金髪ショートピアス4
エクソシスト。
その業務は多岐に及ぶがその依頼内容は極めて狭い。
何故か。
それは結局のところ最終的に相対する障害が依頼内容によって変化しないからである。
ある意味究極の専門職といってもいいのかもしれないが、何度も言うように自身は専門家ではなくただの肩書きとしてのエクソシストとして日々飯を食べているだけの一個人に過ぎない。
そして今回。
何故敵討ちにおける幇助等などという回りくどくも範囲を限定しない契約内容にした、もしくはしてしまったのかについては自身からしても新天地で知らず知らずのうちに浮足立っていたとしか言いようがないわけで――。
「そうか」
そんな何でもない一言で通話を終えては準備が整ったことを簡単に依頼主へと知らせる。
「場所が分かったよ」
そうしていつの間にやら用意されていたコーヒーを差し出されては、景気づけにと一息で飲み干そうとして寸でのところで思いとどまる。
「あちち……」
エクソシストの勘はよく当たるのだ。
「猫舌って……」
どこかそうでなかったほうがよかったと言わんばかりの声が依頼主から上がっているが気にしないことにする。
「はぁ……」
依頼したの失敗したかな……。
そんなどこからともなく引き返せない後悔からか、それとも単なる呆れからか。
何ともいえない表情を形作る依頼主を横目に、美味いなとそのコーヒーの味に感心しつつもマイペースに口をつけていく自分。
「上の戸棚に水筒があるからそっちにも淹れてもらえたりしないかな?」
「はぁ?」
あんまりにも唐突過ぎたのかもしれない。
「明け方にかけて雨らしいし」
「いや……」
「こんなに美味しいコーヒーは久しぶりに――」
「はぁ……。分かった」
最後の一言は盛大なため息でもって掻き消された。
ただ、その渋々ながらもコーヒーを淹れる後ろ姿はどこか嬉しそうで――。
……………………………………………………殺してやる…………
数時間後――。
例え彼女の言葉に嘘はなかったことを改めて目の前にしたとしても。
きっと変わらず彼女の淹れたコーヒーを口にしては美味しいと言葉にしよう。
ただなんとなくそう思った。




