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再び、乱戦 ⅱ

 私は目覚めない騎士の上に鞘を置く。


(これでいい?ゼン。いえ、()()()()?)


(ああ。あとはアレを頼む)


(ええ)


 私の横の空間が波打ち、そこに右手を刺し入れ、引き抜く。


 手には布で包まれた長い棒状のものを持っていた。


 ―――――来る!


 私の上に黒い靄ができており、そこからロングソードが飛び出てくる。

 左手に持った片刃のロングソードを地面に突き刺し、手に細剣を三本創り出し、それを指の間に、はさむ。


  ギャリィィィィイイイイ!


 ロングソードの右側に細剣を沿えて体の左側に落ちるように打ち払う。


 そのまま、腕を戻しながら細剣を黒い靄に向かって投げつける。


 周りを見渡すと苦戦はしていないが圧倒的な数の暴力に飲まれかけている。それに、騎士達の持つ武器がボロボロだ。


(あまり、干渉はしたくないのだけど……)


「『ちょっと、いい?』」


 剣を地面から引き抜き、灰色ローブといかにも魔女な格好の少女達に近づく。


「?一葉君?」


「雰囲気変わった?」

 

「『そんなこといまはどうでもいい。今から、私も前に出るから。あそこのメイドがいる一画にいくわ。だから、あなた達は自衛と、転移してくる剣の対処をお願いしたいの。それと、あそこの鎧武者の近くにいるお嬢様。もう、限界よ。下がらせて。』」


「え?」「はい?」


「『二度は言わないわ。じゃ、あとよろしく』」


 そう、言い残し行動に移す。


 身体を沈めて、足に力を入れる。


  ドン!


 地面スレスレの高さを滑るかのように疾走する。



(あの、メイドも限界が近いわね。流石に私だけじゃこの量は捌ききれないわ。どうしたものか……)

 

 スケルトン共の合間を縫うようにすり抜けていく。

  

 すり抜けざまに刃を滑らせなできっていく。


(やばっ!)

   

 メイドがスケルトンに剣を弾かれ、近くにいた槍を持ったゴブリンに貫かれようとされていた。


 私は地を蹴り、メイドの足を後ろから刈り転ばせる。

 

「っく!キャッ!」


 槍はメイドの顔の上スレスレを通過していく。


「『大丈夫?』」


 回転斬り。スケルトンとゴブリンを一緒くたになった切り裂く。


「はい。ありがとうございます?……何か雰囲気変わりました?」


「『はぁ〜。そんなことはいいから、下がりなさい。武器も、もう持たないでしょう?まさか、ステゴロで戦うつもり?』」


「しかし、ここで引いては……!」


「『私が引き継ぐわ。それじゃぁ駄目?』」


「い、いえ!しかし!私達はあなたを戦わせないと勇者さま達と約束をしたのです!それを、約束してすぐに破る訳にはいかないのです!だから、せめて、共に戦わせてください。守らせてください。例え、この身一つとなっても盾となりましょう!」


(この目。引きそうにないわね)


(フィーア。代われ)


(ゼン?)


(お前では、捌ききれんだろう?)


(できないことはないけど…。守りながらだと無理ね。わかったわ。でも、体にあまり負担をかけないで)


(心得た!)


「『仕方がない。ヌシはこれを使え』」


 俺は片刃のロングソードをメイドに投げ渡す。


「え?よろしいのですか?」


「『構わん。まだ、コレがある』」


(いいの?それは、あなたの弟子のために拵えたものでしょう?)


(なに。こやつも俺の弟子だ。お前もな)


(ふふ。そうね)


 布を外し、中の物が顕になる。


 刀。反りのある刀だった。鯉口を切り、引き抜く。


  シャァァァァァァァン


 黒い刀身。刃紋はない。ただ刀身に目のような紋様が全体に入っている。


「なん…ですか。その、カタナ…」


「『俺が打った刀だ。ボサッとするな。速いとここの一画を蹴散らすぞ!』」


「!はい!」


 身体を前に倒し、()()()()()()()()()


「はい?」


 一足で魔物に近づき、撫で斬っていく。途中、俺を止めようと動きを見せる魔物もいたが、ヤツらの武器を弾き、斬り落とし、首を落とす。時には足を刈り、腕を斬り落とし、首根っこを掴みぶん回す。そして、他の魔物にぶつけ、混乱しているところを一網打尽にする。


 チラッと後ろを見ると、ゴブリンが飛び上がり、縦に切れられそうになっているメイドが目に入った。

 メイドは周りをスケルトンとゴブリンに囲まれているため、避けることが難しく、横にいなすように頭上にロングソードを構え、応戦する。ゴブリンの持つ、穴開きのショートソードがロングソードに当たることはなかった。まるで、()()()()()()()()()、ショートソードを切り裂いたからだ。


「は?」


 慌てて飛び去って、自分の持つ剣を見る。そして、今しがた切り落としたゴブリンのショートソードと見比べ、困惑する。


「カズハ様!?切れ味おかしくないですかこれ!」


 驚きながらも、自分に飛びかかっているゴブリン×3を横薙ぎでまとめて切り裂く


「『当たり前だ。曲がりなりにも、聖剣だぞ。ソレ』」


 俺は、手に細剣を一本創り、メイドの方に向って投擲する。


 メイドは、それを見ていたがそのまま動かずじっとしている。顔の横を細剣が通過していき、後ろから切りかかっていたスケルトンに頭に突き刺さり霧散する。


「あえ!?そんなものポンって渡さないでください!」


「『ならもっと、マシな武器を用意しときな。あんな間に合わせの武器じゃ、命が幾つあっても足りないぞ』」


 刀を背に、持って行くと、手に衝撃が伝わる。

 後ろから、スケルトンが切りかかっていた。右に身体を回し、振り返りざまに左下から右上にめがけて振り上げる。


 チン!


 一度、刀を鞘に収める。


 体の左側を後ろに半歩下げ、少し前かがみになり、柄に手を掛ける。

  

息を整え、気を鎮める。


鯉口を切り、抜き放つ。右上から左下へ。左上から右下へ。右から左。左から右へ。上から下へ。縦横無尽に斬撃を繰り出す。


眼前のまものの集団が切り刻まれていき、数を大幅に減らす。


「『ふむ』」


(ふむ。ッじゃないっ!無茶しすぎよ!)


(すまん…。つい)


(つい。じゃなーい!もう、気をつけてよ)


「こっちは、大分片付きましたね」


「『ああ。向こうの応援にいくか』」


「ええ」

 

刀を鞘にしまい、他の戦地に向かう。


―――――――――――――――――――――――――――――

(ちょっと、キツイですね。ユウイチ様にああは言ったものの、この武器では無理がありますね)


ゲヒャ!ヒャハハハ!


「っく。数が多い…」


右手に逆手で持ったナイフで、ゴブリンからの攻撃をいなし、左手に持ったロングソードで息の根を止めてく。スケルトンからの攻撃を躱し、掻い潜る。

 足元を槍で掬われ、そこをスケルトンに掴まれ、投げ捨てられる。

 体を打ち付け、痛みに苦悶するが、すぐにべつのスケルトンがその手に持つロングソードで突き刺してくる。

 体をを横に転がし避け、起き上がる。  が、ゴブリン達の追撃があり、組み伏せられる。


「っく!」


「マリアさん!っくそ!そぉこぉをぉおお!どけぇええ!」

 

 スケルトンとゴブリンの群れに囲まれ、自分の身を護るのが精一杯だった雄一がマリアの様子に気付き、強行突破を試みる。だが、現実は無情だ。一時的に道はできるがすぐに塞がれる


「まだだぁああ!」


 脇差しに左手手を掛け、引き抜き、左から右へ振り抜く。


 黄金の粒子が漂う青色の斬撃が飛んでいき、眼前の魔物達を切り裂いた。


 マリアへの道ができ、そこに向かって走り出す。


「離しなさい!離して!」

(いや!こんなところで死にたくない!まだ、シリウスに伝えてない!)

 「いや…。いやだよ……。まだ…伝えれてないのに…。…助けて。私を守ってくれるでしょう?お願い…。起きてよ…。起きなさい!シリウスゥウウ!」


 私の上に現れた大剣が私に向かって振り下ろされる様を直視することができず、ギュッと目を閉じた。

 すると、体を押さえつけていた力がフッと消えた。

 

 おそるおそる目を開けると、



「お待たせしました。殿下」


 大剣が消え、私を押さえつけていたゴブリンもいなくなっていた。


「随分と…お寝坊さんですね?シリウス」


「ははは!すみません。最近、あまり、寝れていなかったもので。誰かさんが仕事を振ってきてね」


 そんな、軽口を叩いてくる。


「マリアさん!良かった!って、シリウスさん!?」


スケルトンとゴブリンの群れを切り開いて駆け寄ってきたユウイチさんがシリウスがいることに驚いていた。


「悪いね。手間を掛けさせた」


「いえいえ!アレはしょうがないですよ!それより武器はソレしか?」


 そう、シリウスが持っているのは金の装飾がされたなされた中空の先端が尖った板状のもの。即ち、鞘だ。


「いや〜。目が覚めたらこれが体の上にあってね。そのまま、持って来ちゃった」


「いやいや。えぇ」


「はあ~どうしようか」


 ピシッ


「あ」


 鞘にヒビが入った。


「これは、もう使えませんね」


「だな~」


「って!何呑気なこと言ってるんですか!マリアさん!シリウスさん!」


「『まったく。緊張感がないな。お前ら』」


「「「!?」」」


 パッと後ろを振り向くとカズハ様が立っていた。その手に、カタナを持って。


「え?一葉君?なんでいるの!?ちょっ」


「『少し、静かにしてくれないか』」


 刃を抜いてはいないけど、カタナをユウイチ様に突き付け言葉を止めた。


「はあ??いったい何が………」


「『はぁ。まぁいい。受け取れ』」


 カズハ様は今、ユウイチ様に突き付けていたカタナをシリウスに押し付けるように渡した。


(もう。何が何だか分からないわ。カズハ様の口調も雰囲気もさっきまでと違うし、それに怪我は!?)


「え。お、おう。ありがとう?」


「『ソレは返してもらうぞ』」


 そう言って、シリウスが持っているヒビが入った鞘を奪い取る。


「『それと、お前は下がってろ!武器もない。魔力も残りわずか。そんな状態の奴に戦わせれるか』」


 私を指差し、そんな事を言ってくる。


「『それと、お前もあっちの援護に行け。お前ならあの化け物にも遅れを取らないだろ。大丈夫だ、その力をお前は持っている!ただ、使い方がわからないだけだ。使い方がわかれば、あとはソレをどう熟すかだけだ。さぁ、いけ。こっちの事は任せとけ!』」


「な!?でも!」


「『いいからさっさと行け!仲間を死なせるつもりか?それに、所詮、雑魚の集まりだ。こっちには五剣の弟子も居るしな!やれるだろう?』」


「まぁ、出来なくはないな〜。んで?なんでキミが俺のこと知ってんの?」


 シリウスは殺気をカズハ様(?)に叩きつける。


「『今、そ れ は 必要 か?』」


「!」


 カズハ様から威圧的な空気を感じた


(何!?いったいなんなの?何が起こっているの!?)


「くくっ。そうか。そういう事か!はははッ」

 

 シリウスは肩を震わせ、じきに声を上げて笑う。


「シリウス?」



「くくはははっ。はぁ。あとは俺達に任せとけ。マリ、殿下。ユウイチ殿」


「もう、ファーストネームでいいわよ、シリウス。いちいち訂正するのも面倒でしょう?」


「あいよ」


「本当に大丈夫なの?」


「「『問題ない』」」



 シリウスとカズハ様が同時に断言する。


「わかりました。あとはお願いします」


「『マリア。後ろの二人、守ってやってくれ』」


「!はい!」


「『ほれ。お前も行け』」


「……わかった。後で説明してもらうからな!」


 そう、言葉を残し雄一はオーガの方へ向かって行った。


「『ああ。(時間があったらな)』」ボソッ


(カズハ様?それ。絶ったいに言わないヤツじゃないですかっ)




「『さて、ゆるりと参ろうか』」


「ああ」


 

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