第5話 はいはい、テンプレテンプレ
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腹ごしらえを終えた俺達は、ウォーターホースを預けて星天アクアリウムのある建物へと入っていった。
ここにはアクアリウムだけでなく、様々な水に関する実験や、アクアキアの構造、イライザが如何にしてこの都市を作ったかが展示されている。
だが、中でも目玉と言えば、やはり星天アクアリウムだろう。
今俺達は、複数のグループと共に、水の入っていない円形状のプールの底に座っていた。
このプールが、星天アクアリウムの本体だ。
「いよいよなのだわ……!」
「わくわく、どきどき」
『期待が高まるのじゃ……!』
こう言ったアトラクションは人生で初めてだが……結構緊張するな。
と、俺の緊張を察したのか、ミケが俺の手を握って来た。
「大丈夫よ、タナト。ここの水は特殊な水で、中で息することが出来るから。濡れた体は、水の外に出ると一瞬で乾くわ」
そ、そうなのか……《虚空の生け簀》にある水と同じ感じなのか……?
待っていると、まるで天女の羽衣のような衣装を着た女性が、空中を飛ぶように現れた。
『皆様、本日は星天アクアリウムへお越しくださり、誠にありがとうございます。アクアリウムの中は他のお客様もおりますので、遊泳は禁止とさせて頂きます。それでは、これより二〇分間、星空の旅をご堪能ください!』
パチンッ。女性が指を弾く。
「おぼっ……!?」
こ、これっ、水……!? 空のプールを、魔法で一気に満杯にしたのか……!?
「落ち着いて、タナト。目を開けて、ゆっくり息を吸うの」
ミケの声が異様によく聞こえる。
こ、こう、か……?
……あ、息出来る。不思議だ……。
ゆっくり、目を、開ける、と……。
「……ぉ……おおおっ……!?」
なんっじゃこりゃ……。
底なしの暗闇の中、上下左右に散りばめられているのは、宝石を思わせる……無数の星々。
どこからともなく現れる、色鮮やかな魚の群れ。
なるほど、これが星天アクアリウム……今俺達は、宇宙空間で魚達と共に泳いでる……!
「すげ……」
「ホログラムって言うらしいわ。でも、ここまで来ると本物の宇宙だって言われても信じちゃいそうね」
俺の隣でミケが呟く。
確かにな……俺は今、宇宙にいるんだ……。
「ふわふわ、ぷかぷか」
「お姉ちゃん、泳ぐのだわ!」
「んっ」
『こ、こりゃ二人共っ、泳いでは──』
見ると、二人は自由自在に擬似宇宙空間を泳ぐ。
二人の笑顔や、神聖な雰囲気、陰と陽の対極のような髪色で……満天の星々に負けない、女神のような美しさを振り撒いている。
周囲の人達も、星空ではなく二人の美しさに見とれていた。
「ふふふ。楽しそうね、二人共」
「……ああ。そうだな」
イライザの作った晴天アクアリウムはもうない。
だが、その意志を継いで、星天アクアリウムは現存する。
イライザには、感謝してもしきれないな……。
『……ぁっ。お、お客様っ、危険ですので館内で泳ぐのはお止め下さいっ』
今まで惚けていたスタッフの人が、慌てたように二人を止める。
「「あ……ごめんなさーい」」
二人も我に返って、俺達の方へ泳いで来ると、俺の首周りに抱き着いてきた。
「タナトっ、タナトっ! ここすっごい楽しい……!」
「お兄ちゃん、お兄ちゃん! 青空のアクアリウムもいいけど、星空も凄いのだわ!」
「そうかそうか。でも、ちょっと静かにな」
俺の鼓膜が破れる。
「「あーいっ」」
◆◆◆
「いやー、楽しかったなぁ……!」
星天アクアリウムから外に出て、俺達は今暖かいお茶を飲みながら水団子を食べていた。
まさか、ここまでのものだとは思わなかった……満足満足っ。もう帰って寝たい。
「やっぱり何度来てもいいわね、ここは」
「ああ。ミケとイーラのオススメするだけあって、いいアトラクションだった」
これなら二人の力を使えば、《虚空の生け簀》に再現できそうだな。今度頼んでみよ。
『──むっ。全員、気を付けよ。悪意をもった男達が近付いてくる』
え? 悪意?
見ると、ゲスな笑みを浮かべた五人組の男達が俺達の方に近付いてきた。
あぁー……この先の展開、予想つくなぁ……。
「おいおい、可愛い子ちゃんばっかじゃねーか」
「ハーレムで羨ましいねぇ」
「そんな優男じゃなくて、俺達と遊ぼうぜ?」
「俺達楽しい場所知ってんだよ」
「兄ちゃん、その子達置いて失せな。俺達が遊んでやるからよ。ギャハハハハハ!」
はいはい、テンプレテンプレ。
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