第三夜
小説が上手くなりたい
「寝れない」
布団に入ってからどれだけの時間が経っただろう?もはやそれすら分からないくらいにハッキリとしてしまった意識の中で、先程まで頭に浮かんでいたくだらない妄想を掻き消して俺はそう呟く。
明日も平日である以上学校があるわけで、健康不良児であり、態度も不良な俺としては明日こそは全授業で起きているベく、なるべく早く寝たかったのだが、寝れてないものは仕方ない。
(あ、喉乾いた)
しかし今更布団から出るのも億劫だ。俺はとりとめもない思考をやめると大人しく目を閉じた。
(……気になる)
どうにも気になる。我慢できないほど、と言うか殆ど感じないほどの渇きなのだが、それが逆に寝ようとする俺の精神を逆なでする。
しかし如何せん身体が重い。立ち上がろうとしたが、指一本動かなかった。まぁ、いい加減寝れずに疲れてもいるし、そもそも今日は忙しかった。本当に早く寝てしまいたい……。
(寝よ)
俺はいい加減諦めて目を閉じることにした
……ちょっと待てよ。何かおかしくないか?
なにか違和感を感じる。俺は目を閉じたまま考える。
俺が今日一日、忙しかったことに間違いはない。それなりに忙しい、いつも通りの日々を過した。
けど、だからって布団から立ち上がろうにも指一本動かせないって程に疲れてはいないよな?と言うか、そんなに疲れていたらもう寝ていてもいいはずだ。
だとしたら、俺はなんで疲れているんだ?
いなや既視感に囚われている。この展開はどこかで経験した気がする。
どんどんと重くなる身体で俺は必死に考える。
(そう言えば、昨日も寝つきが悪かったよな……?)
昨日はどうやって寝たんだっけ?俺は思い出そうとして、記憶を遡る。
(……昨日は動画をダラダラ流しながら寝落ちしたよな。あれ?じゃあ寝れなかったのは一昨日か?いや、そんな事ない……もっと最近の話だったはず……)
そして俺は押しつぶされそうな程に重くなった身体で思い出した。
(さっき見た、くだらない妄想の中だ)
どんどんと頭が冴えてゆく。
(そうだ、寝れないって言って目を開けたのは、今が初めてじゃない)
嫌な予感はどんどんと強くなる。
(……ループしてる?)
俺はやけに既視感のある答えへとたどり着いた。
致命的な予感とともに閉じていた目を開ける。
悪魔が俺の顔を覗き込んでいた。
耳まで裂けた真っ赤な口に笑みを浮かべたそれは、黒く邪悪な顔の真ん中にある黄色に淀んだ目でこちらを見ていた。
やがてそれは動けずに凍りついた俺の顔に向かって、骨ばった指を向けると口を動かした。
(セイカイ)
その瞬間、悪魔の顔が喜悦に歪むと同時に、俺の身体は押し潰された。
寝起きが悪い。
寝たはずなのに疲れが取れない。