美しく咲く花達 第一部〜始まりの物語〜
本作を読んで頂き、誠にありがとうございます。
今回が初投稿となりますので、至らない点が多々ありますが、楽しんで頂けたら幸いです。
第一章~過去の夢~
サラ
「沙羅、お前は強い。父さんよりもな……。お前なら、あいつらを守ってやれる。強く生きろ……私達の沙羅。」
目が覚める。何度同じ夢を見ただろう?あの出来事は、いつまで私を苦しめるのだろう?
オボロ
朧げに覚えている父の姿。いつかは顔さえ忘れている。もう、あれから11年が経った。私はずっと、戦い続けている。
ヒソウ
第二章~悲愴の唄~
春。軽やかに舞う蝶々、華やかに彩る桜、そして―。
「沙羅〜おはよう。」
「よう、沙羅。」
そして二人の声。いつもと同じ。
「なんか暗いな?沙羅。」
「なんでも、ないよ。」
「沙羅、またそうやって抱え込む。もしかして、またあの夢を見たの?」
「うん……。」
「安心しろよ、俺達は絶対、いなくなったりしないから。」
「うん、私達は、三人で戦うって約束したからね。沙羅。」
「……ありがとう。」
サカノボ
時は11年前に遡る。
「ごめんね……沙羅。」
どうして、どうして母さんが謝るの……?
シュウ
「秀、強く生きるんだよ。」
「母さん!」
カレン
「華恋、ずっと一緒にいてやれなくてごめんな……。」
「お父さん?何でそんなことを言うの?」
私達の前に転がった死体……。私達は、一歩もそこから動けず、一寸も目が離せなかった。
モヤ
突如、暗い靄に包まれた。
「愚かなことだ。この私を裏切り下界へ降りるとは……。」
下界?
「……様、裏切り者は始末出来ました。」
「そうか、なら戻るとしよう。」
シバラ
暫くして、視界が開けた。
私達は何も言えなかった。
どこか遠くから歌が聞こえる。
あれは母さんの、子守唄。
涙が頬を伝った。
もう会えないのだと悟った。
第三章~復讐の絆~
あの後のことは、あまり覚えていない。唯一鮮明なのは、
「今日からここで暮らすんだよ。」
そう、シスターらしき人に言われた所からだった。
「ここは教会であり、孤児院でもある。お前達の他にも、沢山子供がいるんだよ。」
シワ
深く皺が刻まれている顔。厳しそうな目……。シスターの印象は、そんなものだった。
「あんた達、いい加減他の子達とも遊びな。ずっと三人で、そんな隅で、いつまでもウジウジしてんじゃないよ。」
「……。」
「全く……子供らしくない子達だね。」
部屋にはいくつか種類があった。二人部屋、三人部屋、四人以上……。
私達三人は同じ部屋だった。
「私達、これからどうやって生きるの?」
華恋が不安げに呟く。
少なくとも、幼児が言う台詞じゃない。
「そんなこと、分かんないよ。」
私はぶっきらぼうに放った。
その日は月もなくて、寒い夜だった。
私達は大人になりつつある。
繰り返し見るあの夢は、私を過去に閉じ込める。
父が、母が、二度と目を覚まさないと悟った時、私は誓った。
奴らに復讐してやる。
二度と同じ過ちを繰り返さないように。
「なあ、二人共。」
秀が、いつにも増して真面目な顔で言った。
「これから俺が言うことを、覚えていて欲しい。」
「うん。」
「何?」
「俺達は、これまでずっと一緒だった。そしてこれからも。でも、この先、それが叶わなくなるかもしれない。俺は、お前達を失いたくない。だから、全力でお前達を守る。だからもし、俺が……。」
「当たり前だよ。秀。そんなこと、言われなくたって、分かってる。」
「沙羅。」
「私だって秀や華恋を守る。」
「わ、私も。そのために今まで、頑張ってきたんだから。」
「華恋。」
「俺は、お前達を信じている。お前達がいてくれて、本当に良かった……。」
ウル
秀の目が潤む。
「お前ら、約束だからな。絶対、絶対だからな。」
「大袈裟だなぁ秀。ね、沙羅。」
「うん。」
桜が舞い散る、私達の道。
永遠に誓う約束を、私は片時も忘れはしなかった。
第四章~本当の力~
日本軍事未来高等学校。
魔術が発達し、魔物の存在が認められた現在。
私達三人は、今年からそこに通うことになった。事の発端は
ササイ
とても些細なことだった。
「お前達、学校に興味はないかい?」
学校?
「そうさ。お前達、両親を殺した奴に復讐するんだろ?なら、鍛えた方が良いと思わないか?」
シスターには、全てを話している。その上で、私達を預かってくれている。言葉は汚いが、良い人だ。
「シスター、どうして学校に行くことと、復讐が関係するのですか?」
「華恋、良い質問だな。今のご時世、強い者が勝つ。知識や訓練は、独学のみだと限界がある。それを教えてくれるっていうんだから、そんな良いとこないだろ?」
「なるほど。シスター、ありがとうございます。この沙羅、頑張ります。」
「俺も。」
「私は……殺しはできません。戦うことは、生き物を殺めるということ。そんなこと……。それに私は、救いたくて術を習ったのです。殺すためではありません。それはシスターも、充分承知のはずです。」
セッショウ
華恋は強く言った。両親を亡くしてから、とにかく殺生を嫌った。華恋は、術士としては立派だが、精神的に弱い所がある。
だが、シスターは冷静に言った。
「救う、ねぇ。なら華恋。お前は、お前の両親を殺した奴を、救いたいのか?」
「え?」
「どうなんだ。」
「それは……。」
「何のために術士になった?奴らを救うためか?」
「違う……違う……。」
「なら、どうするためだ?」
「復讐……。」
華恋がボヤいた。
「復讐とは、殺すことじゃないのかね?」
「……!」
「華恋。お前は、強さを理解していない。」
「強さ……?」
「そう。なにも、傷つけることだけが強さじゃない。大切なものを、弱いものを、守る強さだってある。」
「守る強さ……。」
「お前が強くなるのは、傷つけるためじゃない。守るためだ。自分で守れるように、強くなるんだ。同じ過ちを、繰り返すんじゃないよ……。」
ゆっくり、だがはっきり、力強く放った。
スベ
「華恋。お前は良い子だ。守る術を、学んで来い。」
華恋の心は決まったようだった。
私もそうだ。今までは、復讐のことしか考えていなかった。だけど、守るということの大切さを、学んだ気がした。
第五章~解放の時~
入学式当日のこと。
私達は三人で登校していた。今までは意識していなかったが、私達の容姿は目立つらしい……。
「あの子、すごく可愛いな。」
「え〜俺あっちの子かな?」
「あの人超格好良い!」
……目立つらしい。
「ねぇねぇカーノジョ!俺と付き合っちゃう?」
「……は?」
「そんな睨まないで!俺傷ついちゃうよ?」
「あっそう。」
「え?それだけ?」
シツコ
「おい沙羅、ちゃんと断れよな。ああいう奴は執拗いぞ。」
「ごめんなさいね、沙羅は、貴方みたいな人、嫌いなの。」
「華恋、それは酷いぞー。悪いな、こいつらが。チャラ男にはどうも慣れてなくて……。」
「お前ら全員、よくもこの俺をコケにしやがって……。」
「何で怒るの?」
「あーあ、沙羅全然わかってない。秀のせいだよ。」
「いや、今全員って言ってた。」
「どっちでも良いよ。行こう、華恋、秀。」
「待てよ。この俺が誰か知らない訳ないよなぁ?あの五条家の長男だぞ!」
「知らん。」
「ねぇ秀、知ってる?」
「?金持ちか何かだろ。」
「よくも、よくもこの俺に恥をかかせたな!」
華恋!
「痛!何が起こったんだぁ?」
「はぁ、沙羅に敵うわけないだろ?武術首席だぞ?」
「はぇ?」
「華恋には、指一本触れさせない。」
「イタタタタタタ!」
「ありがとう沙羅!もう行こう?」
「一体何の騒ぎですか?」
黒光りした車から、日光を頭で反射させながら男が出てきた。
「校長〜!こいつらが、俺をボコボコに〜!」
「君は、五条君だね?何て酷いことを。おい貴様ら!どいうつもりだ!……いや、言い訳は聞かん!このワシに殺されたくなければ、即刻ここを立ち去れ!」
「ならその前に私が殺そう。」
「沙羅!駄目だよ。相手は校長よ?」
「おいおい、この私が雑魚の相手等するものか!」
そう言うと、校長は手を叩いた。
すぐさま20人程度の警備員らしき男達が集まった。
「この三人を始末しなさい。」
「はっ!」
そう言うと、校長は黒光りしている車に乗り、どこかへ消えた。
「沙羅だと殺しそうだから、ここは私がやるね。」
「華恋……。」
「大丈夫。守るため、だよ!」
華恋はにっこり笑った。
「こち、ら……Cー……番……マホ……ゼンメ……ツ……ダレ……ウゴ……ナ……。」
「何を言ってるか分からんが、要は魔法で撃退された役立たずということじゃな。もういいわ!」
「ふん。これ程強い奴がいるのか。まぁ、使えるな。」
そう言うと校長は、椅子に座り、パソコンに向かった。
イバラ シラキリ アオノ
「薔薇 華恋……。ん?白霧 沙羅と青野 秀。三人共両親が死んでいる……。偶然か?」
パソコンを操作していく。
「ミツケ、タ。」
「うん?今誰かワシに。」
ゴトッ。
翌日―。
「校長殺されたんだって〜。床に首が転がっ。」
「キャーやめてよう!」
「沙羅?」
「あの子達の言ってること、本当?」
「あ〜沙羅はニュース見ないもんな。そうだよ。」
「でも、他殺の割に、証拠も一切無いんでしょ?」
「そうらしいな。」
「ねぇ秀、もしかしてだけど……。」
「たぶん、俺と同じこと思ってる。アイツらの仕業かもって……。」
「!」
「やっと、会えた。ついに、来た。こんなチャンス。」
「沙羅!」
「え?」
私は気づけば泣いていた。何で……?
秀が私の手を握る。
「果たそう。俺達の復讐を!人でない、強力な力に、怯えて暮らす日は、もうお終いだ。過去から放たれるんだ!」
「うん。絶対に、絶対に果たす。」
待ってて、皆。
「ツイニ……ミツケ、タゾ!……ウラギリモノヲ!」
第六章~頂点の者~
私達はいつだって努力してきた。独学で、武術も魔術も知識も得て、誰よりも強くなるために、努力してきた。
誰にも負けない。
「今から、先日行った実技訓練テストの結果発表を行う!合格者は名前を呼ばれたら返事!不合格者は追加の訓練をすぐさま実行せよ!」
この学校では、主に三つのことを学ぶ。
サンボウ
武術、魔術、そして参謀になるための知識。
私は武術の方が得意だから、今回のテストには自信がある。
「では。白霧!」
「はい!」
やっぱり。
「素晴らしい!最高得点を叩き出すとはな!」
簡単簡単。
「沙羅〜どうだった?」
「華恋!」
私達はそれぞれ、得意科目によって分かれている。科目それぞれカリキュラムがバラバラなため、私達はなかなか会うことができない。だから、昼休みにこうして集まる。
「勿論合格の最高得点!華恋と秀は?」
「私も、魔法学科の実技試験、満点だったよ!」
「すごい!秀は?」
「俺も、十教科中で満点だったよ。」
「さすが秀!」
「やっぱ俺達すげぇわ。」
敵討ちとはいえ、学ぶことは楽しい。こうして三人で笑い合う日が、いつまでも続くと良いな。
「このまま、トップに君臨し続けよう!」
「そうだね。」
「うん!」
あいつらを倒すためなら、私は、どんな努力だって惜しまない!私の一生を賭けて。
第七章~戦意の解~
私は薔薇 華恋。
名前はすごく派手で、よく誤解されるけど、私自身派手じゃない。
沙羅ほど無口じゃないけど、秀ほどフレンドリーじゃない。
怖がりで、臆病で、あの日以来心を閉ざしてしまった私。
そんな私に、秀は言ったの。
「いつまでも泣くなよ。俺だって寂しいし悲しい。だけど、泣いたって、何も変わらない。それは華恋自身がよく分かってるだろ?」
「……。」
「俺がずっとそばにいるから。」
「え?」
この時思わず、秀の方を向いてしまった。
「俺は絶対、お前の前から姿を消さない。だから、もう泣くなよ。」
「……。」
私はすごく嬉しかった。その時の秀は、今までで一番優しかったから。
「それにさ、沙羅が、復讐してやるって暴れてるんだ。あいつを止めれるの、華恋しかいないだろ?だから、もう泣かないで、俺達と一緒に戦おうぜ!」
「……。うん。私、秀のそばにいる!ずっとずっと。」
「お!元気出た?それでいいよ。」
ナ
秀は私を、まるで子供みたいに撫でた。暖かかった……。
(秀は絶対私が守る。秀、貴方は私が死なせない!)
私はもう泣かない。迷わない。
例え誰かを殺すことになっても、秀は私が守る。
「……良い夢を、見た気がする。」
「おい薔薇、授業中に寝るとは良い御身分だな?」
「あ……。」
秀は私が守らなくちゃ。
アンタン
第八章~暗澹の手~
いつも通りの登校だが、世界はいつも通りじゃなかった。
「ニュース、見た?」
「あぁ、沙羅。珍しくお前も見たの?」
「失踪者が増えてるって……。」
「多分アイツらだ。でも、何で一般の、関係ない人を巻き込む?」
「それは、関係あるからだよ。沙羅、秀。」
「どういうこと?」
「失踪した人達皆、魔術師だよ。」
「え?でも、ニュースでは共通点は無いって。」
「違うよ、秀。魔術師は正体を明かさないから、普通の人には分からないの。私だって、魔術師だけが持ってる情報網から得たんだし……。」
「すごい、華恋。」
「ありがとう、沙羅。」
「だとしたら、アイツらの目的は、魔力か……。」
「うん、私もそう思う。魔術師の魔力は、元々悪魔の力だったって言うし……。?ということは……。」
「父さんや母さんを殺した奴らは、悪魔だってこと?」
「そういうことだな、沙羅。悪魔……魔物なら見たことあるけど、悪魔は魔界でも上級の地位にいる。俺達で勝てるかどうか……。」
「諦めないんでしょ、秀。」
「沙羅。」
「そうだよ、秀。大丈夫。あれだけ頑張ったんだから。私達なら、できるよ。」
「あぁ、そうだな。悪い。」
「ううん、怖いのは私だって同じだから。」
「華恋……。」
「でも、これからどうするの?」
「きっと、尻尾を出すさ。今は待とう。下手に動くと危ない。」
「うん。」
時の流れは早い。
もっと強くならなくちゃ。
父さん達のため、秀や華恋、自分のために……!
第九章~漆黒の影~
それは突然だった。
まるで必然だったかのように、それは訪れた。
「沙羅ー!」
「華恋!」
「俺はここだ!」
「秀!良かった、無事ね。」
いつもの風景が、跡形も無かった。崩れた学校、廃れた街。
「アイツら、いきなりここに来たのか!」
「違う。」
「沙羅?」
「いきなりなんかじゃない。きちんと計画してた。狙いは、私達。」
「どういうことだ、沙羅。」
「分からない。だけど、アイツらの存在を知っているのは、私達だけ。それが何を示すか分かる?」
「俺達を最初から狙っていた。そのために、魔力を集めて、準備をしていたって……そんな。」
「……!熱い。」
あちこちから炎が上がっている。狂気に満ちた叫び声も聞こえる。苦しむ声が掻き乱れる中、魔物達の笑い声が響く。
「ここは、まるで地獄だ。」
逃げ惑う人々の群れを掻き分け、魔物達を倒しながら、辿り着いたのは、七つの影―。
「ホウ、ソチラカラ、ムカッテクルノカ。」
「ワレワレヲ、ウラギッタ、イキノコリ!」
「どういうこと?生き残り?」
「ヨウヤク、ソロッタ、ナナツノ……タイザイ……。」
「七つの大罪?!」
「それって確か、悪魔だよな?」
「私知ってるよ、七つの大罪。」
「華恋?」
華恋はゆっくり口を開いた。
第十章~大罪の魔~
七つの大罪―。
「人間を罪に導く感情を指すもの。」
七つの感情ごとに、悪魔の名前がつけられてあるの。
傲慢のルシファー
憤怒のサタン
嫉妬のレヴィアタン
怠惰のベルフェゴール
強欲のマモン
暴食のベルゼブブ
色欲のアスモデウス
この七体の悪魔によって、魔界は構成されているの。
「つまり、どういうこと?」
秀は眉間に皺を寄せる。
「生き残りが私達だとすると、私達は七つの大罪?」
「そういうことになるね、沙羅。でも、私達は普通の人間よ?何で七つの大罪に狙われるの?」
「コロ……ス。」
「え?」
「コロス……コロス……コロス……!」
「ウラギリモノ!」
私は、何が起こったのか分からなかった。
「沙羅ー!」
「沙羅!」
何かを吐いた。血?
「沙羅、おい、大丈夫……じゃねぇな。」
何も、聞こえない。秀が必死に何か言ってる。何だろ?
何気なくお腹に手をやってみる。
あ。
穴だ。貫通したんだ。そっか。
気づいたら、尋常じゃない痛みが襲ってきた。
「イタイ!」
私は、死ぬ?
「許さない……。」
「華恋?」
「許さない……沙羅を……こんな……!」
華恋?
「お前達は、必ず、私が、ぶっ殺す!」
華恋……?
そう言うと華恋は、悪魔の群れに突っ込んで行った。
「華恋!」
「おいやめろ華恋!」
でも、華恋は人が違っていた。とても強かった。あっという間に悪魔たちを倒していった。
そして力尽きたのか、その場に崩れた。
「華恋……!」
「沙羅……ごめん……私の力じゃ、これが限界……。」
華恋はそう言うと私の出血を止めた。
「華恋、それ以上力を使わないで。お願い。」
「沙羅を守れて、良かっ。」
「コウナッタラ……キサマ、ダケデモ!」
「えっ?」
振り返ると、変わり果てた秀がいた。
夢にも見たくなかった。
何度こうならないことを祈っただろう。
「秀……。」
その時私達は、あの日を思い出した。
―俺はお前達を守る―
―お前達を失いたくない―
だから、一緒に―。
その時、私達の周りを、淡い桃色の光が包んだ。
「華恋?」
お腹に違和感を覚えた。
みるみる傷が塞がっていく。
「これは、この力は?」
華恋も戸惑っている。
「魔力が、溢れてくる……。」
そして華恋は立ち上がると、秀に向かって構えた。
「華恋……。」
「秀、ごめんね。」
そして華恋から放たれた光は、秀を包み込む。
「コノ、チカラ、ワレヲ、フウイン……イヤダア!」
秀がその場に倒れ込む。
華恋は走り寄り、秀を抱き締めた。
「秀、秀!」
華恋が秀の名前を呼びながら揺さぶっていると、秀の目がゆっくりと開いた。
「華恋?」
「秀!」
私も華恋もほっとしたと思う。
これで、ようやく終わったんだ。
皆、報われた。
ウズ ホウヨウ
私はまだ傷だった場所が疼くけど、華恋達が幸せそうに抱擁しているのを見て、そんなことは気にならなくなっていた。
「秀、もう二度と、離れないで。これからも一緒に―。」
華恋は、最後まで言うことができなかった……。
トモシビ
第十一章~希望の灯~
「何すんだよ!」
「華恋……?」
「お前ら誰だよ!」
秀の腕の中に、華恋はいなかった。
「おい華恋!目を開けてくれ!俺は、お前に助けて貰ったのに、俺はお前に、何もしてねぇ!」
秀は怒りに満ちていた。
勿論私も。
「どうして……人間が、人までも、俺達の敵なのか……?」
私も秀も絶望していた。
「我々は何も、彼女を殺した訳ではありません。何をそんなに騒いでいるのです?」
「何を言って……。」
「我々は政府公認の組織。そして我々が目指すは魔物への服従!その為には、魔術師の持つ魔力が必要!そしてこいつは、悪魔を倒せる程の魔力を持っている!だから、貴様らに構っている暇は無い!」
「待て!」
秀は必死に追いかけた。でも、追いつけなかった。すぐに取り押さえられ、殴られて……。
華恋とアイツらの姿が見えなくなった。
私は秀の元へ駆け寄った。
「秀?」
「やっと……やっと終わったと、思ったのに……!」
悔しい。
「アイツらには失望した。でも、華恋は生きている。」
オエツ
秀は泣いていた。目も真っ赤に腫らして、嗚咽して。
「なぁ、沙羅。」
「何?」
「華恋を救いに行こうと思う。」
「うん。」
「一緒に、来てくれるか?」
「当たり前でしょ。」
「……ありがとう。」
私達は、いつも三人だった。
それぞれが、生きる希望だった。
それを一つ、失った。
トモシビ
「でも、まだ生きてる。希望の灯は、消えていない。」
私達は、生きる。強く、美しく……。
第十二章~憤怒の裁~
魔界は、七つの大罪という七体の悪魔が統治している。
俺は傲慢のルシファー。
嫉妬のレヴィアタン、強欲のマモン、色欲のアスモデウス、俺達は親友だった。
だが、その関係は、突如終わりを迎える。
「嫉妬と強欲、それと色欲が裏切っただと?このサタンの命無しに下界へ降り、住んでるだと?!」
「左様でございますサタン様……。」
なんだと……あいつらが、何で……。
「裏切り者には、相応しい制裁を下さねばならん!ルシファー、ベルフェゴール、ベルゼブブ。着いてこい。奴らを見つけ次第殺せ!」
まさか、友人を殺すことになるとは……。
見つけるのは容易だった。
タメラ
だが、俺は殺すのを躊躇った。
何故なら、あいつらには、子供がいたのだ。
隠さなければ……。
「おいルシファー、帰るぞ。」
見つからなかった。
このまま、どうか、無事でいて欲しい。
何事も無く、過ぎて欲しい。
だが、悪魔は所詮悪魔。願い等、叶わない。
「残念だよ、ルシファー。お前までも裏切るとはな。」
俺はサタンに殺された。
「安心しろ……安心しろよ、ルシファー。お前が守ったガキ共も、残らずすぐに送ってやる。」
不敵に嗤うサタン。
俺の記憶は、そこで途絶えた……。
第十三章~永久の史~
「沙羅……華恋は無事だろうか。」
「無事だと、良いけど……。」
どんなに辛くても、強くあらねば。
一番楽しいことは、一番悲しいこと。
最高の思い出が終わる時程、悲惨なものはない。
私達の敵は、悪魔から人へと変わった。
敵って何だ。
味方って誰だ。
私達の物語は、まだまだ続く……。
繰り返してはいけない惨劇。
語り継がなければならない歴史。
キセイ
永遠に変わらない祈誓。
この悲劇は、私達の手で終わらせる。
そしてこの物語は、まだ始まったばかり。
しかし、この物語は、私達が予想だにしなかった方向へと進む―。
―To be continud―
ここまで読んで頂き、誠にありがとうございます。
感想等ございましたら、厳しくても構いませんので、是非よろしくお願いします。