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相性

 相性は誰にでもある。

 それは吸血鬼にも存在する。

 どんな生命体でも吸血鬼に不意打ちを食らわせることは難しい。吸血鬼の頂点に立つルスヴンならば猶更だ。


 では、何故——先程北條が銃弾を受けてしまう前、ルスヴンは警告も出来なかったのか。

 答えは簡単だ。

 先程北條を撃ったの男達ではなく、三木が操作する無人機(ドローン)だったからだ。

 生物ではなく、殺気を放つこともない無機物からの不意打ちはルスヴンも感知出来なかった。


 吸血鬼の不意を付ける。

 過去、レジスタンスが吸血鬼と戦っていた時にも同じように不意を付けたことはあった。だが、()()()()()()()

 無人機ならば必ず不意打ちは成功した。

 しかし、成功するのは一撃のみなのだ。不意を付けた後、続けて放たれる二撃目から吸血鬼は対応してくる。

 不意は付けても殺すまではいかない。それが兵器としての無人機の評価だった。


「ま、彼に関してはそれで充分でしょうけどねぇ」


 パソコンの画面に映る北條の姿を見ながら三木は呟いた。





 体に銃弾がめり込むのは何時だって唐突だ。

 それも当然だろう。なんせ相手からすれば隙だらけの相手に銃弾をぶち込んでいるのだ。今から銃弾を撃ちますよと宣言する理由はない。

 そんなことは北條も分かっている。

 だが、ちょっとは優しくしてくれよ。などと膝を撃ち抜かれながら北條は思った。


「ッルスヴン、敵は何処だ?」

『人間は感知出来ん。恐らくはまた無人機だ』

「またってどういう——ッ⁉」


 問いかけの途中で腹に衝撃が奔る。

 また撃たれたと知るのにそう時間はかからなかった。


「ま、た……」

宿主(マスター)⁉ クソが、やはり無人機かッ』


 あのルスヴンが警告すら飛ばせない。

 しかも相手は戦いや狩りに愉悦を覚える者ではなく、淡々と仕事をするタイプ。本気で命の危機を北條は感じ取る。


「ルスヴン、異能を——」

『あぁ、分かっている。早く傷を塞げ。ここから逃げるぞ‼』


 傷を修復して立ち上がり、地面を蹴る。

 先程とは比べ物にならない速力で地下を走った。

 銃弾を氷の壁で弾きながら、北條は口を開く。


「これって、さっきの奴等の仲間なのか?」

『さぁ、どうだろうな。相手が分からん以上何も言えん』

「そりゃごもっとも‼ でも、ルスヴンも存在を感知出来ない何て一体どうなってるんだ?」

『相手が機械だからな。生物ではないあれが動きもせずに待ち伏せされていたら認識しずらいのだ』

「それで警告が出来ないのか」


 絶え間なく撃ち続けられる銃弾にルスヴンが表情を歪める。


『クソ、一度銃弾を撃った無人機が完全に沈黙しておる。こちらを見ている奴はどれだけここに無人機を配置しておったのだ⁉』

「ルスヴン、前の所で倒れていた人以外にここら辺に人間はいないんだよな⁉」

『おらん。ここら一帯凍らせるのか?』

「あぁ、そのつもりだ」

『そうか、その言葉が聞けて余は満足だぞ‼』


 氷の壁を作り出し、銃弾から身を守っている北條だが、ずっとこの状態が続くとなると精神がすり減ってしまう。

 何より速度も遅くなり、いつかは後ろからくる獅子郷に追いつかれるだろう。

 そうなる前に北條は動く。

 ルスヴンの感知範囲ギリギリまでの空間を冷気が包み、床や壁を凍結させる。

 数キロ先にあった無人機も氷に覆われた瞬間にその機能を停止させた。


 銃弾の雨が止まった瞬間に北條は駆け出す。

 無人機が何処に潜んでいるか分からないため、人間がいないと分かる範囲全てを凍らせたが、相手はここを北條が通ると分かってこれだけの準備が出来る人物。

 もたもたしていたら次が来るかもしれないのだ。早くこの一帯から抜け出したかった。

 しかし、その認識すらすぐに甘いと諭される。

 周囲が氷に覆われてから数十秒後。空間が大きく揺れた。


「⁉ これって……」

『宿主、不味いぞ』


 身に覚えがあり過ぎる揺れに北條は冷や汗を流す。


「上の階層を爆発させているのか⁉」


 凍結によって無人機による監視も銃撃も出来なくなった。他に仕込みはあっただろうが、凍らせてしまえば使えなくなる。

 だが、相手にとってはそれすらも予想の範囲内のことだった。

 上の階層に仕掛けられた爆弾によって地下通路を支える柱が破壊され、空間が崩れていく。

 大量の土砂とアスファルトが北條の上に降りかかった。


「凍れぇ‼」


 降りかかる土砂とアスファルトを凍らせる。

 氷柱を作り、凍らせた土砂とアスファルトを支える。


「よ、良かった。生き埋めにならずに済んだ」

『そんなこと言っている場合か‼ 次が来るぞ。早く逃げろ‼』

「え?」


 安堵に息を吐く北條にルスヴンが警告を飛ばす。


『炎が降ってくるぞ‼』


 ジュウゥウウッと氷と水が蒸発する音が北條の耳に届く。その度に凍ったはずの土砂とアスファルトが崩れていく。

 北條は知る由もないことだが、現在北條の上にある施設はゴミ焼却場なのだ。

 800度から1000度、高ければ1200度にもなる焼却炉内にあったものを巻き散らしながら降ってくるせいで、止まったはずの土砂とアスファルトが再び北條に降りかかった。

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