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 とりあえず、武具の受け取りは訓練が修了してからになった。訓練中にいろいろな武器を使ってみて、自分に合った武器種を選ぶらしい。


 ぼくは、訓練に参加はしないで見学をするだけになる。

 おにいさん達が、『子供に武器をもたせるのは早すぎる。戦闘には関わらせないでほしい』と嘆願したためだ。

 ぼくは、別に戦闘に参加してもいいんだけどなぁ。

 子供。というほど純粋でもないし、綺麗な手をしていわけでもない。もうすでに、血で汚れている……


 水原おにいさんと姫様は国王陛下に挨拶をしに行った。

 その間、僕たちは、この部屋――会議室みたいだけど、応接室らしい――に残り、ローズさんが出してくれたお茶を飲んでいた。


「そういえば、ローズさんでしたっけ?」


「はい? どうかなさいましたか?アリス様」


「さっき、剣。出していましたよね? 今持ってないですけど、どこから出したんですか?」


 アリスおねえさんがとうとう、切り込んだ。

 そうだよね、さっきからチラチラと、ローズさんの方を見てたもん。

 でも、どこにも隠していなさそうだった。そもそも、80センチくらいの剣なんて、隠し持てるものじゃないよね?


「ああ。アレですか…。そうですね…。これのことですよね?」

 少し、逡巡して、腰の後ろ辺りに右手をまわし、なにか棒状の物を取り出し見せてくれた。


 なんだろう?棒状の物にしか見えないけど……


「これは、魔力を流すと剣になるんですよ」


 そういって、一瞬、棒が光ったと思ったら、剣が現れた。全長80センチ、幅3センチくらいかな?細身の薄いロングソードだった。


 装飾のない無骨な剣だ。メイドが持つには過ぎた代物だろう。なのに、何故?


「うぉおお!スゲー! なあ、なあ。少し持たせてくれね?」


「周防…あんた」


「まあまあ。はるちゃん。周防君だって、男の子なんだから♪」


「そういう、サッちゃんだって」


 アリスおねえさんが、沙月おねえさんに、もの言いたげに、つぶやいていた。


「ははは。でも、カズハ君はあまり興味がなさそうだね」


「うん?」

 モグモグ、モグモグ。

 ローズさんに出してもらった、クッキーを食べていて、あまり、見ていなかった。

 刃物なんて、見慣れてたからね、いまさらって感じだよね。


「ははは。お腹空いてるのかな~」


 そういって、理恵おねえさんがクッキーを口元に持ってくる。

 あーん。パクッ。モグモグ、モグモグ。


「ふふふ。美味しそうに食べるね~」


 甘いのなんて、あそこにいたときは、ほとんど食べさせてもらえなかったからね。

 美味しいなぁ。みんなと、一緒に食べたかったなぁ

 ダメ!もう、割り切らないと!死んだものは生き返らない。思い出すな!思い出すな!!忘れろ。忘れろ!忘れろ!!


「おいおい。泣くほど、美味しかったのかー?」


「えっ? な…んで」

 どうして…思い出しちゃいけないのに…なんで!?

 会いたいよ……お兄ちゃん…お姉ちゃん。

 グスッ


 ふと、頭が温かいものに包まれた。そして、優しく撫でられる。


「君が今まで、どう過ごしてきて来たのかは知らない。今は聞かないよ?でもね、哀しいときは、我慢しずに泣いていいんだよ」


「そうそう!哀しいときは一杯泣いて。楽しいときは一杯笑ってさ。大丈夫!君には、私達がついてる」


「うわぁ~~うぅ。あぁああぁあぁあ」


 かれんおねえさんに抱きしめられ、頭を撫でられていた。理恵おねえさんや他の皆さんも、近くに来て、大丈夫、大丈夫。と声をかけ続けてくれ、しばらく泣き続けてしまった。

―――――――――――――――――

うわぁああ。また、やっちゃった〜

うぅ。どうしよう。またおねえさんたちにご迷惑を……


「ごめんなさい」


「ん?何謝ってんだ?」


「また、きゅうにないちゃって…。またおねえさんたちに、ごめいわくを」


「謝らくていいよ。大丈夫!迷惑なんて思ってないから! ねっ。」


「はなちゃんの言うとおりだよ。私達は全然そんな事思ってないよ」


「そうだぞ?まぁ、お前に、何があったのかは知らんが…突然、違う世界に来たんだ。しょうがないだろ。ズズ。」

 

 セイギおにいさんが紅茶片手にあっけからんと言い、


「そうそう。気にしない気にしない。ほら。私のとこのクッキーもあげるから、元気だして!」

アリスおねえさんが自分のとこに用意されたクッキーを分けてくれた。


「みなさん……ありがとうございます」

 どうして、こんなにやさしくしてくれるの?今日会ったばかりなのに……


 それと、どうしてぼくは沙月おねえさんの膝の上にいるのだろう?頭を撫でられるのは気持ちいいけど…


 コツッ。コツッ。コツッ。カツッ。カツッ。カツッ。


 ビクッ!!


「うわっ!ビックリしたー どうしたの?」


 沙月おねえさんが急にビクついたぼくに驚いた。


「だれか、くる。ふたり」


「うーん?水原君達じゃない?そろそろ、帰って来てもおかしくないんじゃない?」


「そう、ですね。春希さんの言うとおり、殿下達でしょう」

(にしても、よく気づきましたね。人数まで言い当てるなんて……。なにか、特殊な訓練でも受けてきたのでしょうか?)


 コンコン


 ノック音がした後にドアが開き姫様とユウイチおにいさんが入って来た。ユウイチおにいさんは気疲れしたのか、ぐったりしていた。


「あ゛あ゛あ゛。疲れたぁあ!」


ドスンと椅子に座りだらーんとだらけていた。


「ちょっと!子供が見てるんだからあまりみっともない事しないでよ!」


「んあ?ああ。ごめん。綾小路さん。って、目赤いよ?大丈夫?セイギにいじめられでもした?」


「オイこら!」


「ちがうよ!これは!その…」


 言葉に詰まっていると


「それより、どうだった?国王陛下は」

 と正義おにいさんが話題を変える。


「どうって言われてもなぁ。重たそうな服来たおじさん?」


「へ〜。ね、ね、ね。どんな事話したの?」


「天王寺さん。緊張しっぱなしの状況で話の内容なんて覚えてると思う?」


「緊張しっぱなしだったんだ」


「ふふ。そうですね。手と足が一緒にに出るくらいには。陛下も宰相も笑いを堪えていましたよ。若干、声も震えていましたし」


 その時の、ユウイチおにいさんの事を思い出したのか笑みを溢しながら、国王陛下と宰相のいつもと違う様子だったと語る。


「水原ぁ。緊張しすぎじゃね?」


「いやいやいや。国王だよ!?無理だって!小市民の俺には荷が重いって!!」


 少し、暗くなっていたこの部屋の雰囲気が、ユウイチおにいさんとひめさまが入って来てから、一気に明るくなった。


 しばらく、歓談して


「さて、少し休憩もできましたし、そろそろ移動しましょうか」


 とひめさまから声がかかった。


「移動ですか?」


「はい。皆様には、私の邸でお過ごししていただきますので、今から、案内しますね」


「ひめさまのおやしきですか?」


「はい。そうですよ」

「それと、今日をもって私は王位継承権を放棄しました。ですので、もう"お姫様"ではなくなりました」


……………………はい?

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