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露呈

 北條が眠りにつくとルスヴンはその上でふわりと漂う。

 カーテンの隙間から差し込む電灯の明かりが北條の顔を照らす。


『お前、余の名前を呼ばなかったな』


 寝ている北條にルスヴンの言葉は届かない。

 鮮血病院で北條の魂が成長したことで互いの思考が筒抜けになることもなくなった。

 だから、今のルスヴンは北條が何を考えているか分からない。


 今まで危険に晒された時はルスヴンに助けを求めていた。なのに、今日は命の危機に陥った時に名前は口にしなかった。

 何を考えていたのか。

 異能がバレることを心配していたのか、それともあの女の方が頼りになると思っていたのか。それも分からない。

 そのことにルスヴンは寂しさを覚える。


『これから、余とお前はどうなるのだろうな』


 離れていくのか、それともずっと一緒にいられるのか。

 一抹の不安が口に出さずとも伝わらないことに苛立ちながら、ルスヴンは一夜中北條の上を漂っていた。





 レジスタンス本部。その指令室で綾部玄道(あべげんどう)石上恭也(いしがみきょうや))が向かい合う。

 綾部はいつも以上に鋭い目つきをして口を開いた。


「もう一度言ってみろ」


 石上が一呼吸置く。

 この言葉を口にした時、何が起こるのかは簡単に把握出来る。

 赤羽が、朝霧が、結城が、加賀の命が危機に晒される。

 最初に見た時は、これまで頼りにしてきた自分自身の目を疑ってしまったし、信じたくはなかった。

 これは確実にレジスタンスに悪い影響を齎すと理解してしまったから。

 だが、見てしまった。ならば、報告はしなければならない。

 石上恭也は綾部玄道を裏切ることは出来ない。


「第21支部所属、北條一馬の中に吸血鬼の存在を確認しました」


 ピクリと綾部の表情が動く。


 何処かで狐が嗤う声が木霊した。

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