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Introduction


「家賃半年分前払いだ」


 そう口にするも渋い顔をし続ける壮年の女性を前にしては言いたいことも分からないでもない。

 だがそんな相手に対して有効な手立てはこうだ。


「倍払う。以降も六か月分前払いで構わない」


 そうして目の前へと世界で最もわかりやすい形での誠意を掲げて見せる。


 即ち現金の束だ。


「それは――」


「もちろん。契約の途中で部屋を引き払うことになったとしても支払い済みの現金に関しては返還を求めたりはしない。必要なら正式な書面にしてもいい」


「……出所は確かなんだろうね」


「あぁ。これまでの顧客リストを見せてもいい」


 と言っても女性が怪しむのも無理はない。


 こちらの素性がエクソシストなどという一見してそのワード自体は見聞きするものの、それ自体が社会的な地位を保証するものでもなく、どの国や地域であろうとも同時に厄介ごとを招く肩書であることには変わりはないのだから。


「……下」


「下?」


「それから上」


「上?」


「全部借りてくれるならそれでもいいよ」


 女性は交互に指差した後――どこかそう、ぶっきらぼうな面持ちでもってこちらへと告げた。


「そうか……。助かる。喜んで」


 そうしてこちらから手を差し出してはご免だよとあくまでも事務的に返されたバインダー。


 どうやらエクソシストとの握手はお好みではないようで、それから数枚の書面へと目を通しては最後にサインを書き入れる。


 ブランク・コントラクト。


 新天地における、これから自身が名乗っていく予定の名だ。






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