第11話 相当のヤリ手なのじゃ
エリオラとミケが言い争ってるのを眺めていると、レニーが俺の方へ歩いて来た。
「ヒヒンッ」
「お? レニー、エリオラに付けてもらったのか。似合ってるぞ」
「ぶるるる……!」
純白の毛並みに黒の馬鎧がよく映えるな。レニーも新しい装備を付けて、嬉しそうだ。
レニーの頭を撫でてると、ミケがこっちに気付いて近寄って来た。
「ちょっとエリオラちゃん……この装備まさか……!?」
「ん。黒天シリーズ、馬バージョン」
『まさか黒天シリーズに、馬用装備があるとは、ウチも驚きじゃった』
……この子達、たかが装備に一々驚き過ぎじゃない? この馬鎧なんて、十個ぐらいあるぞ。
「……ん? あれ、私何か大切なことを忘れてるような……?」
「ああ、あれだろ。グングなんちゃら」
「そ、そうよ! 《神器グングニル》! あ、あんた、こんなもんも釣り上げたの!? というか何で《神器》までこの湖に沈んでるのよ!?」
「いや、厳密に言うと沈んでるんじゃなくて、どこからともなく現れるって感じだ」
一度気になって潜ってみたが、ここは何の変哲もない湖だった。装備やアイテムはおろかゴミも落ちてない。そんな中、何故装備やアイテムが釣れるのか……俺自身にも謎だ。
だけど釣れてしまうものはしょうがない。俺にはいらないが、ミケやエリオラ達が喜んでくれるなら、それでいい。
「……もういいわ。詳しいことは聞かないけど……約束通り、タナトが装備やアイテムを釣れることは誰にも言わないこと。いいわね」
「分かってる分かってる。で、グングなんちゃらは持ってくか?」
「うっ……正直死ぬほど欲しい、けど……これは、私が持ってちゃいけないわ。私自身が世界から目を付けられちゃうもの」
えぇ……せっかくガラクタを片付けるチャンスだと思ったのに……。
流石に湖にポイ捨てはダメだ。生態系を壊す可能性がある。かと言って、こいつを放置するのも面倒だしなぁ……。まあ、おいおい考えていくか。
「仕方ない。俺が預かっておくから、必要な時が来たら言ってくれ」
「一生来ないと思うけど……分かったわ」
それでもミケは、名残惜しそうにグングなんちゃらに目を向ける。ルーシーの言った通り、あれは喉から手が出るほど欲しいものみたいだな……。保管する方法、考えなきゃ。
◆◆◆
その日の夜。俺とエリオラは俺の家に、ミケとレニーは自分の家に帰っていった。
ミケも俺の家に泊まる気満々だったが、そこは拳骨と共にお断りした。うら若き女の子が、ひょいひょい男の家に泊まるなんて言うんじゃありません。
え? エリオラ? いくら見た目年齢が十五歳くらいでも、こいつは少なくとも三〇〇〇歳を超えてるからノーカンで。
「ふふん。同棲の勝利」
『ただ居候させてもらっているだけじゃがな……』
「馬鹿なこと言ってないで、風呂入りなさい」
「あーい」
エリオラはすぽぽーんと服を脱ぐと、風呂場へ走っていった。だから脱ぎ散らかすなとあれほど……まあいいや。
『こらエリオラ! 自分で片付けなさい!』
「いいっていいって」
脱ぎ散らかっている服を纏めて、エリオラの寝室として使っている元両親の部屋に置く。
リビングに戻ると、ルーシーがふよふよと浮いて近付いてきた。
『何から何まですまないのじゃ、タナト。この恩は必ず返すぞ』
「だからいいって。お前達は三〇〇〇年以上頑張って来たんだ。甘えられるなら、甘えちまった方がいいぞ」
『う、うむ……しかし、こうまで至れり尽くせりだと……』
ルーシーは落ち着かないのか、クネクネと動く。本当に、そんなに気にすることないんだが……。
「なら、俺が困った時に助けてくれればいい。今はその時に備えて、英気を養ってくれ」
『……分かったのじゃ。その時は、ウチも全身全霊を掛けて助太刀するぞい』
「頼りにしてる」
ふんすふんすと息巻くルーシー見る。……よく見ると、随分と汚れてるな。
「ルーシー、少し汚れてるから、メンテナンスしてやるよ」
『良いのか!? エリィは細かいことは苦手じゃから、助かるのじゃ!』
ルーシーは俺の手元に落ちてくると、完全に身を預けてきた。そういや、こうして直に触るのは初めてだな。
釣り竿をメンテナンスする道具を横に置き、水で濡らした布でざっと拭く。
『お、ふっ……な、中々良い手付きなのじゃっ……あっ、そこっ……』
はは、気持ち良さそうだな。
今度は柔らかめのブラシを使う。
『ひっ!? ぁ、そこすご……!』
「こことか溜まってるな。どうだ?」
『し、知らなっ……! こんなのっ、あっ……!』
おお、ごっそり汚れが取れるな。
「この奥とか凄いことになってるぞ」
『だ、めっ……! そんな奥っ、擦っちゃ……らっ、めぇーーーーー!』
ふぅ……うん、いい感じに綺麗になったな。
『はぁ……はぁ……よ、汚されたのじゃ……』
「綺麗にしてやったのに何を言う」
『乙女心の問題じゃ!』
え、ええ……お前女だったの……? てかペンダントなのに性別あんのかよ。
最後にツヤ出しで、キメの細かい布で磨いていると、浴室からドタバタと騒がしい音が聞こえて来た。
「何やらイヤらしい気配が……!」
「イヤらしくない、イヤらしくない。てか服を着ろ!」
流石に見た目年齢十五歳の裸はアウトだ!
「むっ、ルーシー磨かれてる……! ズルい……!」
『や、やめておくのじゃエリィ……こやつ、こんな優しそうな顔をして相当のヤリ手なのじゃ……!』
「望むところ。ばっちこい」
「腕を広げるな! 体隠せバカ!」
てか誰がヤリ手だ! 人聞きの悪いこと言うな!
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