第20話 三〇〇〇年、出直して来て
「えぇ……だるい」
「だるいじゃないわよ! 舐めてんの!?」
おい、あちらさん怒ってるぞ。
「エリオラ、どうする?」
「偽物には興味ない」
キッパリした物言いに、ミレイがムッとした顔をした。
「皆さん、お聞きになりましたか? あの小娘は、言うにほざいて私を偽物扱いしました。これを許して良いのでしょうか?」
「「「「「ブーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」」」」」
「……と言うことよ。私は、あなたを許さないことにしたわ」
うわぁ……面倒くさ……。
「ど、どうするのよタナト……!」
「いや、俺に言われても……」
ここはエリオラの判断に任せるしか……。
「……タナト……」
「な、何だ?」
「……今あの子、私のこと小娘って言った……?」
「ああ、言ったな」
「……若者扱い、嬉しい。むふふ」
いや、今のは若者扱いじゃなくて、罵倒だと思うんだが。
「チッ、どこまでもふざけた奴ね。……なら見せてあげるわ。私がイライザの転生体だっていう証拠をね!」
ミレイはその場に浮かび上がり、両腕を大きく広げる。
体中から迸る紫電。
それが、六個の球体となって円を作り、回転する。
「あれは……」
エリオラが、驚いたような顔で呟いた。
「この魔法は、イライザである私が作り出した唯一無二の魔法。圧倒的な魔力量がないと発動しない、暴力の権化」
回転が早まり、六つの紫電が完全な円形になる。
その中央に光が凝縮され、アメジスト色の球体が現れる。
「刮目しなさい。これが、私の名を冠する絶対魔法──《第六紫電・天穿つ雷光》!」
魔法が、発動する。
六つの紫電によって作り出されたアメジスト色の球体が、轟音と共に空へ向けて放たれる。
そして……上空にある雲の全てを吹き飛ばし、天を紫電で覆った。
「……マジ、か……」
「これが、ミレイ様の力なの……?」
これは不味い。マジでヤバい奴を怒らせたかもしれないっ。
「本当はあなたに向けて撃ちたかったのだけど、寛大な私は止めてあげたわ。どう? これめも、私が偽物だって言える?」
言えない、言えるわけがない。こんなの見せられたら……!
「エリオラ、早く謝っちまえっ。ごめんなさいして、ほらっ」
「…………はあぁ〜……」
……え、ため息……?
見ると、エリオラはさっきよりも落胆した顔で、ミレイを見下ろしていた。
「……その魔法は、確かにあのイライザが作った魔法。それは間違いない」
「ふふん、でしょ?」
「でも──弱い」
「……ぇ……?」
エリオラはフワッと浮かび上がると、眼下に広がる民衆を……ミレイを、見下ろす。
「ルーシー、ここにいる皆を守ってね」
『うむ』
ルーシーがエリオラから離れ、宙にいるエリオラを除いて大規模な何かを張った。
「これ、結界魔法よね……? エリオラちゃん、何するつもりなの……?」
『見ていれば分かる』
見てればって……エリオラ、大丈夫なのか……?
宙に浮かぶエリオラを見上げると、口を開いた。
「この魔法は、あの子が私を追いかけ、私を超えようとし、唯一私に致命傷を負わせた魔法」
エリオラが、腕を広げる。
……さっきのミレイと、同じように。
「これは、全てにおいて劣っていたあの子が、私を倒すために編み出した、究極の叡智」
一つ、また一つと、紫電の球が作られる。
だが、一つ一つの紫電の大きさが……桁違いに、デカい……!
「これは、あの子が唯一私に対抗出来る、至高の一撃」
その数、全部で──十三。
「天である私を堕とさんと、数十年の歳月を使ってた作られた……あの子の、全て」
回転、回転、回転。
十三の紫電の中央に──ネプチューン色の、球体が現れる。
「今ここにいる、全ての人間、魔族よ。見るがいい。これが──」
ネプチューン色の球体が、一際大きく輝く。
「《第十三紫電・天堕とす雷光》よ」
瞬間──世界が、白銀に染まった。
「おっ、おおおおっ!?」
「キャーーーーーーーッ!」
め、目が開けられない……!?
『安心せい。結界で衝撃や光を散らしている。見てみるのじゃ』
み、見てみるのじゃって……。
ゆっくり……目を、開ける。と……。
「……な……何じゃこりゃあぁああああああああああああぁぁぁ!?!?!?」
本当に……遥か、上空。
……上空には、ぽっかりと空けられた……穴。
その先は何があるのか分からない。
けど、間違いなく今の一撃で……空間に、穴が、空けられたんだ……。
下にいる人達も、ミレイも、唖然としている。
そうしているうちに、穴は小さくなって行き……キレイさっぱり、消えた。
「ミレイ。あなたがイライザを騙るなんて早すぎる。──三〇〇〇年、出直して来て」
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