち。だけどしっかり大人に成長していっている体つき。
そんな、この場には似つかわしくない少女だ。
「う~ん?女の子?」
「『女の子ね?』」
私達は困惑した。
魔物と戦っていたのに急に女の子が現われたのだ。
「ふぅ。まさか、ワタクシが呼ばれるなんて。今回は活きが良いみたいね?あなた達がそうなのかしら?」
キン!
「ぅお!」
少女が一足に飛び出し、シリウスに斬りかかる。
ソレをシリウスが防ぎ、鍔迫り合いをしていた。
「へぇ。その刀。随分と強化されているね。まさか、私の魔剣打ち合えるなんてね。あの魔王以来だ、わ!」
キキン!
私は少女の死角から細剣を投擲する。
だが、少女はシリウスの刀を払いのけ、その場で回り細剣を切り払った。
「魔王?今、魔王と言ったか?ヤツは千年前に勇者達が封印したはず。何故………まさか!」
「ふふっ。その、まさかよ。ワタクシはあの戦列に加わっていたうちの一人」
「何故生きている!?どうして、今代の勇者を殺そうとする!?」
「………………はい?」
「だから!」
「え?勇者様?…………はぁああああ!?何で勇者様がこんな侵入者を排除する部屋にいるのよ!そりゃ、ワタクシが呼ばれるわけだわ。この部屋のシステムじゃ殺せないもの」
「『おい。私達はこの場で死にかけた。その謝罪はないのか?』」
「死にかけた?こんな程度で?あなた達、本当に勇者なの?」
「『勇者じゃない。その召喚に巻き込まれただけよ』」
「あ~。そっちの方か。でも、この程度で死ぬようならこの世界で生きていけないわよ?この場で死んどく?」
パァン!
パァン!
「おおっと。危ないわね。あなた達も巻き込まれた人?」
「ええ、ウソ〜。避けたよあの子」
銃を撃ったのはこの娘か。
「なんだか知らんがこいつが最後か。なら、ウォラアアア!」
オーガと戦っていた者達が加勢しに来た。
「あれ?また、雰囲気変わった?」
先程、応援に出した鎧武者が近寄ってきて、私の違和感に気付く。
「『あなた達…。キモチワルイわ。よく気付くわね』」
「キモっ。ヒドくない!?ただ、なんとなく空気がかって違うっていうかね。何か、違うんだよ」
「『まぁ、いいわ』」
「あら?その、魔力。アナタが勇者かしら?」
武僧の攻撃を軽く流していた少女が鎧武者の方に意識を向けた。
「そうだけど?」
「弱いわ。なら、いっそのこと……でも…」
少女は何かブツブツと呟いていた。
「よし!あなた達に試練を与えるわ。そこの騎士達とメイド。あと、そこのお嬢様。それと貴方。今、言われた人達はおとなしくしていなさい。呼ばれなかった、え~と7人か。7人には今から、ワタクシが呼び出す魔物と戦ってもらいます。勝てたら、もしくはワタクシに生かす価値があると認めさせる事ができたなら、開放するわ。あと、君も参加しないでね」
少女は騎士達とシリウス。マリアとメイドを指さし不参加を言い渡し、指をパチン!と鳴らす。すると、魔法で造られた輪で腕と体を一緒くたに拘束された。
「無詠唱」
シリウスが驚いていた。剣もでき、魔法も無詠唱ができるほど熟練している。
「『何故、私も?』」
「だって、あなたを参加させたら勇者様の試練にならないじゃない。だから、あなたもダメ」
「『………わかったわ。私は参加しないわ。あなた達、頑張りなさい』」
「本当に、あのちびっこか?」
「ほんっとうにね!急に変わりすぎて何が何だか分からないよ」
武僧と銃を装備した少女が私の言葉から違和感を感じていた。
「確かに!」
「ねー!でも、ありがとう!頑張って来るよ!」
弓を持ちフードを深く被った少女と何故か腰に挿してある剣を使わず拳で戦っている少女が先程の少女に共感していた。
「このメンツなら」
「うん」
「「本気出しても大丈夫だね!」」
えぇ。あなた達、知ってるからね。私とシリウスが戦っている間にえげつない魔法を放っていたの。
まさか、魔法で擬似的な水素爆発なんてよくやるわ。
「ははは!みんな、やる気だね〜。頑張れ〜」
「「「「「「お前もやるんだよ!」」」」」」
おいコラ。勇者!
「ええ。嫌だなぁ。もっと、さ。平和的にいかない?」
「じゃぁ。ここで、死 ん ど く ?」
一瞬で後ろに回り込んだ少女が首筋に刃を当てた。
「それは、勘弁!」
「はぁ……。じゃぁ。頑張んなさい」
少女は手を上に伸ばすと彼女の体が黄色い魔力に包まれた。
私含め不参加を言い渡された者達の足元に魔法陣が生まれ強制的に転移させられ一箇所に纏められた。しかも周りに結界で覆われている空間の中にだ。
そして、勇者達の前にも大きな魔法陣ができ、そこから試練の相手が出てくる。
頭から角が生え、筋骨隆々。腰には布を巻いた姿かたち。
皮膚の色は黒。
それは
「黒鬼。ソイツがあなた達の相手よ」
鬼は知っている。
私達の世界にもいる伝説上の妖怪。
鬼は人に危害を加え、喰らう。または地獄において亡者を責め回す獄卒。「恐怖」「悪いもの」の代名詞。等など、いろいろな説がある。
しかし、目の前の鬼は
「俺達の知ってる鬼と違う!?」
「カ○リ○ーじゃんあれ!」
「いやいやいや!おかしいおかしいおかしい!」
腕が、4本あった。いや、違う。鬼の少し、後ろで腕が浮いていた。
そして、それぞれの手に大剣。鬼にしてみればロングソードなのだろうか。剣を持っていた。
「…ねぇ、あいちゃん」
「…うん。そうだね」
「「殺ろう」」
ビクッ
「え~と。二人共?怖いよ?どうしたの?」
「どいて、水原君。ヤツを殺りに行くんだから」
「邪魔」
「ちょっ、こわっ!八神さーん!夜桜さーん!二人を止めてぇえ!」
「え!?二人共!どうしたの!?怖い怖い怖い!」
「どうどう。落ち着いて。何があったの?」
「アイツが持ってる剣。カズハ君を刺した剣だよ」
「つまり、アイツがあの子を刺した」
フードを深く被った錫杖持ちの少女の言葉を魔女っ子が引き継ぐ。
「え?ああ、なるほど……。でも、殺るのはいいけど、二人でやれるの?無理でしょ」
「ごめん」「ごめんなさい」
「いいよ、いいよ。二人が怒るのも仕方がないもん。私も怒ってるしね」
もう一人のフードの持つ弓が藍色の光に包まれるとそこには弓はなく、一振りの剣が握られていた。
「理恵ちゃんもやる気だね。はぁ。仕方がない。私も怒っているのは確かだから」
「うわぁ。女性陣はみんな殺る気だよ。どする?」
「相っ変わらず呑気だなぁ、お前。ったく。俺たちも行くぞ、水原!」
「ははは!了解!セイギ!」
勇者達はそれぞれの武器に魔力を纏わせていく。
「お前ら、落ち着け!慌てんな。橘と天王寺は奴に魔法を叩き込め!あと、解析を頼む。俺と水原で正面。八神、夜桜で遊撃
だ。綾小路はふたりの援護と後ろの二人も気に留めてやってくれ」
「「「「「「了解!」」」」」」
「ふふっ。そんな布陣でうまくいくかしら」
――――――――――――――――――――――――
ダダダダダ!
キィイイイイン!
キン!
キン!
ガァアン!
チリッ!パリッ!バァァアアン!
目の前で勇者一行が四腕の黒鬼と死闘を繰り広げていた。
銃声が轟き、剣戟が鳴り響く。その合間を縫って強大な魔法が放たれる。
だが、その尽くが防がれ、いなされる。傷ができても、直ぐに癒えてしまう。
「ッチ!面倒くさ!水原さっきのアレは?」
「ああ、これ?」
水原は腰に挿してあるもう一本の刀を指差し聞く
「それだ。それなら、傷を残せるんじゃないか?」
「どうだろ。大技使わなければいけるかな…」
手に持つ刀を収め、揚羽蝶の紋様のされた刀を抜く。
「うん。抜けたけど、あと、2回くらいか…。セイギ!あと2回が限界っぽい」
「マジか!なら、温存して、ここぞって時使え!タイミングはお前に任せる!」
「周防君!」
「どうした!天王寺!」
「さっきから頭の角をを守ってる事が多いよ!もしかしたらそこが弱点かも!」
「アイツの攻撃を掻い潜って角をへし折れって?無理ゲーだろ!」
「綾小路さん、狙えない?」
「う~んと。狙い撃つ事はできると思う。でも折れるかはわからないかな〜。げんに、銃弾効いてないしね」
「魔法で砕く事はできそう?」
「無理!そこまで高威力だと皆を巻き込んじゃう!」
「天王寺さんは?」
「私もちょっと難しいかも」
「どうする、セイギ。結構、詰んでるよ」
「わかっとるわ!」
(クソッ!水原の虎の子でへし折れそうだが、こいつをフリーにさせようとするとあの四腕からの攻撃が凌げねぇ。かと言って。綾小路の狙撃で砕くのも難しい。魔法で砕くのは可能だが、俺達も巻き込まれる。夜桜と八神もそこまで高威力の攻撃は出せない。せめて、腕一本でも、切り落とせれば…)
「チッ!手が足んねぇ」
―――――――――――――――――――
「本当に、あんなのが勇者なの?弱すぎないかしら。
あんなの所詮、禁忌区域の入口にいる魔物くらいの強さよ?」
「禁忌区域、ですか?」
「あら?お勉強不足ではなくて、お嬢様」
「それは、それは。申し訳ありません。あなたが生きていた時代とは違いますので、もしかしたら地名が変わっているのかもしれませんね」
「うん?ああ、そういう事もあるのか。確かにお嬢様の言う通り名前が変わっているかもしれないわね。場所は大陸中央の遺跡よ」
「大陸中央ですか……しかも遺跡…」
「ああ、マリア。遺跡はアノ森の中央に確かにあったぞ」
「え?聞いてないわよ!シリウス!」
「そりゃあ、今回の遠征でそれっぽい場所に行き着いたからな」
「ちょっと、待ってちょうだい!森!?あそこに森ができてるの?」
「え、ええ。先代勇者の内の一人があそこ一帯を森で囲いました。何故そうしたのかはわかりませんが…」
「はぁ〜。私の記憶と今の状況が大分違うわね。失礼したわね」
「いえいえ。こちらからも聞いても?」
「どうぞ?」
「どうして勇者召喚というシステムを造ったのですか?」
「わからないわ。初代勇者オミツキ ジョウイチロウ。そう名乗ってた彼は未来を見る事ができたわ。そこで、何を見たかはわからない。でも、魔王を殺すのではなく、封印をすることを選んだ。それと同時に異世界、彼がいた世界とのパスを繋いで、特定の条件に当てはまる少年少女をこの地に送り込む魔法を創り上げた。もちろん、私達は反対したわ。今、ここで殺せるのにどうしてってね」
今。なんて……
「勇者様はなんと?」
オミツキ…ジョウイチロウ?
「今、こいつを殺すと、いずれ俺達の世界は滅ぶ事になる。なら、ソレを防ぐににはこいつを利用するしかない。だが、こいつを野放しにするとこの世界が滅んでしまう。だから、封印が解ける前に封印を掛け直す必要がある。ソレをするには勇者の魔力が必要不可欠。そのためのシステムが必要だ。とね。
だから、自分のいた同じ世界の人間。だけど、無差別に呼ぶと無駄に命を散らすことになる。そこで、条件を付けてそれをクリアしたものを呼ぶことにしたのよ」
「封印ですか……」
「ええ。封印よ。ああ〜。やっぱり、アノ勇者様達じゃ無理だったかしら」
どうして、アノ男の名前が?勇者?アレが?あんなことをしておいて?
「『ふふふ。はぁはははははははっ』」
「いきなり笑い出すなんてどうしたの?頭でもおかしくなったのかしら?」
「『ご、ごめんなさい。ふふっ。た、ただ、アノ男が勇者だなんてっ。なんか可笑しくって』」
(考えても無駄ね。とりあえず、この状況をどうにかしなくちゃ。…………そろそろ起きる頃かしら)
「あのお方の事を知っているのですか?」
「『ええ。アノ人は孤児院を経営していて、私達はそこでお世話になっていたわ」
「そう、そっちの世界でも相変わらず人助けをしてるのね」
「(ん?ここは………)」
(起きた?起きて早々で悪いけど、状況は把握できてる?)
「(フィーアおねえちゃん!?やっぱり!アレはゆめじゃなかったんだね!うん!だいじょうぶ!ちゃんと、きろくされてるよ!)」
(私も君ともう一度あえて嬉しいわ。でも今は)
「うん。この状況をどうにかしないとね!」
座りこんで、白紫の少女の話を聞いていたぼくはおもむろに立ち上がる。
腕は魔法で体と一緒に拘束されているけど、立ち歩く事はできる。だから、足だけでも、準備運動をする。
「君、何をしようとしているのかしら。言ったはずよ。君は参加させないと」
「そうだね。でも、これはぼくたちのしれんだよね?」
「………はははハハははは!そう!そういう事!これは一本取られたわ!いいわ。許可します!でも……ここから出られたらね!できれば子供にはおとなしくしていてほしいもの」
「イオリおにいさん。そのみじかいほうのかたなかりるよ」
「は?」
ぼくは返事を待つ前に後ろ手で刀を引き抜き地面に落とす。
落とした刀に足を引っ掛け上に蹴り上げる。
蹴り上げた刀はぼくの頭より高く上がり縦に回りなが落ちてくる。
落下地点の下に入りそのままじっと立つ。
「何をしているのですか!?カズハ様!」
「君!死ぬつもり!?」
マリアおねえさんと白紫の少女がぼくの行動に驚いていた。
普通、刀。刃物が落下している、その落下地点に居ようだなんて思わない。
でも、これでいい。
落ちてきた刀はぼくの体に当たることは無く、魔法で造られた輪だけを切り裂いた。
「!?。どういことかしら?その刀。何か付与が?いいえ、何も感じないわ。なら、どうして、私の魔法が……?」
「じゃあ、いってくるね」
刀を拾い上げぼく達を囲っていた結界を斬りつける。
キィイイイイン!
「どいうこと?」
「君を行かせる訳にはいかなくなったわ」
白紫の少女がその手に持つ剣で防いだ。
「ゲームマスターがルールをやぶるの?」
「ゲームマスターだもの、ルールなんていくらでも変えれるわ」
身を引き、刀を構え直す。
体を横に目線の高さに水平に。右手は柄尻に左手は鍔付近を握り構える。
対し、白紫の少女は両手をだらーんと垂らし、自然体。構えてもいない。
白紫の少女の体がブレ、目の前に現われた。
後ろにステップで下がりながら刀を下に向け左手で刃先付近の腹を抑えて右から来る斬撃を受ける。
そのまま、斬られた勢いのまま地面を滑る。
「へぇ〜。今のを防げるんだね。う~ん。まぁ、いっか。いいよ。君の参加を認める。でも、死ぬかもしれないよ?それでも行くの?」
「しにたくない。でも、めのまえで、だれかにしなれるのは、もっといやだから。だから、いくよ」
「そう。なら、私は止めないわ」
「待って下さい!その子は戦わせないと勇者様と約束をしたんです!だから!その子に戦わせないで下さい!その子に戦わせるというのなら私が代わりに戦います!」
マリアおねえさんが待ったをかける。白紫の少女に自分が代わりに戦うからと懇願する。
でも
「あなた。この子の覚悟を無駄にする気?死ぬとわかっていて、それでも、と言って、戦う道を選んだのよ。ソレを外野がとやかく言う事ではないわ。ねぇ?貴方もそう思うでしょう?」
白紫の少女はぼくの事を擁護し、シリウスさんに水を向ける。
「…………そうだね。確かに、外野がごちゃごちゃ言うことではない」
「シリウス!!」
「でも!それでも、君のような子供が戦わないといけない。なんてことはないんだ。それでも、行くのかい?」
シリウスさんは心配そうに聞いてくる。
「うん」
「わかった。なら、これを持っていきなさい」
「だめ」「駄目よ」
「なんで?」
「そのかたなは、つよすぎる。それじゃあ、しれんにならない。だから、つかえない」
「ふふっ。全部言われてしまったわね。でも、その通りよ。そんな、馬鹿げた力を持つ武器を持たせるわけにはいかないわ」
白紫の少女はぼくの頭を撫でながら、シリウスさんの善意を突っぱねる。
そもそも、試練だって言っているのに武器の性能で突破しても意味がない。だって、この試練は戦闘能力を測る試練じゃないのだから。
「それと、ちょっとそのカタナももう一度、見せてね。………ありがとう。それなら、使ってもいいわ」
ぼくの持っている、イオリさんの刀。たぶん、脇差しだけど、これはいいらしい。
結界を視る。
この、結界はぼくたちを閉じ込めるだけのものでもないらしい。
外からの攻撃から守るためのものでもあるみたい。
何でわかるのか。
確かに、ぼくは魔法は使えない。それは、事実。
だけど、ぼくはありとあらゆ知識を保存することができる。
図書館をイメージすればいいのかな。
ありとあらゆるジャンルの本、知識を保存し、見たい時にその知識を視る。
そして、経験したこと、見たものも知識として、保存することができる。
あとは、その知識どおりに体を動かせれるかどうか。
今、視た結界も、同じものではないけど、似たようなものは見たことがある。だから、これは推測になる。
そして、この手の結界は内側からの攻撃に弱い。
だから
「れんげ」
魔力を刀に籠めて下から上に斬り上げる。
すると、結界を壊す事無く部分的に切り裂き、穴ができた。
そこに飛び込む。
結界の外に出た瞬間に結界の穴が閉じ、元通りの結界に戻った。
後ろを振り返ると白紫の少女以外の人が口を開け目を見開いていた。
「無理はせず、駄目そうなら戻ってらっしゃい。君はゲスト参加みたいなものだから、ペナルティはないわ」
「うん!いってきます」




