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乗り付け

 メサイアベルテ学園の校門前に何輌もの馬車が停まっていた。 今日は、年に不定期に開催されるクラス対抗戦。 それぞれののクラスで、生徒の確認が済むと順に出発していく。 そんな中、7組だけ、まだ、馬車に乗り込まない。


「リンちゃん。 本当にカズハ君来るのか?」


「教師をちゃん付けしない! 頭に手を乗せるな、アクセル!」


「おっと。 いや、すまん。 ちょうどいい高さに頭が、あったから」


「フッ!」


「ゴハっ!」


 リンの肘鉄がアクセルの腹に炸裂した。


「うん? あれ?」


「どうしたの、ラナ」


「リン先生? 何か聞こえませんか?」


「え? う~ん…特には」


 ヒュィィィィィィ!


「うん。 何か、近づいて来るね。一応、警戒しておくか…」


 リンは、ヒラヒラしたスカートの中に手を入れて、太ももに装着してあるホルスターから魔導銃を引抜いた。


「っ!? お前ら、警戒しておけ」


 音が上から近づいて来る。 


 ◇ ◆ ◇ ◆


 朝に一葉は、学園に向う準備をしていた。 だけど、途中で重大の事に気づいた。


『クラス対抗戦に必要な物は各自で準備すること

 武器  防具  ポーション類  テント  寝袋  等』


 と、リンから送られてきた手紙に記載されていた。 


 防具…? テントとかは、アクセルが持ってるから用意しなくていいって書いてあったけど、防具ってなに? そんなの持って無いよ!?


「あ、ハナお姉ちゃん。 防具って何?」


「へっ? 防具? 防具って…鎧とか、腕あてとか、脛当て? 後は…ヘルムかな? でもどうして、そんな事を聞くの?」


 一葉は無言で手紙を見せて、指をさす。


「ぁ…。 ええ…、今から用意は無理かな〜。 マリアさんに聞いても多分、一葉君の体型に合う防具は無いと思うよ。 …うん?下の方に防具は任意だからあってもなくてもどっちでもいいみたい。学生服でもいいけど、破れたりした場合自腹で購入しないといけないから、戦闘装束があるならそれでもいいって書いてあるよ」


「戦闘装束かぁ…」


「あ、一葉君いた!」


 愛莉栖が一葉の元に訪ねてきた。 


「はい、これ。 頼まれてたの」


 レバーアクションのライフル。先に剣を装着することが出来る。装填数は7発。 弾薬はリーサルスラッグ弾。 そして、もう一丁。 大型拳銃だ。 対魔物用の拳銃で、弾薬は、愛莉栖特製の炸裂弾。 着弾地点で小規模の爆裂を起こす特殊弾だ。 装填数は12発。 なお、愛莉栖独自の改造がされているらしい。


「ありがとう!アリスお姉ちゃん!」


「どういたしまして。 でも、人に向けてはもちろんのこと、乱戦時も撃っちゃ駄目だよ。 それで? 二人はどうして、慌てているの? もうすぐ、ここを出ないと間に合わないんじゃない?」


「え? もうそんな時間!?」


「あぅ。 どうしよう…」


「いいから、訳を言って?」


 愛莉栖に防具か戦闘装束が無いと伝える。


「どうして今言うの!? 昨日、言ってくれれば、採寸して造ったのに!」


「おいおい、朝から騒がしいな。 なんかあったのか?」


「あ、マサ兄」


「ちょっと聞いてよ! カクカクシカジカで…」


「おう。 分からん! 分からんが怒っとるのは分かったから落ち着け? な?」


 事情を華蓮と愛莉栖から話を聞くと、ため息をついて、一葉に「お前が悪い。 次から気をつけろよ」と言った。


「悩んでいたってしょうが無い。 今ある服を戦闘装束と言い切るしかないだろ」


「ええ…それでいいのかなぁ…」


「仕方ないさ。 とは、言っても、甚平もどきしか持って無いか…」


「あ! なら、待ってて!」


 愛莉栖はそういうと走り去っていった。


「あとの準備は終わってるのか?」


「うん。 武器も今、貰ったし。 学園に行けば、僕の剣もあるから」


「そうか。 昨日も言ったが、怪我しないようにな。 難しいかも知れんが、生きて帰って来い」


「うん!」


 バン!!!!


「「「おぅわ!?」」」


「出来た!!」


「びっくりした…」


 一葉は突然の事で心臓が昂ぶったが直ぐに胸を撫で下ろした。


「あ、ごめん。 でも、はい!コレ」


 愛莉栖の腕に衣服が抱えられていた。 拡げると…


「あいちゃん、これって…袴?」


「うん! そうだよ!」


「防御力ゼロじゃねぇか! ってか、持ってる物と格好が合わなさ過ぎだろ!」


「わぁ!かっこいい…」


「「……」」


「だってさ、二人共」

 愛莉栖はドヤァとやりきった感を出す。

 それでいいのか…と華蓮と正義は思ったが、それを見て喜んでいる一葉を見て何も言え無かった。

 

 一葉は、今着てる服を脱ぎ捨て袴に腕を通す。


「「「おお〜!」」」


「様になってんじゃね」


「ね!」


「うん、うん! かっこいいよ、一葉君!」


(((なんか…七五三の時の子供みたい…)))


「って…ああ! 時間!!」


 一葉は、時計を見ると…普通に出れば遅刻が確定する時刻になっていた。


「…華蓮。 乗せて行ってやれ。 姫さんには、言っておく」


「ははは…。 りょーかい! じゃ、一葉君、外で待ってて」


「うん…」


 屋敷の外で華蓮を待っていると、前庭の噴水が止まり、下に降りていく。 


「は?」


 噴水が無くなり空洞が出来ると、今度はその前後に亀裂が入り、その亀裂を境に横に開く。そして、出来上がった空洞から上空に向かって、巨大な建造物が昇ってきた。


「カタパルト…?」


「一葉く~ん こっち〜!」


 華蓮の声がする方へ視線を向けると、カタパルトの発射地点に細長い物に跨っていた。


「箒? あ、違う。 なんだろ?」



 華蓮に近づいていくと形が分かってきた。


「何コレ…?」


 二輪の様なハンドルとシート。胴体部分は後退翼? 左右斜めに計6枚の翼だ。 華蓮が動作確認をしているのを見る限り、6枚の翼は可変翼のようだ。 


「ヴィマーナって言うらしいよ」


「マハーバーラタ?」


「よく知ってるね。 ルーツはそれなんだと思うよ。 なんたって、過去の勇者の遺物だからね!」


「出た…」


「ははは! まぁ、それを私と、あいちゃんで改修したものなんだけどね。 さっ、乗って」


 華蓮の後ろのシートに跨って華蓮にしがみつく。 


「しっかり掴まっててね、一葉君」


「うん」


「アイちゃん」


「『はいは〜い! 軌道上に障害物無し! エネルギー充填率90%。 規定値に到達。  カタパルトに接続確認。ハナちゃんいつでも良いよ』」


「了解! ヴィマーナ改修型試作1号機 行きます!」


 華蓮がハンドルのスロットルを捻ると胴体に搭載された動力炉がうねりを上げる。 一瞬のノックバックの後、カタパルトによって上空に打ち出された。


「グェッ!」


 打ち出されると同時に6枚の翼が展開して、胴体に取り付けてある二基の推進器を解放した。 開放された二基の推進器は圧縮されたエネルギーを噴出させ加速し、ヴィマーナは高度を上げていく。 十分にまで高度まで上昇すると、華蓮はさらにスロットルを捻り、煽ると、6枚の翼が機体の対してほぼ直角に近い状態まで開いた。 それぞれの翼が推進器となっており、全ての推進器が作動するとさらに加速し、超加速を見せた。 そんな中、華蓮は一葉に声をかけた。


「一葉く~ん! 大丈夫〜? 一応、物理保護の結界で操縦席を覆っているから風は感じないようになってるから、普通に話せるよ〜」


「なんとか…」


「なら、良かった! じゃ、急がないといけないからスピード上げるね!」


 最初のカタパルト射出の際の体にかかる負荷が思いの外強く、驚いたが、この体にかかる圧は一葉にとっては忘れ去りたい記憶ではあるが、懐かしくもあった。


 一葉は、下に目を向けると、なんだかいつもと違う気がした。


「馬車、多い?」


「馬車? ああ、あれじゃない? 学園の生徒が乗ってるんじゃないかな。 学園のある方角から馬車の列が伸びてるし。 多分だけど、馬車で目的地まで行くんじゃないかな」


「かもしれないね〜。 それより、ハナお姉ちゃん? ものすっごいスピードでかっ飛ばしてるけど、着陸大丈夫?」


「……なんとかなるでしょ。 あ、もう着くからしっかり、掴まっててね?」


 城の尖塔よりも高い高度で飛行していたヴィマーナは学園上空でほぼ、直角に近い角度で高度を下げて行く。  華蓮は、スロットルを戻した。展開していた翼は、完全に閉じた。 重力と自重、飛行時の慣性によって、徐々に落下スピードが上がっていった。


「ハナお姉ちゃん…? ブレーキは?」


「無いよ!」


「は!?」


 高度を落としていき地面が近づいて来て一気に機首を上げる。スロットルを全開放すると、閉じていた翼が開き、推進器が全噴射する。 徐々に落下スピードが落ちていって、機首を戻すと、ゆっくり着陸していった。


(ははは…。 コブラ機動で落下速度を落として着陸って……タイミングをミスったら地面にでっかい()()が出来てたよね…)


 一葉は、そう思うと、血の気が引くとともに、無事に着陸できた事で胸を撫で下ろす。


「とうちゃ~っく! あら?」


 華蓮は、着陸したことを確認して一葉に伝えると、剣や銃をこちらに向けている人達が視界に入った。 視線を彼らか逸らさず、操縦席の側に仕込んであった、ライフル型の杖をそっと、引抜いた。


「みんな、武器下ろして」


 一際小柄な女性が、武器を構えた人達の前に出てきて、武器。下ろすように指示を出す。

 両手を上げながら、ヴィマーナに近づいてきた。


「あ、リンお姉ちゃん」


「ああ! 学園の先生? 道理で見たことあると思ってたんだよね。 じゃ、警戒しなくていいか」


 華蓮は取り出した杖をヴィマーナに仕舞う。


「おはようございます。 勇者様と一緒に召喚された方とお見受けしますが、よろしいでしょうか?」


「はい。 お久しぶりです。 以前、お会いしたことがありましたよね? 私は華蓮。 カレン タチバナです。 うちの子を送りに来ました」


「これは、ご丁寧に。 私は、リンです。 あいにくと、名乗る家名はございませんので、リンとお呼びください」


「分かりました! では、リン先生とお呼びさせてもらいますね。 よっと」


 華蓮がヴィマーナから飛び降り、リンの前に行く。 一葉も続こうとするが、足場になりそうな場所が離れていた。 諦めて、シートの上に立ち、飛び降りた。


「危ねえ!」


「「!!」」


 アクセルの叫び声を聞き、リンは華蓮から視線を外すと、華蓮の後ろにあるヴィマーナから飛び降りて服が飛び出ている翼に引っかかって、態勢崩して落ちていく一葉が見えた。

 咄嗟に身体強化を使い、華蓮の横を駆け抜ける。


「はぅあ!」


「おっと…。 大丈夫、カズハ」


 一葉をなんとか、抱きとめ、怪我が無いか心配する。


「だ、大丈夫。 ありがと、リンお姉ちゃん」


「なら、良かった。 それと、先生と呼びなさい」


 華蓮も直ぐに駆け寄って来て、リンに何度も頭を下げて礼を言う。 そして、危ない事をした一葉の頬を左右から引っ張り、叱責をした 


「こんな、うちの子ですが、よろしくお願いします」

 

 再度華蓮はリンに頭を下げて、一葉の事をお願いした。


「はい。 お任せください。 できる限りの事はさせていただきます」


 二人は握手を交わし、一葉に目を向ける。 


「じゃ、頑張ってね一葉君。 怪我は…しないにこしたことは無いけど、無事に帰って来てね」


「うん。 気をつける。 行って来ます」


 華蓮はヴィマーナを駆け上り、シートに跨がるとゆっくり上昇していった。 ある程度の高さまで上昇すると、一気に加速して飛び去って行く。


「さてと…。 みんな! 馬車に乗り込んで! 少し時間押してるから急ぐよ!」


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