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封印処置

 学園に侵入者がいる。 それも、一葉が狙われているかもしれない。 そんな、知らせを受けても、やれることと言えば、一葉に護衛を付ける事、もし、単独で行動している時は、助けを呼び、逃げる事だと、念を押されながら歩き続ける。


 歩き続けながらも、周りを警戒していたけど、特には不審な視線すら、感じない。


「ジン。 ここまででいいよ。 ありがとね」


「おう」


 女子寄宿寮に付き、リンはジンにお礼を言う。


「入って」


「うん」


 中に入ると、男子寄宿寮とは違い、フローラルな香りがする。

 リンは一葉に手洗い場の場所を教え、食堂に向う。


「ラナ! いるー?」


「は~い」


 キッチンの方から返事が聞こえた。 しばらくすると、フライパンとフライ返しを持って出てきた。


「どうしたんです? リン先生」


「悪いんだけど、私のご飯は部屋まで持ってきてくれる? ちょっと、作業しないといけないからね」


「いいですよ。 出来たら、レキに、持って行かせますね」


「お願い」


 食堂から出ると、一葉が手洗い場から戻ってきていた。


「向かいの右側の部屋が私の部屋だから、入って待っててもらっていい?」


「うん」

 

 一葉は、リンが、指した部屋に入る。


 酒瓶が数本立ててあるけど、散らかっているという感じではない。

 丸テーブルの前に座りリンを待つ。

 

 それにしても、本がいっぱい…!


 本棚にズラッと、本が並んでいる。 そのうちの、一冊に目が止まる。


「ん? これだけ、書かれてる文字が違う…」


 本を手に取り、開くと見たことのない無い文字がぎっしりと書かれていた。


「お待たせ」


 リンが戻って来た。


「何か、面白い本でもあった?」


 一葉が本を読んでる本を横から見る


「ううん。 見たことのない文字だったから」


「ああ、これね。 精霊文字よ。 これは、精霊魔法について書かれてるの。 今度、教えて上げる。 さてと、始めようか。 魔剣、励起させて」


「うん」


 右腕に意識をすると、腕全体がエメラルドブルーの結晶に包まれる。 

 結晶が割れると、右手には大振りの大剣を持っていた。


「ん。 じゃあ、そこのテーブルに置いて」

 

 リンに言われた通りにテーブルの上に置く。

 

 リンは、杖を取り出すと、魔剣が動かないように手で抑える。

 杖の先が光だし、空中に文字を描いていく。 すると、魔剣が僅かに震えだした。


「!?」


 次の瞬間、魔剣が結晶に包まれ、空中の文字も飲み込む。


「危なっ! はぁ…、やっぱり駄目か。 じゃあ、もう戻して良いよ」


「もう、いいの?」


「うん。 付与出来るなら、付与したほうが面倒が無いからね。 でも、無理そうだから、別の手段を取るよ」


 一葉は、魔剣を篭手に戻す。


 リンは、部屋の隅にある引き出しをゴソゴソと漁ていた。


「あれ~、おかしいな…。 確かこの辺に、入ってたと思うんだけど…。 あ、あったあった」


 引き出しから、いくつもの石が連なったチェーンを取り出してきた。 ソレを一葉の右腕の篭手の上から巻き付けてリングの金具で留める。


「これで、しばらくは良いよ」


「これはなに?」


「魔力を吸収する魔導具だよ。 そうそう、壊れるもんでもないけど、もし、壊れたら教えてね」


「わかった。 って、あれ? アイテムボックスは使っても大丈夫?」


「それは、大丈夫だと思うよ。 実際に使ってみて、例の刀を出して」


「うん」


 一葉は、箱を開けるイメージで、篭手に触れようと近づける。

 

「あ。 良かった~! 使える!」


 刀を取り出すことが出来た。

 

 あとは、刀に組み付ける剣を取り出していく。


 まずは、土台となる剣。『第一封剣』。 刀身の長さは、”身喰いの魔剣”と同じ長さ、幅は少し狭めの両刃剣。 

 刀を納めると、剣の柄がリカッソの役割を持つ。

『第二封剣』『第三封剣』。 元の刀の鍔から剣先までの長さの片刃の剣身。 柄は、剣身の下部にある窪みにある。 組み付けると、柄の部分がリカッソの所に来て、リカッソを握る際に邪魔にならない様に、剣身の方に移動する様になっている。

 第一封剣に、第二封剣、第三封剣を挟み込む様に組み付ける。 刃の向きは同じで、向かい合わせになるようにする。


「…何本あるの?」

 

「ん〜と、あと、4本?」


「多いね!? というより、持てるの? 結構な重量じゃない?」


「持てるよ〜。 じゃなきゃ、組み付けようとしないって」


「そう?」

(もう、テーブルの脚が床に沈みこんできてるけど…)


 テーブルが木製のため、剣の重量に耐えれなくなってきている。 特に脚が、軋み出している。


『第四封剣』『第五封剣』も同様に第一封剣に挟み込む様に組み付ける剣だ。 柄は無く、剣身下部に、指を差し入れる穴のが空いている。

 

「え…?」

 

 リンが柄のない剣に驚く。


「柄は無いよ。投擲用だもん」

 

「そっちの、え、じゃ無い。 いや、それもそうなんだけどっ!」


『第六封剣』『第七封剣』は、ショートソードだ、刀の鍔に柄を刺す様に組み付ける。 このショートソードでリカッソ部分は隠されてしまった。


「これで、全部組み付いたよ」


「これが…。大きいね。 コレに魔紋を入れるんだよね?」

(思ってた以上に大きい。 結構大変かも。 それ以前に、私、持てるかな?)


 リンは、顔を少し引きつらせながら、本棚から一冊の本を持って来て、開いてテーブルの空いているスペースに置く。

 本は、魔紋について書かれた本だった。

 剣が全て組み付いた状態で、効果が発動する様に、何度も調整しながら、特殊な塗料で下書きを描いていく。

 剣身の片面が描き終わると、裏面に下書きを書くのだが…。

 リンは、柄を握って、持ち上げようとするが、手がぷるぷる震えて、1ミリも浮かない。


 コンコンッ


 誰か来たみたいだ。


「ふぅ…ふぅ…。 き、休憩にしよう。 晩御飯だと思う。 ちょっと、ドアを開けてきてくれる?」


「うん」


 一葉は、小走りで、ドアまで行き、すぐに開ける。

 ドアを開けた先では、レキがリンの食事の乗った盆を持って、立っていた。


「ご飯持ってきたよ、リンせんせ。 カズハ君のもあるよ~」


「ありがと」


「ありがとう、レキ。 もうちょっと、待ってて。 今、予備のテーブル出すから」


 リンは折りたたみ式のテーブルを本棚の隙間から引きずり出してきた。 組み立てられたテーブルの上に、料理を並べていき、盆はテーブルの脚に立てかけられる。

 小皿に少量ずつ取り分けられた物が一葉の分だ。


 レキは、料理をテーブルに並べると、食堂に戻って行った。


 男子寄宿寮の食事は、全体的に茶色が多かったけど、ここの食事は、色とりどりで、味付けも薄く作られていた。


(こっちのご飯の方がいいな~。 なんか、男子寮の方は美味しんだけど、味が濃いんだよね)


 おかわりをすることも無く、食事が終わって、一休みしてから、作業を開始する事になった。

 料理と一緒に持ってきてくれたお茶はそのままで、他の食器類はお盆に重ねて積んで、リンが食堂に運んで行った。 その間に、一葉は、リンが持ち上げたれなかった剣をひっくり返す。



「さて、再開しようか。 あ、ひっくり返してくれたんだね。 ありがと。 流石、男の子。 力持ちだね!」


 リンに褒められ、照れる。


「本当、よく、持てたね…」


 リンは、遠い目をしながら、作業を進める。


 下書きが終わると、組み付いていた剣を一本一本取り出し、それぞれの裏面にも、その剣の同じ下書きの線を描いていく。


 全部の剣に書き終わると、今度は、下書きに沿って、杖で魔力を流しながらなぞっていく。 すると、下書きの線がなぞっていったところから消えて行く。


「線が…!」


「特殊なインクでね。 ちょっと、調整は難しいけど、魔力を当てることによって、魔力の通り路を造ることが出来るの。 魔紋っていうのは、そうやって、魔力の通り路で、図形や文様を描いて、魔法を発動するんだよ。 魔法陣も魔紋のうちの一つだしね」


「そうなんだ。 でもインクが消えるのはなんで?」


「厳密に言うと消えては無いんだけどね。 ただ、魔力で焼き付けているから、目で見えなくなっただけだよ」

 

「焼き付けて? 熱を加えてるの?」


「う~ん。 ちょっと、説明が難しいな。 熱は無いよ? でも、そうだね。 付与魔法って物もや人に魔法陣を描くんだけどね、目で見えないでしょ? しかも、あれって一回発動すると、その効果と一緒に魔法陣も消えるんだけど、このインクを使った所に付与魔法を使うと、描いた魔法陣が効果を発動しても、消えないの。 目で見えなくなる理由はね、魔力と親和性が高いから、かな」

 

 それから、リンにいろいろな魔法の事を教えてもらいながら、作業を見守った。 

 魔紋は、全ての封剣が組み付いたいる状態でしか、発動しない。 封剣それぞれの魔紋が重なり合う事によって、魔法を発動するように構成されているからだ。効果は『封印』『固定化』の2つだ。 1つ目は、刀の力を封印する。 2つ目は、全ての封剣が組み付いた状態を固定維持するためのものだ。


 付与魔法を使用しながらのため、小休憩を挟みつつのため、時間が、かかってしまった。 出来上がった頃には、もう、夜も深まっており、起きているのは、一葉とリンだけだ。



「ぅん…ん〜」


 リンが両手を上げて、体を伸ばしている。 


 

「ふぁ~。 終わったのぉ、リンお姉ちゃん…」


「終わったよ。 夜も遅い、お風呂入って寝ようか」


「ぅん。 先入って、いいよぅ」


 欠伸を堪えながら言うと、リンに脇の下を掴まれる。


「いいから、行くよ」


「…え?」


 そのまま、リンに抱えられて、抵抗虚しく風呂場に強制連行されていく。


 いや、待ってよ! 僕、男だよ!? リンお姉ちゃんも女性なんだから、いろいろとマズイってぇ!

 

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