ウソだよね
「職業無し!?」
「そ…んな…」
(ああ、この感じ。たぶん、ありえないことなんだろうな…)
「姫様。無職ってそんなに悪いことなの?」
姫様達の反応を見ていたアリスおねえさんが、聞いていた。
日本で8才で職についてるなんてことはない。それでも、職を明記するなら、『学生』という事になるんだろうけど…
この世界での職とは少し違うみたい。
「そ、そうですね……。なんと、言いましょうか。無職というのは、その人に、適するものがないということです…。 つまり…ですね。職で回っているこの世界で、無職というのは、そのまんま無能の烙印を押されます なので、もし、それが、他の人達に知られてしまうと……」
「にごさなくていい。 しられたら、さいご。むのうは、このくににはいらない。いつ、ころされてもおかしくない。ってことでしょう?」
「な!? そうなのかっ!?」
ぼくの想像でしかないけど、思っていたことを告げたら、周防おにいさんが、姫様に問い詰めていた。
「落ち着いてください! たしかに、この世界で無職の人はいつ殺されてもおかしくありません! ですが、そんな事は私がやらせません! 私達が、必ず守ります!それは、この世界に呼んでしまった私達に責任があります!なので、落ち着いてください!」
「それ。ウソだよね?」
「え?アリス様?なにを…」
アリスおねえさんの突然の否定にひめさまは言葉に詰まる。
「姫様達が呼んだっていうの。嘘だよね」
「なんで……?」
「いや。だって、おかしいじゃん。 もし、私達を呼んだっていうならさ、その場でステータスプレートで確認するよね?でも、それはなくて、違う部屋に案内してさ。お茶振る舞って。たぶん、憶測だったんじゃない?私達の誰かが勇者だって。 それで、私達だけで話している時に、ステータスプレートを用意して今。それを確認した。 ねぇ。なんで、姫様達に責任があるの? それにもし、責任があるなら、姫様に。じゃなくて、自分達で魔王?を倒すことのできないこの世界の人たち全員じゃない?」
「どうして…」
「だから、言ったじゃないですか」
ローズさんの「忠告しましたよね?」と呆れた声をひめさまにかける。
「ローズ……。そう、ですね…。わかりました。お話します。今回の皆さまを召喚してしまった経緯について。 先程も話した通りこの世界では、周期的に魔王が現れます。復活するまでの期間はマチマチですが。 そして、魔王が復活する前に、魔物や魔獣の活動が活発になります。 そして、少し前に、魔物や魔獣の被害状況を確認したところ、昨年から徐々に被害が増えていました。 それが、一部の地域だけなら氾濫の前兆なんですが、複数場所。しかも、地域もバラバラだったんです。これを魔王復活と見定め、過去の文献を漁りました。すると、魔王が、復活する前に勇者が現れるとあったんです。先程の地下室は勇者を召喚するための召喚陣がある部屋だったのですが、いかんせん。前回召喚の儀式をした時から1000年経ってまして…。 あの部屋は物置きと化していたのです。なので、その、片付けを騎士たちの手を借りて行っていたのですが、仮置していた物の場所が悪かったのか、儀式を行っていないのにも関わらず召喚陣が反応してしまいまして……。近くにいた騎士たちの魔力を根こそぎ持っていって、皆さんが召喚されて来てしまったのです」
「それって、完っ璧に事故だよね」
「はい。ですが、この世界に呼んでしまったのは事実ですので」
「そこまで、気負わなくてもいいんじゃない? 事故だったんだよね?なら仕方がないことでしょ」
理恵おねえさんがあっけからんと言い放った。
「しかしっ」
「気にすんなって。たしかに、俺たちは召喚された。だが。んなもん、どうでもいい」
正義おにいさんは責任が誰だろうとどうでもいいと吐き捨てる。
「な!?ど『それより!』」
「これからのことだ!俺たちは、帰れるのか?」
「それは…はい。魔王を倒せば、異世界へ続く扉が現れるそうです」
「ならいい。姫さん、俺たちは魔王を討伐する。だから、こいつをその間預かっておいてほしい」
親指をたててぼくに向けながら、姫様にお願いをしていた。
「わかりました。おまかせください」
ぼくは無職で、しかもまだ子供で戦う術を持っていない。
ぼくだけ戦えない。おにいさん達と一緒にいたい。だけど、それはかなわない。割り切らないといけない。それでも、悔しいな。いっつもそうだ。あの時だってぼくは、フィーアおねえちゃんに手を引かれ逃げる事しかできなかった。みんな、戦っていたのに……
「騎士達の人たちは大丈夫なの?魔力を根こそぎ持ってかれたって、聞いただけでも、結構大変なことだと思いますけど…」
アノ部屋で倒れていた騎士たちだろう。物語の世界だと、魔力切れっていうのかな?
倒れていた騎士達が無事なのか気になった春希おねえさんがひめさまに聞く。
「ええ。大丈夫です。あのあと、医療班に運んでもらい、先程、通常業務に戻ったそうです」
「え?そんなに早く回復するものなの?」
「彼らが特殊すぎるんですよ!普通、魔力切れを起こしたらしばらくは動けない筈なのです。なのに…異常なんですよ。ありえません」
ひめさまのアノ人達はおかしい。異常な人達だという言葉になにも返せなかった。
「ああ、いいか?」
「マサヨシさま?ええ、どうぞ」
「俺らは戦う術を知らない。だから、俺らに稽古をつけてくれ」
「……わかりました。みなさまの職にあった者に稽古を付けるように伝えておきます。それと、武具の方も今から、受け取りに行きましょうか」
「武具?え?今から?」
「ええ、そうですよ?沙月様。みなさんも、どうして、驚いているのですか?」
「いや。だって、そういうのはある程度戦えるようになってから、自分で用意するものだと思ってたから」
うん。そうだよね。だってさ、今まで、武器なんて持ったこと無いのに、いきなり使え!って言われて、持たされても、使えないし、管理もできないよね。
「カレンさん…。さすがにそんな事できませんよ! 皆さんには生きて、無事に元の世界に戻って頂きたいのです!そのためなら、私は協力を惜しみません!」
「まぁ、武器を持つのはもう少し、待ってほしいかな~。そもそも、今まで持ったことないし、私達に合った武器もわからないのに渡されてもね〜。使えないんじゃ意味ないよね」
沙月おねえさんも武器をすぐにもらうのは反対のようだ。




