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5 光魔法が羨ましい

 王子を追い返した私は、再度魔法の勉学に勤しむ。


 不思議と晴れ晴れした気分。

 これも王子が屋敷から出ていったお陰ね! 私にとってマクロ王子との時間というのは毒ガスに犯されているような気分になるし、少なからず気を遣わないといけないので、本当に疲れる……。


「失礼します」


 声が聴こえたが、それは丁寧な感じの声。使用人が入ってきたのだ。そのことを特に気にも留めなかった。粗方部屋の掃除だのをしているので、そうと感じていたが、案の定そうであった。

 やがて、掃除をするのを終えたのか、掃除をしている音が聴こえなくなり、自然と『失礼します』という再度の声に耳を傾けていたのだが、その声は訪れなかった。


「アリシアお嬢様、魔法のお勉強ですか?」


 欠伸混じりにペラペラとページを捲っていると、横から新たな人物が顔を覗かせた。


 今日はよく人に絡まれるわね……。


 その少女は無垢な声でそう聞いてきたきた。私は特に気にも留めないように自然に返した。


「ええ、一緒にする?」


「うん!」


 聞き返すと直ぐに元気よく返事をしてくる。


 彼女の名前は、コルトちゃん。

 私と同い年の現在八歳。

 彼女も魔法が使えるため、メイド見習いからメイドになる頃には魔法第二学園に入学する予定だそう。

 だから、私も魔法第二学園に行く予定なので、同級生になるであろうのがコルトちゃん。

 そして、多分、私が魔法が使えるようになってから向こうから話し掛けてくる回数が二十倍くらいになった気がする。


 いや、二十倍は流石に盛りすぎか……。


「コルトちゃんは何の属性魔法が使えるんだっけ?」


 取り敢えず、彼女の使える魔法について、質問すると、コルトちゃんは、控えめに微笑をする。


「アリシアお嬢様には遠く及びませんが、風と光が使えます」


 な、なんですって……。

 光が使えるなんて……光が苦手な私にとっては少し、いや凄く羨ましい。

 彼女の声色から読み取るに、私よりも得意な感じだろう。


「……お嬢様? なんでそんな渋い顔なんです?」


 あらあら、顔に出てしまったようだ。


「こほん、別にそんな顔していないわ。それより、光属性の魔法について、その、少し教えて貰えないかしら?」


「……? はい、良いですよ」


 結果的には、私が彼女に光魔法の感覚を教えて貰い、私は彼女に他の属性魔法について、使うこつのようなものを話していた。


 魔法に関しては言えば、知れば知るほど上達するので、私でも光魔法で一流になる可能性だってゼロではない。されはコルトちゃんも同じ。ある程度までは、努力で上がれるので、私たちは必死に学ぶのだ。


 だって、光魔法って素晴らしいじゃないの!

 閃光で、相手を怯ませて、その内に逃げることも出来るし、陽動とか、空に打ち上げて、合図に使うとか、私的に心を擽られる要素が満載。正に私が求めていた魔法……なのに、苦手という……うん、残念すぎ。


 そう嘆きながらも、私とコルトちゃんは、談笑を挟みながら魔法について語り合い、教えあった。



◆◆◆



 気が付けば、日が傾き始める。


 コルトちゃんに声を掛けられたのが確か九時頃で、今がやや日が真上から横に寄っているので、恐らくは、十二時少し過ぎた頃だろうか。

 そこまで長い時間話していたつもりでは無かったのだが、夢中になると時間を忘れてしまうというのは、本当である。熱中することは良いことなのだが、この時間感覚が狂ってしまうのがデメリット。


 何でも集中すると時間が経ちすぎて気が付いたら翌日になっていたとかあるものね、……あるわよね?


 私がその時間の経過具合に気が付いたようにコルトちゃんも同じなようで、おもむろに立ち上がった。


「ええっと、では、そろそろ仕事に戻りますね」


「ええ、長い間引き留めてしまってごめんなさいね」


 しかし、私の発言に否定の意を示すように首を横に振る。


「いえ、楽しかったです。また闇魔法とかについて教えてくださいね」


 そう最後に告げたコルトちゃんは我が家ご用達のメイド服の裾を軽く持ち上げて会釈し、それから仕事へと戻っていった。


 そう言えば、私から誘ったけど、声を掛けてきたのはコルトちゃんだったわね。


 主に私が語る闇魔法にコルトちゃんが興味を示し、私は特に欲しかった、というか上手く使いこなしたい光魔法のことを聞き漁った。


「はぁ、……羨ましいわ」


 囈言に近いくらい辺りに聴こえないような呟きを無意識にしてしまった。


 聞けば聞くほど光魔法が欲しくなるし、話せば話すほど闇魔法の利用価値が分からなくなる。それはコルトちゃんにとってもそれは同じようで、私が闇魔法について話しているとき、目が凄くキラキラしていた。こんなにも人の目は輝くのかと思ったくらいだ。


 私は暫く魔法についてコルトちゃんと熱弁していたからか、疲れてしまったようだ。

 パタリと魔法の本を閉じ、ボーッとする頭を左右に動かして渇を入れる。


 眠りたくなるような退屈な日常だが、それでも私にはやることが山ほどあるのだ。

 王子から殺されないように立ち回ることこそ、私の本来の目的。


 折角なのだから、魔法を極めて、こじんまりとした店でも出して、魔法について商品を販売できればのんびりした人生を歩めそう……なんてことを考えている時。再び部屋の扉はノックされる。


 誰なのよ……本当に今日は慌ただしいわね……。


「おーい、聴こえてる? ごめん、部屋に茶色の皮袋とか落ちてない?」


 結局訪問者は、部屋に私物を忘れてしまって、取りに来たマクロ王子であった。なんでまた来たのよと呆れつつも、早く帰って貰うために王子の探し物を部屋を見渡して探した。


 はぁ……なんなのよ全く。


「あったわよ……」


 部屋の四隅に落ちていた皮袋を拾い上げながら、彼にそう伝えると、「そっか、良かった。それが無いと大変だったんだよ」なんてことを呑気に扉越しで言っていた。イラッとしたので勢い良く扉をオープンし、顔面に投げ付けてやったが、それで嬉しそうに「ありがとう」等と言われると、彼の感性がどうなっているのか、気になってしまった。


 こいつ……叱られて喜ぶマゾよね、確信だわ……。


「じゃあ、折角来たし、少し話でもしていこ……」


「ああ!! 探し物が見つかったのならさっさと王城に帰りなさい!!」


 最後は面倒だったので半ら強引に敷地の外へと追い出した。

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