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納得した!

 メサイアベルテ学園は喧騒に包まれていた。 


 高等部一学年が、スタンピードに巻き込まれたと伝令があったからだ。


「腕に自信のある者は名乗り出なさい! 生徒達の救出に向かいます!」


 シャイルの宣言が、騒がしかった職員室が静まり返った。


「ま、待って下さい、学園長!!」


「そ、そうです! 我々だけで救出に向かうというのですか!?」


 数人がシャイルに食って掛かる。


「事は、一刻を争います! 問答をしている暇はありません! 残りたい者は残りなさい。 他の生徒達を抑えていなさい! 碌に実戦も積んでない箱入りなのだから、うろちょろされたら迷惑だわ! それに…余計な被害を出したくないの」


「…俺は行く」


「ジン…」


「姉さんもいるしな。 それに、嫌な予感がする」


「あ~、俺…いえ、私も行きましょうか。 一応、戦術教師なので。 戦力はあったほうがいいでしょう?」


「ワイナリー。 ええ! あなた達が付いてきてくれるなら心強いわ! 他にはいないかしら?!」


 スッと手が上がった。


「ホノカ?」


「怪我人の治療する人も必要でしょう? 私も行くわ」


「ええ。お願い。 他は? もういないかしら!?」


「本当に行かれるのですか? これは、冒険者ギルドと騎士団の領分でしょう? たった、これだけの人数で…」


「ベルデナンス、それでもよ。 生徒達は守る。 何が何でも…ね。それが、教師であって、大人の役割でしょう?」


「では、「あ、貴方は駄目よ! 残って頂戴!」はい?」


「そりゃ、そうでしょう? 学園のトップ二人が戦地に赴くのは、まずいわ。 だから、貴方は、ここを守ってね」


「は~。 わかりました。 では、学園長含め4人で向うということで良いですね? 他の職員は、ここにいる生徒達に気取られないよう心がけて下さい。 とは言っても、あまり意味は無いかもしれませんが…。 先走りそうな生徒がいれば…殴り飛ばしてでも止めなさい!」


「「「了解!!!!」」」


 バタバタと忙しなく行動を始める。 ジンは、一度、男子寄宿寮の自室に戻り、床板を剥がして、床下に隠してあったアタッシュケースを取り出す。


「これを使うのも随分と久しぶりだ…」


 アタッシュケースの中は、スポンジとそれに包まれるように収まっている剣の柄。 かつて、ジンが使用していた武器だ。 魔力を流すと、錆びついて、黒ずんだ大剣がジンの手に握られた。


「やっぱり、重いな」


 ジンは、もう一つ、アタッシュケースに入っていた瓶を取り出す。 中には、丸薬がギッシリ入っていた。

 ”魔薬” 魔石を砕き、粉状にしたものを薬草の粉末等と混ぜ、練り込んで丸薬にしたものだ。 効果は一時的に、魔力を得て、魔法が使えるようになる。


「あまり、使いたくないが…仕方ないか」


 ジンは、瓶をポケットに放り込み、大剣を柄だけの状態に戻し、腰にカラビナでぶら下げる。


「では、行きましょうか。 ジンは、私の後ろへ。 ホノカとワイナリーは単独で良いわね?」


「ええ」


「大丈夫よ」


 準備が終わり、シャイルの元に行くと、飛行用法器をそれぞれ持っていた。 ジンは、魔法をほとんど使えないため、操縦することは出来ない。


 軽く地面を蹴ると、それぞれが乗った法器は上昇していき、深藍の森に向けて飛んでいった。


―――――――――――――――――――――――

 一方、深藍の森では、治癒魔法や回復魔法を使える者たちが怪我人の治療を行い、他の人達は、拠点づくりと、直ぐに場所を離れられる用に必要最低限の荷物を纏めていた。 そして、7組のメンバーは、一葉、ベリー、トアを除いてリンの張った結界の外に出て、偵察を行っていた。 ついでに出てきた魔獣や魔物を倒しつつ、食用に出来る獣を狩っていた。


 偵察から戻ると、狩って来た獣を解体し調理が得意な生徒に渡しに行く。


「外はどう?」


 リンがタイミングを見計らって、アクセルに聞く。


「妙な感覚だな。 なんか、怯えてるような、慌ててる用な感じ」


「魔物や魔獣、獣が怯えるような? この森にそんなの…まあ、居るか。 でも、そういう感じでもないのでしょう?」


「ああ。 すまん。 俺もよくわかんねぇ」


「うんうん。 ありがとうね。 今は、少し休んで。 あ、向こうの方に、湖から水を引っ張って来て、溜めて、焼いた石と火魔法を放り込んでおいた簡易的な風呂があるから、良かったら入って」


「お! 風呂か、良いな! じゃ、入ってくるわ」


「あ、あ~、カズハも連れて行って上げてくれる? あの子も、大分、血を浴びてるし、そろそろ休ませたい」


「あいよ」


 アクセルは返事をして、一葉を探す。


(お、いたいた。って、まだ治療中か…。 少し待つか)


 一葉を見つけ、声を掛けようと近づこうとすると、ベリーとトアの治療を手伝っていた。

 治癒魔法や回復魔法は、稀に痛みを伴う事がある。そうなると、患者は、暴れまわる事だろう。 そして、回復中に動くと、変なふうに怪我が治療され、最悪の場合、一生、おかしな体の形で生活することになる。

 だから、回復魔法や治癒魔法を使う時は、患者を動かない用に固定する必要がある。 

 だが、この場に、体を固定する物はない。 だから、人力で行うしか無く、一葉とトアが担当仕手いるのもそれだ。


 問題無く治療は終わったみたいだ。

 

「カズハ。 そろそろ休めってよ」


「え?」


「たしかにね。 もう、そろそろ一葉君は休んだほうが良いかな?」


「うん、うん。 結構頑張ってたからね。 行ってきなよ。 私達も、この人の治療が終われば、おしまいだからね」


「うん。 わかった! じゃあ、放すね?」


 一葉は、恐る恐る手を放し、患者の様子を窺う。 特に、問題なさそうだったため、そのまま、アクセルについて行き、簡易的なお風呂場に来た。 ため池の周りに仕切りと扉を作って、脱衣所と風呂場を区切り、更にその周りを切りそろえた木材を突き刺して、中が見えないように囲った。 5組の装備科の人達が、物凄いスピードで周りの木を伐採し木材へと加工して組み立てたらしい。


 服を脱ぎ、畳もうとした所で、気付いた。 服に自分のじゃない血がべっとりと付いていた。


「うわぁ…」


「ああ~、まぁ、洗って落ちるかわからんが、とりあえず、洗うもんは、そっちの籠に入れな」


 アクセルに言われて、一応、加護の中に服を入れておく。 扉を開けて、中に入ると、湯気で、視界が白く濁った。


「おっ! ようやく来たのか。 先入ってるぞ〜」


 シャガルをため池、もとい湯船に浸かって、首だけこちらに向けた。


「おう! コイツを拾いにな」


 ぽんぽんと一葉の頭に、手を置く。


「ま、とりあえず、血を落とさんとな。 こっち来い」

 

 ため池とは、別に、瓶がいくつも置いてあり、そこにも、お湯が張られていた。

 そこから、小さめの桶で掬い、頭からか掛けられる。 


 今度は、違う場所に連れて行かれると、石鹸とタオルを渡され、それで身体を洗う。


「「ふぃ~」」


 湯船に浸かると二人揃って、声が出た。


「お疲れ様」


 先に入っていたガイルが声をかけてくる。


「お兄さん達もお疲れ様。 みんな無事で良かったよ」


「ははは! それはお互い様だよ! カズハ君も特に怪我は、してないみたいだし、良かったよ。 いくら、ベリーさんと一緒に後方で行動してもらっているとはいえ、魔物がどこで現れるか分からないからね。 ちょっと、心配だったんだ」



 労いあっていると、結構湯船に浸かっていたみたいで、頭がふわふわと浮遊感を感じてきたため、上がることにする。


 少し、足元が覚束ないまま歩いていると、なんだかいい匂いが漂って来た。 匂いに釣られてそちらの方に足が向く。


 調理場と思しき場所にたどり着いた。 そこには、男女入り乱れて、慌ただしく調理をしていた。 その動きには無駄が無く、それぞれが動いているのにも関わらず、ぶつかることもなく、着実に調理の終わった物が盛り付けられていく。


「ふわぁ〜。 凄いっ」


 彼らの動きに目を輝かせていると、急に持ち上げられた。


「ふわぁっ!?」


「こらこら、邪魔をするんじゃないよ。 行くよ」


 ガイルが一葉を抱き上げて、そのまま移動を始めた。


 どうやら、先に上がった一葉の姿が見えず、迷子になっているのだはないかと探し回ったそうだ。

 

 一葉がガイルに抱っこされて来た時、アクセル達は、安堵したように大きく息を吐いていた。


 相変わらず、7組だけ席が別れていたけど、一葉は、この時、ようやく理由がわかった。


 7組の前に置かれた料理の量が物凄い事になっている。 ひぃ、ふぅみぃ…大皿が40皿もある。 他の席はその半分も無いくらいだろう。


 イノシシの一頭焼き、山のように盛られたパンやサラダ。 それでも、まだまだ運ばれてくる。 持って来たのは、これまた大皿に積まれた薄くスライスされた肉の山。他の生徒達の席には、ここの半分くらいの量が盛られたお皿がここよりも少ない枚数で並べられていた。 というより、一つの山のように盛られた皿一つ一つが一人分とされているみたいで、一人当たり山が四皿とスープが丼ぶり?になみなみに入っている。


 正直、見ているだけで、お腹がいっぱいになってくる。


「あ、ごめん。 君、取皿を一つ貰ってもいい?」


 リンが、運んできてくれた女子生徒にお願いをした。


「え? ええ、分かりました」


 女子生徒は、不思議そうにしながらも返事をして、取皿を一つ持って来た。

 リンは、持って来てもらった取皿に一葉が食べれそうな量の料理をなるべく、バランスよく取り分けて、一葉の前に置く。


「ありがとう、リン先生!」

 

 リンは、一葉の頭を撫でて自分の場所に戻って行った。


 他の生徒達も、もう料理に手を付けているし、食べようかな!


「いただきま「イジメですか?」す?」


 取皿を持って来てくれた女子生徒が眦を上げてリンの元に詰め寄っていた?


 あえ? なんでぇ?

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