出陣るぞ!
目の前でシリウスとマリアがナニカに奇襲を受けた。
私はそれを見ていることしかできなかった。
「!!………。」
チラッと後ろを見る。
後ろには勇者様達が不安そうに見ていた。
(マリア達のところに行きたいところですが………。彼らから離れるわけには……)
「行かねぇのか?」
不意にマサヨシさまから声がかかるが、その言葉を理解するのに少し時間がかかった。
「………ぇ?」
「いや!え?じゃねぇよ。姫さん達んとこ、いかねぇの? 助けに行きたいんだろ? なら、行こうぜ。俺たちが勝手に動くわけにはいかんだろ。ほら、行くぞ」
「え……。いや。え?いいんですか?みなさんも危険になるんですよ?」
「ああ。いい、いい。んなもん何処にいたって変らん。早くしろ。間に合うもんも間に合わなくなるぞ」
「……ありがとうございます」
その言葉を聞いて、私達は降ってきたモノに目を付けられないように。前で、戦うものの邪魔にならないようになるべく静かに、だけれど速く移動する。
「!?」
(シリウス……)
マリアは外傷が見られなかったためおそらく、気を失っているのだろう。
だが、シリウスは背中が大きく切り裂かれていた。
「!………ヒドイ」
後ろからハルキさんの呟きが聞こえる。
「ねぇ。ポーションとか、治癒魔法とかないの?」
リエさんが尋ねてくるが、難しいだろう
「……ここまで、深い傷だと、ポーションでは治せません。治癒魔法でも……。」
(ヘレネーは………。ダメですね。あちらの戦力を割くわけには…)
「っ。止血だけなら…。『〈彼の者を癒し給え〉ヒール!』」
癒しの光ってがシリウスの背中の傷を囲うように広がる。
数秒後、血の流れ出る量は少なくなったが、止まりきらない。
「ッくっ。限界ですか……」
(……シリウス)
「〜っ。」
気を失っていたマリアが身じろぎをした。
「マリア!!」
「……ぁ。ロー……ズ…?」
目をさました!
「良かった!」
「なに…が? !? シリウスは?!」
「落ち着いて下さい!治癒魔法を掛けましたが私の魔法では、これ以上は……」
「そ…んな…」
「ヘレネーなら、あるいは。ですが、先にあれを何とかしなければ」
そう言って、戦場に目を向ける。
「オーガ。しかも変異種ですか…。たしかにイオリ達では厳しいですね」
「はい」
(私が前に出て、ヘレネーを下げる?……ダメですね)
思考がグルグルと周り考えがまとまらない。
「マリア。動けますか?」
「ええ。でも、さっきみたいには難しいですね」
「わかりました。……私が、出ます」
「………。わかったわ。気を付けて行ってらっしゃい」
「了解!」
私はそう言って、右手で握りこぶしを作り、左胸を叩く。
GUAAAAAAAAAAAAAAA!
再びの戦場の変化。
(まだ、変化するのですか?!)
「ヘレネー!下がりなさい!シリウスの治療を。ハイネン!矢は? 魔力は!?」
「! あと…5本!魔力は少し余力あるけど、自分の身体強化を数分位しかもたないよ!?」
「っ!イオリ!ヴェイン!あと、どれくらい持ちますか?」
「こっちも、もうもたねぇよ!」
「ふむ。ちと、キツイな」
「あなた達も下がって!死んだら元も子もないわ!
ハイネン!身体強化!軟らかそうなとこに、射ち込みなさい。私が、前に出ます!ヘレネー!これを」
そう、言って、ヘレネーに青色の小瓶を投げ渡す。
「ローズさん!?これって……」
「なけなしのマナポーションです。使いなさい。それと、重症患者2名追加です」
「わ、わかりました。なんとかしてみます。マナポーションありがとうございます」
変異種が更に変異したモノに目を向け、武器を展開する。
オーガだったモノとジークが大剣を打ち付けあっていたが、膂力の違いが大きく、防ぐので精一杯のようだ。
「ングッ!?」
オーガの力に武器の方が耐えれなくなり砕け、弾き飛ばされた。
「いったい、何が起こっているのかはわかりませんが…。 ここで、勇者様たちを死なす訳にはいかないのです!」
両手に一本ずつ細身の剣を握り、ジークが弾き飛ばされ、追撃を繰り出そうとして動きを止めたところを狙い一気に距離を詰める。
まずは腕!
カキン!
(硬い。なら!)
オーガだったモノの剣が迫っていたが右側に大きく跳躍して避け、振り下ろされた腕の関節に身体の回転を加えた斬りつけを行う。
カギャィィィン
(関節もだめですか……)
ヒュン!ヒュン!
キキン!
「あいっかわらず!どんな目だよ!?」
ハイネンが矢を射るが目に刺さることなく弾かれる
「困りましたね」
ガシッ!と、後ろから迫る大きな腕に捕まる。
「しまっ」
ギリギリ!と徐々に掴まれる力が増していく。
「グッ!この…まま、握りつ…ぶす…つもりですか!」
「クソッ!」
ハイネンは肩の付け根。肘。手首と矢を射るがどれも弾かれた。
「シッ!」
ズバシャ!
「………え?」
気を失いかけていたころ、急に圧迫感がなくなり誰かに抱きかかえられた。
「大丈夫ですか?ローズさん」
――――――――――――――――――
「これは不味そうだな。どうするよ? 勇者様?」
正義がどこか、小馬鹿にしたようにどうするか聞いた。
「え?助けに行きたいけど、リーダーは正義でしょ?
いつ行くのか待ってたんだけど……」
それに気に留めることもなく、正義が指示を出すのではないかと待っていた雄一は、戸惑う。
「は?」
「え?」
沈黙が降り。
「はいはい。とりあえず私達はローズさん達を助けて、ここから脱出する。それでいい?」
見かねた春希おねえさんがまとめる。
「お、おう」「そう、だね」
「じゃあ。セイギ。号令」
「結局、俺かよ!?」
はぁー。と溜め息をつきながら頭の後ろをガシガシとかいていた。
「ここは異世界だ。元の世界と同じように”力”が使えるかわからねぇ。それでも、目の前で、命をかけて戦っている奴らがいる!死ぬかもしれねぇ。降りるなら今からでも遅くねぇ!俺と水原だけで出る。お前ら、それでも行くのか?」
セイギおにいさんが死ぬかもしれない戦いに行く。その覚悟を僕たちの方に向きながら問う。
おねえさん達は顔を見合わせ、
クスクス
「愚問ね」
「だね」
春希おねえさんが答え、理恵おねえさんが同意する。華蓮おねえさんと沙月おねえさん、愛莉栖おねえさんがセイギおにいさんの顔を見つめ頷く。
「っはぁ〜。バカどもが! ガキもいることを忘れるなよ!」
大きな溜め息。
オーガの方に向き直り、手を上に翳す。すると、一瞬、手の平が光を発すると、大きな、少し反りのある、刀が握られてた。服装も学生服から、お坊さんが来ているような法衣を身に纏っている。背中には薙刀、大盾、突起が沢山ついた金棒、鉞、刺股、金槌を背負っていた。
握っていた大刀を振り下ろし、発する。
「目標!眼前の化け物!」
「出陣るぞ!」
勇者達の戦いが今、始まろうとしていた。




