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転生ヒロインのある日の出来事

作者: 八勝暗

私、ヒロインです。


いきなり何言ってんだ、心のお医者さんに行けと、そう思うでしょう。


もし誰かがそう言ったなら、私も同じ事を思います。



乙女ゲーム『 エンジェル・ラバーズ』

主人公マリア・シューは平民ですが稀少な治癒の魔力に目覚め、それにより貴族の通う魔法学校に入学し、四人のイケメンとウッフキャハハする。

端的に言うとそんな感じのゲームです。


私の前世は、そのゲームをやり込んで亡くなったとある小学生でした。


友達は幼稚園の頃から作った事がありませんでした。


良く言えば慎重、悪く言えば酷く消極的な性格の為だったと思います。


死後、この乙女ゲーム『 エンジェル・ラバーズ』の世界に転生し、自分がヒロインだと分かったときは正直嬉しかったです。


えぇ、始めはね。


私が治癒の魔力に目覚めた時、直ぐ様役人が飛んできました。


なんでも魔力を感知されたとか。


そして魔法学校への強制入学が決まり、そのまま学校へ連れていかれました。


この世界では、魔法学校に通えることは、とても名誉な事です。


別れ際、母は喜ばしいような悲しいような複雑な表情を浮かべていました。




入学すると直ぐ様いじめが始まりました。


平民が、礼儀どうとか、こうとか。


私、前世で友達はいませんでしたが、いじめの経験はありませんでした。


気配を消していたというか、単純に影が薄かったからです。


ですが、今は違います。


稀少な治癒持ち、だが平民。


目立ってしまう肩書きを背負っていました。


暫く罵倒、盗難、軽い暴行等々のいじめに耐えていました。


すると、一週間程で私の心に段々と、ひねくれの兆候が見られる様になりました。


前世の乙女ゲームの知識をいかして玉の輿に乗り、学校のいじめっ子を片っ端から断罪してやりたい。


そういう野望が芽生え始めました。


そこで、一番の玉の輿であるこの国の王子のイベントを遂行する事に決めました。




カレンダーを確認し、王子の登校時刻を計算し、寮から学校までの道のりのとある角でスタンバります。


この角で主人公は王子と正面衝突の後、頭を怪我し、王子に保健室まで連れていって貰うというイベントが有るはずです。


私は腕時計を確認します。


残り一分。


クラウチングスタートの姿勢で待っていると、後ろから声を掛けられました。


「あなた、何をなさっているの? 」


振り替えると背の高いヒールを履いているが為、婚約者の王子より背が高く見えてしまっている金髪ダイナマイトボディな婚約者、エリザベス・チューダー公爵令嬢がいました。


気味の悪い物を見るような視線でこちらを見ていらっしゃいます。


そう、この方、私をよく「平民の分際でうんぬん~」「生まれが知れるわねかんぬん~」等々言ってくる人です。


そして、王子の婚約者なので当然私のライバルです。


その方を見たとき、そして残り30秒を切った時計を見たとき、私の頭の中にふと、前世の思い出が浮かびました。


山道を走り、転んで頭と足を擦りむき泣きじゃくって父の背中に乗せて貰った思い出です。

あれは、痛かった。そう、とても痛かった。


これから私は王子と正面衝突し頭から血を流さねばならないが、痛いのは、嫌だ。純粋に嫌だ。


そして目の前には日頃チクチクと悪口を言ってくる憎き悪役令嬢。


殺ることは1つ!


私はクラウチングスタートから素早く立ち上がり、エリザベス公爵令嬢の背後に回りました。


「ひっ!? 」


まさか私が自らに危害を加えようとは思いもよらなかったであろう。


エリザベス公爵令嬢は青ざめたが咄嗟に動くことはしませんでした。


蝶よ花よと育てられた令嬢に反射神経なんぞ備わっていないだろう。

フッ、この甘ちゃんめ!


私はエリザベス公爵令嬢の背中を力一杯突き飛ばしました。


「キャーー!!! 」

「わっ、ちょっと!? 」


角でドンッと大きな音がしました。


王子にエリザベス公爵令嬢がヒットしました。

ボーリングの玉がピンに当たるようにぶつかりました。


私は我に帰りました。


平民の分際で公爵令嬢をボーリングの玉にして王子にぶち当てた。


不敬罪以前に傷害罪です。


はい、オ・ワ・タ。


そう思いながらも、私は恐る恐る角から様子を見ました。


ここで直ぐ様逃げなかったのは、単に足が震えて動かなかったからです。


エリザベス公爵令嬢がうつ伏せに倒れています。


あれ? 王子は?


よく見たら、王子はエリザベス公爵令嬢の下敷きとなっていました。


そして、あろうことか王子の顔が、エリザベス公爵令嬢のボーリングの玉、じゃなくて大きなお胸の間にバッチリ挟まっていらっしゃいます。


気がついたエリザベス公爵令嬢は素早く王子の上から飛び退きました。


エリザベス公爵令嬢の退いたそこには無傷の王子。


良かった。二人とも無事です。


王子も起き上がりますが、顔が真っ赤です。


エリザベス公爵令嬢が深々と頭を下げて何事か言っています。それに対して王子はおろおろと対応。


やがて二人とも赤くなってうつむいてしまいました。


なんか、良い雰囲気になってませんか?


ようやく動き始めた足で私は学校へと向かいました。


正直もうイベントとか王子とかどうでも良くなりました。


それ以上に、あの行動が罪に問われないかが心配でした。


次の日、そしてまた次の日、なんと私は特に問題もなく生きていました。


そしていじめも減りました。


なぜならいじめの筆頭が王子とラブラブだからです。


幸せなら人をいじめる気持ちは減るんだな、と思いました。


この時学んだ教訓は、命あっての物種です。


命を大事にしたいと思いました


ので、


魔力が出なくなったと嘘をついて実家に帰りました。





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