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簡易魔力タンク?

「ここは……。 マリアお姉ちゃんの屋敷?」

 

 懐かしくも見慣れた天井。

 

 一葉が昏睡状態になってから、早くも、5日が過ぎていた。


「あら? お目覚めのようね」


 横から声が聞こえた。


「シアお姉ちゃん?」

 

「ええ。 ここに担ぎ込まれた時は何事かと思ったわ。 随分と無茶なことをしてるみたいね」


 ふふふ、と笑っていた。


 でも、無茶って? 特にそんな事した覚えは…


「あら〜。 自覚なしなのね…」


 シアは、がっくり肩を落とした。


「なんか、ごめんなさい」


「まぁ、いいわ。 体は? なんとも無い?」


「うん。 今までより、1番しっくりきてる」


「……え?」


 この子、マジか!? みたいな顔で見るの辞めてくんない?


「食欲は?」


 食欲? う~ん…無いかな〜


「無いよ?」


「そう。 なら、これだけでも飲んでなさい」


 シアが、大きめのコップに水差しから飲み物を入れると、手渡してくる。


 コップに口をつけて飲んでいた所に、急にドアが勢いよく開け放たれた。


「一葉君!?」


「ブフゥゥー!」


 突然の事で吹き出した。


「ゲッホ…ゴホゴホッ…。 は、ハナお姉ちゃん!?」


「よかったよ〜」


 一葉を見るなり、涙をこぼし、抱きついた。


「うわぁん、ほんっどに、よかっだ〜。 もう、目がざめないかと、思ったよ〜」


「もう、大げさだな〜」


「大袈裟じゃないよ! 5日! 5日も眠りっぱなしだったんだよ!?」


「…え!?」


「本当に心配したんだから!」


―――――――――――――


 華蓮とシアに連れられて談話室に向かうとマリア達が、お茶を飲んでいた。


「カズハ君!? 目が覚めたのね!」


 マリアにぎゅ~っと抱きしめられた。


「マリアお姉ちゃん、苦しいよ…」


「あ、ごめんなさい! つい」


「マリア…。 ただでさえ、馬鹿力なんですから気をつけてくださいよ。 ”つい”で余裕に人を殺せるんですから」


「さすがに、そこらへんの加減はできますからね!?」


 ローズの呆れた声にツッコミを入れた。


「コホン! ま、無事に目が覚めてよかったです。 ただ…気分が悪くなったり、異変を感じたら直ぐに言ってくださいね」


「うん。 ありがと、マリアお姉ちゃん。 実は、ちょっとまだ眠い」


「あら。 なら、そこのソファに横になって」


 マリアの指差す方に三人は座れそうなソファが置いてあった。


「大丈夫?」


 愛莉酢(アリス)がソファに横になった一葉の近くに寄り、優しく頭を撫でる。


「うん。 ありがと。 ふわぁ…」


 そのまま、また寝てしまった。



 その様子を見ていたシアは、思案しながら、マリアに聞いた。


「ねぇ、マリア」


「はい?」


「クズ魔石はあるかしら」


「クズ魔石ですか? ええ、大量にありますよ」


「いくつか、もらってもいいかしら」


「いいですよ。 ローズ」


「はい、持って来ますね」


「お願い」


 マリアの側に控えていたローズが倉庫に仕舞ってあるクズ魔石を取りに行った。


 クズ魔石とは、魔石のうちの一種だ。 下級の魔物や、魔獣が稀に体内に持っている魔石の出来損ないだ。 なお、魔石の一種ではあるが、魔石に比べると小さく脆い。 その為単体では売り物にならない。 売れるにしても、キログラムいくらという量り売りだ。


「持って来ましたよ」


 ローズがパンパンになった皮袋を持って来た。


「ありがとう」


「それは?」


 一葉を心配下に見ていた華蓮と理恵がローズの持って来た皮袋が気になったみたいだ。


「クズ魔石ですよ。 皆さんに集めて貰ったやつですね」


「使い捨ての魔石と思ってくれていいわ。 ちょうどいいわ。 ちょっと、手伝いなさい」


 マリアとシアが答えて、華蓮達を手招きする。

 シアに呼ばれた、華蓮、理恵、春希、愛莉酢は、魔石を手渡された。


「え、え~っと」


 いきなり、クズ魔石を手渡された5人は戸惑っていた。


「それに魔力を籠めなさい」


「はぁ」


 生返事をしながら、言われた通りにクズ魔石に魔力を籠めていく。

 魔力を籠めて、シアに渡すと「はい」と次のクズ魔石を手渡される。


「え?」


「まだまだあるから、頑張ってね」


「「「「「……え?」」」」」


 5人共、手元にあるクズ魔石と皮袋に入っているクズ魔石を見比べる。

 そして、次から次へと積まれていくパンパンに入った皮袋に顔を引き攣らせる。


 全てに魔力を籠めめ終えた5人は、机に突っ伏して脱力していた。


「お疲れ様。 助かったわ〜」


「それ、何に使うんです?」


 愛莉酢が、用途が気になりシアに聞いた。


「これ? 簡易型の魔力タンクよ。 他にも、護身用にも使えるわね。 どれ…」


 シアは、魔力がたっぷり籠められたクズ魔石を床に叩きつけた。 すると、とてつもない爆裂音と閃光を放った。


「〜〜〜〜っ!? シアさん!? 部屋の中でやらないでください!! 火事になったらどうするんですか!?」


「悪かったわよ。 ってあなた達、大丈夫?」


 華蓮達、5人は目の前で放たれた閃光と爆裂音で目と耳をやられて悶絶していた。


 時間経過と共に快復する為、そのままにして、シアはクズ魔石に小さな穴を開けて、紐を通していく。 そうして、出来上がったネックレスを寝ている一葉の首にかけると、早速、効果が現れた。

 魔石が一つ砕けたのだ。

 

 普通の魔石と違い再利用出来ない為、砕けてしまうが、魔石と同じ事が出来る。 魔力が貯められ、魔法の触媒として使えるのだ。 魔法の触媒として使う場合は、普通の魔石も一回きりしか使えない。クズ魔石を触媒として使った魔法は、どうしても籠められた魔力が少ない為、魔法の効果としては魔石を使用した魔法より効果が少ない。 それと、砕けやすい性質を持っている為、先程みたいに床に叩きつけることによって中に籠められた魔力が一気に解放され、爆裂音と閃光を放つ。 その為、護身用として持ち歩く者もいる。


「ぅん…。ん? あれ? また寝てたんだ」

 

 一葉が目を覚ました。 でも、まだ少し眠そうだ。


「あれ? これは…ネックレス?」


「そうよ。 一つ一つたっぷりと魔力が籠めてあるわ。 だから、全部割れたら直ぐに、新しい物に変えなさい。 コレが、新しい物ね」


 手渡された皮袋に、たくさんのネックレスが入っていた。


「それと、こっちも」


 またも、皮袋を渡され、こっちは、ネックレスに使われている石がパンパンに入っていた。


「穴が空いてるでしょう? そこに紐を通せばネックレスになるわ。 紐を短くすれば、ブレスレットにもできるわね。 単体でも、効果があるから、そういうアクセサリーをつけれない場所に行く場合は、ポケットにでも忍ばせておきなさい」


 シアは、使い方と注意することを説明していく。


 途中、一葉がものは試しと、魔石を一つ手にとって、叩きつけようとして、慌てて、華蓮達が止めに入るというトラブルがあったが、無事に説明は終わった。

 それからというものの、魔石が割れることはあっても、一葉は、急に眠るということはなかった。


 魔石を割れる瞬間をシアは見逃さなかった。 本当に一瞬のことだったが、結晶が魔石を覆ったのだ。 これは、魔剣が何かを取り込む時に起きる現象だ。


「やっぱり、魔力を供給すればいいのね。 でも、何故カズハの命に危険性のある『星蝕鉱』を取り込んだのかしら…」 

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