再び、乱戦
目の前でまだ幼い男の子がその体を大きな剣で貫かれるところを見ていることしかできなかった。
私達の力は何のためにあるの?
何が、星に触れたものだ。
何が、魔法だ。
何のために、この力を与えられた。
うごけ
動け
動け!
死ぬかもしれない。
そんな、恐怖に足が竦む。
動かない。(動け)
動かない (動け!)
「ぅああああああ」
剣が引き抜かれると同時に地に打ち付けられた男の子。
「一葉君!」
私は、あの子の元に駆け寄る。
ヒドイ。
かろうじて、体が繋がっている。そんな惨状だった。
「い、いやぁああああ!」
「そんな…」
「ヘレネー。俺達はもういい。その子の治療を」
「え、ええ。でも…。もう……」
……………胸の辺りが上下している。
まだ、生きてる?
「どいて!」
私は、ヘレネーさんを押し退け、一葉君の容態を見る。
(まだ、息がある?この傷で?)
「あいちゃん!手伝って!」
「うん!」
私達は胸の前で手を組み、祈りを捧げる。
すると一葉君が金色の粒子が交じる白金色の光に包まれた。
「傷が……」
「どうしてっ!」
塞がらない。
「なんで……。いや……」
「どうして!」
私とあいちゃんは自分の無力さに打ちひしがれた。
私達の力で、癒せない。
「ッく。」
それでも、治癒を続ける。
「オーバーロード!〈リジェネレーション!〉」
ヘレネーの体が水色の魔力光に包まれ、魔法を一葉君にかける。
「これでも…はぁ、はぁ。だ、めですか!」
「今のは?」
私は先程までと違う魔法名だったため、聞いた。
「上級の治癒魔法です。ですが…」
「そんな……」
上級魔法らしいが、傷は塞がらない。
もう、打つ手はないの?
「嬢ちゃん!後ろだ!」
イオリさんの声が響く。
「ま、にあえぇええ!」
ギャイィぃイイイイン!
カタナで大剣の背を押しそらす。
「ハァハァ。間に合った…」
カン!
カン!
カン! カン!
場所は違えど、私の周りのあちこちで、剣が現れては斬り下ろされ、突き刺されるが、マリアさん始め、騎士の皆さんが防いでくれる。
「ヘレネーはそのままカズハさまの治療を。ジーク、イオリ、ヴェインは私と周辺の警戒。傷は癒えてないでしょうが、なんとしてでも、彼女たちを護りなさい!ローズ、ハイネンは彼女たちの警護を」
「「「了解!」」」「「了解!」」
「シリウス。いつになったら起きるの?」
「………」
カン!
キン! カン!
キィイイイイン!
カン!
コン!
「起きなさい!シリウス」
ピシ!
マリアさんはこちらに剣が来ないように受け流しながら、未だ目が覚めないシリウスさんに声をかけ続ける。
「なんで…。なんで…治んないの!?お願い…!」
「死なせない!死なせたくない!だから………」
私達は一向に傷が癒えないけれど魔法をかけ続ける。
ジャイィイイィィィイイン!
すぐ近くで、火花が散る。
鉄が削れる匂い。鉄錆の臭い。
「クソ、クソ!奴さんが見えねぇと斬ることすらできねぇ!」
イオリさんが悪態をつきながら私達を守ってくれる。
ブォン! ブォン!
ブォン! ブォン!
私達がいるところから少し離れたところに異音がした。
「やっべ!」 「これはっ!」
「まずいっ!」 「なんとしてでも彼女たちだけでも」
ゴォオォオオオオオォオオオオオ
どうやら私達がいる四方から魔力による砲撃を受けるみたい。
私とあいちゃんは顔を見合わせ、同じ結論に至った。
―――――この子だけでも!
私達は、一葉君の体に覆いかぶさり、砲撃から守ろうとした。
周りでは、その砲撃から私達を守ろうとマリアさん達が立ちふさがる。
「全員!魔力障壁ぃい!」
「「「守護方陣!」」」「「「イージス!」」」
「はぁぁぁあああ!」「うおおおお!」
マリアさんの剣に魔力が覆い軋みをあげながらも、その密度が増していき、ソレを振り下ろす。
水原君も刀に魔力を込めて、力が、溜まったタイミングで抜き放つ。
イオリさん、ローズさん。ヴェインさん、ハイネンさん。ジークさん、ヘレネーさんのタッグで、三方を守り、マリアさん一人で最後の一つを一人で迎撃をする。
「くぅううう。おねがい!持って!」
ピシッ!
「ぉあああああ」
三方はニ種類の魔力障壁の二重構造。
マリアさんと水原君は魔力を乗せた斬撃による、迎撃だ。
轟音が鳴り響き、何かが割れる音がしながらも私達のところにはその砲撃が届く事はなかった。
そして、砲撃が止んだ瞬間にマリアさんの剣が砕け散った。
「ハァハァ」
「マリア!大丈夫ですか!」
「ハァハァ。ええ、なんとか」
だが、
「まだだ!」
砲撃の後ろから一葉君を貫いた剣が伸びていた。
「流石に連撃はキツイって!」
水原君の泣き言が聞こえてくるけど、そう言いたくなるのもわかる。だって、ここに来て、戦うと決めてからずっと、連戦続きなんだ。泣き言の一つでも言いたくなる。
だけど、現実は無情だった。
世界がスローモーションになる。
覚悟を決めるときが来たようだ。
「《己を捨て、私欲を捨て、家族を捨て、王となった。民を護るため剣となりて、盾とならん。如何なる不調をも癒やし、絶対正義の名の下に振り下ろされん。来たれ!カレドヴォルフ!》」
傷が癒えない一葉君の口が開き紡がれた。厨二チックな言葉だったが魔法が使える私達には何も言えない。
彼の身体の上に黄金の装飾がされた片刃のロングソードが現れた。するとそれを私達の体の隙間から伸ばした手で掴み取った瞬間に、フッと消えた。
「「え?」」
チン!
ドグォォオオオォオオオオン!
私達の体の隙間を縫うかのように、切り裂かれた剣が飛んでいき、轟音をたてながら落ちていく。
剣が落ちた衝撃であたり一面に土煙が舞って視界が覆われる。
キン! キィィン!ドス!
金属がぶつかる音が聞こえ
カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ
嫌な予感がする。
煙が晴れると、マリアさんに振り下ろされようとしている剣を、水原君が受け止め。
私を後から刺し貫こうとしている槍を、一葉君が受け流して地面に突き刺さっていた。
周りには、スケルトン、異臭を放っている小さいヒト。
地面には怪しく発光する魔法陣が浮かび上がっていた。
ガキィィイイイイン!
「ぬぐぉ!」
またもや巨大な剣が現れ、私達を斬り落とそうとする。
ジークさんがソレを受け止めるが、手に持つ武器がもうボロボロでいつ壊れてもおかしくない。
「シリウス…。いつまで寝ているのですか?お願い……私達ではもう……」
「っく!スケルトンにゴブリンですかっ」
「クソ!矢があれば……」
「ハイネン、魔力は?」
「もう、空っ欠。ヘレネーは?」
「私もです。手持ちは儀礼剣のみ」
「軽鎧を着てるから数回は守れそうだけど……。お前はするなよ」
「それは…。確約できませんね。最悪の場合、私もそうするつもりですので」
ハイネンさんとヘレネーさんが自分の身を盾とする事も厭わないといい、そんことは許せなかった。
だから
「私も戦います!ヘレネーさん手を」
「え?は、はい」
戸惑いながらも右手を差し出してくれたのでその手を取る。
「!?え?ちょっ」
魔力の譲渡。私達の間ではたまにやる事だ。私達は魔力のパスが繋がっているから、直接触れなくても渡せるけど…。
「私からも。ハイネンさんにはこれを」
あいちゃんは、こことは違う空間にいろいろなものをしまうことができる。まぁ、アイテムボックスと呼ばれる事が多いかな。そこから、矢筒を取り出して、渡す。10個ほど。
「はいぃ?」
案の定、ハイネンさんの顔が引き攣っていた。
「これだけあれば足りる?」
「お、おう。たぶん?」
「足りなくなったら言って。複製から」
「あ、ああ。その時はおねがいします?」
「ふふっ。はい!」
吃りながら、呆気に取られているハイネンさんが可笑しかったのだろう。微笑しながら返事をする。
そして、おそらく渡した矢では足りないと判断したのか、矢を複製していく。
ヒャハハ!
ハハハハハハハハ!
ヒャハ! キヒャハハハ!
カタカタカタカタカタカタカタカタ
「マリアさん、下がって!」
「しかし!」
「武器もないのにどうやって戦うんですか!」
「っ!」
水原君は武器を失ったマリアさんを下げようとする。
そこに、スケルトンが襲いかかり
ザン! カラカラカラ
「早く!」
「まだ、これがあります!」
右手で懐から何か紋様が刻まれたナイフを取り出し逆手に。
そして、腰に、刺された派手な装飾がされたロングソードを左手で引き抜き、構える。
「まだ、戦えます。ユウイチ様は前方右側を。私は左側を」
「わかりました……。無理だと判断したときはすぐに、下がってください」
「ふふ。心配してくださるのですね。ユウイチ様こそ下がっていてくださってもよろしいのですよ?」
「ははは…。御冗談を!」
「『おい、小僧。いつまで寝ているつもりだ?お前は何のためにその力を身に着けた?彼女を護るためだろう。なら、さっさと、起きやがれ!』」
シャァアアン!
剣を抜き、鞘をシリウスの体の上に置く。




