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くしゃい

「ここは子供の遊び場じゃないぜ〜?」


 そう言って酔っぱらい型絡んできた。 手には、木のジョッキを持って一気に呷る。


「ぷはぁー。 ぅん? ほぉ~?」


 ラナやベリー、女性陣を舐め回すように見ていき、ニヤつく男性に嫌悪感を感じる。

 


「まだまだ、未熟だが…。 いい素材してるじゃねぇか。 こっち来て、酌してくれよ」


 とんでもない事を言い出した。


「待てよ、オッサン」


 見かねたアクセルが男性を睨みながら制止する。


「んだよ小僧。 なんか文句あんのか!? ああ!?」


「俺達は、これから飯食って行かないといけねぇとこがあんだよ。 酔っ払いの相手なんかしてらんねぇんだよ」


「ああ? じゃあ、てめぇらだけで行けよ。 女は置いてけ」


 ウザい。 臭い。


 一葉は、眠気が吹き飛び、鼻を摘まむ。


「くしゃい…」


 ボソッと言った言葉がやけにはっきりと周りの人の耳に届いた。


「ああ!? んだと、クソガキィ! ガキはお家に帰ってママのおっぱいでも飲んでろ!」


 男は、赤い顔をさらに朱くして、捲し立てる。


「…ママってなに?」


「………は?」


 一葉は聞いたことのない単語に首を傾げた。 男は、豆鉄砲でも食らったかのように呆けた顔をしている。


「はあ? ママってのは、あれだ、君を産んだ人か…育ててくれてる人でだなぁ…」


 産む…? ああ! 博士(ドク)のことか! じゃあ、おっぱいを飲む? ってなに?


「ふぅ~ん。 じゃあ、おっぱいを飲むってのは? どういう意味?」


『ブフゥゥ! ケホッ。ゴホッゴホッ!』


 周りの席の聞き耳立てていた人が口に含んでいた物を吹き出して、咽ていた。


「はあぁあ!? んなもん自分で考えろ!」


「分かんないから聞いてるんだよ? 大人なら、()()の知らない事は教えてよ」


「い、いやぁ…それはだな…」


「はいはい、邪魔よ」


「グペッ!」


「「「ええ〜!?」」」


 女性店員が酔っ払いの男を蹴り飛ばして、場所を開けた。


「はい。 お待ち遠様。 日替わり定食でございます」


 数人いた店員が入れ代わりで料理を持って来た。 メニューは、パン、サラダ、スープ、煮込みステーキだった。 


「ありがと」


「どうぞ、ごゆっくり」


 リンが礼を言うと、店員は頭を下げて行った。

 取皿に少量づつ各料理を取り分けて、一葉の前に置く。


 煮込みステーキの芳醇な香りが鼻腔をくすぐる。 ステーキは、ナイフで切り分けるまでもなくフォークだけで、切ることが出来た。


「いやっ、ちょっと待てぇい!」


「(モグモグ…ゴクンッ)ん?」


「『ん?』じゃねぇよ!? 今の見て、なにも思わんのか!?」


 アクセルが、喚き出した。


「アクセル。 ここ、食堂。 静かにして」


「いやいやいや。 リンちゃん。 酔っぱらいとはいえ、人が蹴り飛ばされたんだぞ!? なんか無いのか!?」


 アクセルが、そう問うて来たが、酔っぱらい男が蹴り飛ばされてもなんにも気に留めなかった女性陣と一葉は、「…えっ?」と一瞬、食事の手が止まるだけだった。


「だってさ、自業自得じゃない? 実際、邪魔だったし、ウザかったし、臭いし」


「本当よ。 まず、あの視線が気持ち悪かったわ。 だから、いい気味ね」


 レキとラナがそう言って、ベリーとトアが頷く。 


「あなた達…、何度言えばいいの? 静かにして。 他の人に迷惑のかかることをしないで」


 リンが、ちょっと、威圧を放つと、アクセルは座り、料理に手をつけ始めた。そこからは、無言で食べ続け、食事が終わると、伝票を店員が常駐しているカウンターに持っていく。


「4050ガルマです。 ……ですが、今回はお題はいいです」


「え?」


「先程は、他のお客…、いえ、うちのゴミクズがご迷惑をおかけしたみたいで、申し訳ありませんでした。 つきましては、お客様の代金はそちらに請求しておきます」


「そう、分かった。 ごちそうさま」


「またのお越しをお待ちしております!」


 冒険者ギルドを後にし、これから向う”深藍の森”での試験に向けて、準備の漏れが無いか、最終確認を行う。


「あれ? 僕、武器と戦闘服しか用意してないよ?」


「テントなら俺等の所に来ればいい。 食料は、現地調達。 いるのは調理器具とかになるのか? まぁ、それも俺等が持ってきてるから問題ない。 他にいるものと言えば…なんだ?」


「う~ん…。強いて言えば、虫除けじゃない? あとは、ポーション類」


 必要なものは大半の物はすでに揃っているとアクセルが言った。 あと足りないもは何だと考えていると、ベリーから助け舟が入る。

 そうと決まれば、街にある、薬屋と雑貨屋に向う。

 ポーション類は、薬師(くすし)の資格を持った人が作った、高価なポーションか、見習い薬師の劣化品が売っている。 薬師が作った方は、品質が安定していて、効果が高い。 つくり手によっては、初級ポーションでも、中級に届きうる。 対して、見習い薬師が作った方は、品質が安定していなくて初級のみ。最低でも止血は出来る品質までの物を、効果に応じて、薬師の作った物より安く売っている。

 今回の目当てのポーションは中級以上のポーションを一人一つづつ。 後は、雑貨屋に置いてる劣化ポーションをいくつかと、虫除け。 だが、薬屋には中級以上のポーションが3つしか無く、雑貨屋にもポーションの在庫が無くなっていた。 虫除けは、大量にあったが…。


「ポーション、無さすぎじゃね!?」

 

 アクセルが感情を露わにするが、無いものはしょうがない。 このまま、ある分だけ買って、目的地に向かうことにする。 その為、また、馬車に乗り込んだ。


「え…? また、乗るの…?」


 一葉は、涙目になりながら、リンに縋りついた。 


「あはは…」


 スッと、リンから酔い止めの薬を渡され、馬車に乗り込む前に飲んだ。 飲んだが…効果が無く、一葉にとっては地獄の様な時間が始まった。



 



 


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