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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ある男の命日

作者: 誠 -マコト-

初投稿、短いです。

軽い気持ちで楽しんで頂けたら幸いです。

 そこは広い部屋であった。

 部屋の入り口である大きな扉からまっすぐに赤く、かなり質のよい生地で出来ている絨毯が伸びていることがわかる。絨毯の先には大きな椅子が置かれていた。玉座と呼ばれるものであろう。玉座の周りには豪華な燭台があり、天井にはこちらも豪華なシャンデリアが吊るされている。


 玉座には一人の若い男が腰掛けている。しかしこの広い部屋には他に誰も居らず、ガランとしている。その上燭台があるにも関わらず部屋は薄暗く、おどろおどろしい雰囲気が感じられる。


 それもそのはず、と言っては偏見が過ぎるであろうか。男は世界中の魔族の頂点に立つ者であり、すなわち魔王であった。

 魔王とは全ての魔族の中で最も魔力が多く、最も魔力の扱いに長け、最も強き者が選ばれる。しかしそのように都合よく能力を兼ね備えた者など現れることはなく、基本的に実際の戦闘能力が一番高い魔族が魔王の座に就くことが慣習となっていた。


 だが今代の魔王は違う。魔力量では№2の10倍を超え、魔力の扱い於いては筆頭魔術師より巧みに操り、いざ戦闘になれば他の追随を許さぬ実力を持つ、歴代最強とも謳われる魔王であった。


 そんな最強の男にも友は居り、皆魔王軍の幹部として魔王城に仕えるか、重要拠点の領主として軍務に励んでいた。

 しかし、現在なぜ玉座の間に魔王が一人なのかと言えば、すでにこれまでの長きに渡る人間との戦争により、亡き者となっていたからである。

 まず地方にいた魔族たちから各個撃破されていった。そして今現在勇者一行は魔王城に攻めて来ており、魔王を除く全ての兵が勇者の足止めに向かっていた。勇者一行は確実に魔族を一人ひとり殺し魔族は滅ぼされるだろうと魔王は確信していた。




 ここで話は変わるが魔王には幼少の頃から趣味があった。特に珍しくもない読書と言うありきたりな趣味である。


 ジャンルを問わず、歴史や地理、魔力運用に関する論文に自己啓発本など城にある本や無い本も取り寄せ読み漁った。

 そんな魔王が一時期とても嵌っていたものが子供の寝物語に読み聞かせるような物語である。しかも魔族が人間を倒すお話だけではなく、勇者が魔王を倒すまでの人間が主人公のお話も多く読んできた。

 内容は決まって、勇者が旅立ち、仲間を集め、困難を乗り越え、そして最後に魔王を倒す。そんな話である。詳細は違えど大まかなストーリーは変わらない王道の勇者のサクセスストーリーである。


 魔王は数多もの同ジャンルの物語を読み面白いと感じながらも疑問を覚えていた。


 「なぜ勇者一行は魔王と言う強大な敵と戦うのに3,4人と少人数で挑もうとするんだ?」

 「そもそも城攻めだろうが。いくら少数精鋭とはいえ無理があるだろう」

 「作品の中には勇者一人って。いやいくらなんでも・・・」


 ・・・と。




 話は戻り魔王城の玉座の間に一人残る魔王。かつて物語に感じた疑問を勇者一行に城に攻められ思い出していた。


 「あの時余計なことを考えたのがわるかったのかなぁ・・・。確かに勇者たち3,4人はどうなんだって言ったけどさ」


 魔王は立ち上がり窓から城下を眺める。




 「・・・勇者が連合国の軍隊を率いて来なくたっていいじゃんか・・・」




 城下には五十万はくだらない数の人間の兵士が魔族を蹂躙していた。目に見えるだけでそれだけの数が揃っており、反対側の窓から観た景色にも同じような光景が広がっているだろう。

 そしてすでに城内に勇者や精鋭部隊が入って来ており玉座の間までまもなく到着することが分かっている。


 「さて、先に逝った仲間たちに笑われない様に最期くらい真の魔王ってやつを見せてやりますか」


 そう魔王が嘯き玉座に腰掛けた時、大きな音とともに扉が勢い良く開かれた。


 「ついにここまで辿り着いたぞ!魔王!」


 「フハハハハッ!良くぞここまで来たな。勇者よ!」





「「今日が貴様の命日だ!!!」」




城攻めには3倍の兵力が必要だって言いますよね。

魔王と同じ疑問を持ったのは私だけでは無いはず・・・

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