表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
95/193

敵は誰か


 球体型の無人機(ドローン)を操作していた部隊とその後方にいた本隊。地獄壺跡地に来て初戦でぶつかったその部隊は、何というか酷く呆気なく北條に壊滅させられた。

 彼らの中には連携と言うものがなく、バラバラのチームが寄せ集めで動いているようなものだった。各学のリーダーが下につくことを嫌っていたため、縦の指示系統が明確にされておらず、襲撃されたら滅茶苦茶な指示が飛び交い、簡単に壊滅させることが出来たのだ。

 そして、今はミズキの指示に従い、地獄壺跡地のあちこちを駆け回っている最中だった。


「ポイントF設置完了。後は何処だ?」

「オーケー。残り3箇所頑張ってね‼」

「了解……」


 馬車馬の如く扱き使って来るミズキにげんなりとした表情を作る北條。耳にした通信端末からは笑い声が響いていた。こちらの心情など理解しているとばかりに。

 部隊を蹴散らし、戻って来た北條に休む暇などなかった。当然のように周囲の警戒に加えて感知センサーの設置をやれと口にしたミズキを見て正気かと思った。どう考えても1人でやる量ではなかったからだ。


「なぁ、人手を雇ってなかったのか? これ、1人でやったら時間が掛かりすぎるぞ」

「アタシがそんなこと考えなかったと思ってる? 当然雇ったわ」

「じゃあ何で呼ばないんだよ」

「雇った1人が裏切ってた。他の奴が裏切ってない何て保証はないからね。アタシ、信用できない人は傍に置かないの」


 北條の問いかけにミズキが答える。

 ガルドによって自分の雇った人物が裏切ったと思っているミズキは他にも雇った者達も裏切っているのではと考えていた。

 しかし、それはミズキの勘違いだ。実際に裏切った者達などいないのである。

 洞窟で細工をした者は最初からガルドの陣営にいた者であり、他の者達もガルドには協力していない。

 ミズキは雇った者達に他に誰を雇ったのかを話していない。それは情報の漏洩を防ぐためでもある。互いに身を隠し、極力連絡を取らずにいた。そのおかげもあってミズキが誰を雇ったのかを完全に把握している者はいなかった。

 ガルドも1人自分の手を入れるのが限界で、それ以上を望むことは出来なかったのである。


 だが、1人が裏切れば、他も裏切っているのでは。そう考えてしまうものだ。胸に残った不安を完全に消すことは出来ない。

 だからこそ、ミズキは他の協力者に連絡を取らなかった。


「それでも、これは時間が掛かる」

「分かってる。だから今アナタに回収して貰った球体型の無人機を直してる」


 しかし、北條の言葉も尤もだった。

 たった1人でやれることなどたかが知れている。いくら早くても瞬間移動が出来る訳ではない。ミズキも護衛は常にそばにいて欲しいと思っているのだ。

 北條もそれならと一応納得する。だが、これだけは言っておきたかった。


「5分毎に直ぐに連絡くれよ。来なかったら俺は何かあったと思って引き返すからな」

「はいはい」


 戦場では何が起こるか分からない。

 ミズキも戦いには不慣れのようだった。それが心配だった。面と向き合って名乗り合ってから戦う何てことはしない。不意打ち、騙し合い上等。それが戦いというものだ。

 ガルドの協力者達のように特殊迷彩で身を隠す者もいるのだ。北條にはルスヴンがいるが、ミズキにはいない。だからこそ、気を付けて欲しかった。


「本当に気を付けてくれよ。ガルドって人に襲われるかもしれないんだから」


 目下一番気を付けなければいけないのではと思っている者の名前を上げる。一度奇襲をしようとして逆に罠に嵌められた形になったのだ。

 生きていると分かれば今度こそ殺しに来るかもしれない。そう考える北條だが、ミズキはそれを否定する。


「それについては本気で気を付けてる。アイツに辛酸を舐めさせられたのは一度じゃないしね」

「そうか。それならいい。それじゃ、また5分後に」


 ミズキの声のトーンが僅かに下がる。再び恨みが募ったらしい。

 暴走することがないようにと祈り、北條は通信を切ろうとする。すると、ミズキからも忠告が飛んできた。


「アナタも気を付けてよ。気を付けるのはガルドだけじゃない。ここにはカモダの連中もいるんだからね」

「あぁ、気を付ける」


 そう口にして通信端末を切り、懐に仕舞いこむ。

 これまで奥地であるここには人影は少なかった。出遅れた北條達がここまで早く来れたのは、一気に押し寄せた遺物狙いの集団が入口付近でかち合わせたからである。

 数が少ないと言うデメリットはメリットにもなる。その集団が互いに睨みを利かせ、争っている内に北條達はここに辿り着くことが出来た。


宿主(マスター)。また2つほど来ておるぞ』

「そうか。よし。案内頼む‼」


 だが、時間が経つごとにここに辿り着く者達は多くなる。

 再びルスヴンの感知能力内に入り込んだ部隊を蹴散らすべく、北條はルスヴンが指示を出した場所へと向かう。


『また、指揮官狙いか?』

「あぁ、それが一番被害が少ないからな。ダメか?」

『いいや。戦術としては間違っておらんからな。それに、どうしてもと言う時は余がやるつもりだしからな』


 北條の判断にルスヴンは特に反対もしなかった。失敗しても自分が何とかしてやる。そんなつもりで。


「なら、俺はルスヴンの手を煩わせないようにしないとな」

『ほう。出来るのか? 失敗すれば、あの小娘だけでなくお主の身も危なくなるぞ?』


 追い詰めるかのような口調。

 頭を刈り取るという戦術に間違いはない。しかし、動機が異なる。

 北條は被害を最小限に抑えるために指揮官だけを狙うつもりだった。負傷者を多く出すのも良い。それで割に合わないと思ってくれれば儲けものだ。


 ジャックの時のように非戦闘員が相手ではない。しっかりと武装し、殺しの経験もある者達も多い。指揮官だけを狙っても戦意が衰えない者もいるかもしれない。

 この戦場でそんな動機で相手を見逃すのは甘いとも言える。だが、北條は簡単に彼らを殺すという選択を取りたくなかった。

 北條一馬はレジスタンスである。そのレジスタンスの敵は吸血鬼だ。街の住民の安全を脅かす相手ならば兎も角、ここにいる者達は仕事で来ているのだ。決して人を殺すことが目的ではない。


「うん。そうだな」


 ルスヴンの言葉に頷く。

 これは我儘なのだろう。しかし、簡単に曲げることは出来ない。

 瓦礫の上から相手を捕捉する。まだ相手の感知外にいるおかげで、まだ相手には気付かれてはいない。


「死ぬ気で頑張るよ。いつも通りだ」


 そう言ってヘルメットの奥で笑顔を作り、北條は瓦礫の上から跳躍する。

 右でも左でもなく上から爆撃機のように襲い掛かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ