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ゾンビ愛、国を越えて……



 私の夫はカナダ人だが、日本のアニメやゲームが好きだ。サブカルチャー好きのルーツは、メキシコ時代にさかのぼる。彼はカナダで生まれたが、幼少期は両親の仕事の都合で、メキシコで長い時間を過ごした。



 彼が子どもだった頃、当時のメキシコでは(いや世界中で)日本のアニメブームが起きていた。彼もそのブームの恩恵を授かり、『宇宙戦艦ヤマト』や『キャンディ・キャンディ』などを見て育った。



 彼の年代にしては、古いアニメのタイトルが並ぶが、海外での公開ゆえ、どうしてもタイムラグが生じる。現在では、日本とカナダでほぼ同時期に日本のアニメが公開されたり、ゲームがショップに並んだりするが、以前はかなり時間がかかったのだ。


それはともかく、日本のアニメや特撮を見て育った彼は、立派なオタクへと成長する。



 夫はゲームも大好きで、主にシューティングゲームをプレイする。ゾンビやらエイリアンやら悪人やら、ゾンビやらゾンビやらを撃ちまくる、いわゆる典型的な「洋ゲー」が好きだ。



 彼の大好きなゲームはいくつもあるが、中でもお気に入りなのが『バイオ・ハザード(英題:Resident Evil)』。ディレクターの三上真司さんを敬愛している。



 以前、「何故そんなに君たちはゾンビが好きなんだ?」と聞いたところ、「何故そんなに君たちはRPGが好きなんだ?」と聞き返された。ぐうの音も出ない。



 そんな夫と同居し始めてしばらくのことだった。彼が一人でシャワーを浴びているときに、何かを言っていることに私は気づいた。私は隣の部屋にいるため、何を言っているのかまでは聞き取れない。ただ、シャワーの流れる音に負けないくらいの大きな声で、何かを叫んでいる。



 私は耳を澄ました。とぎれとぎれだが、なにやら「Shitくそったれ」と繰り返しているようにも聞こえる。



 私は困惑してしまった。普段は滅多に叫んだり声を荒らげる人ではないのに、一人でいるときにそんな汚い言葉で叫ぶだなんて、ちょっとこの結婚を考え直したほうがいいのだろうか、と将来に不安を感じた。



 そこで浴室から出てきた夫に、さりげなさを装って、「何を一人で叫んでいたの?」と聞いてみた。すると夫は顔を赤らめてもじもじし、言いにくそうに打ち明けた。


「実は、シャワーを浴びていたら、Resident Evilのことを思い出して……興奮してきて、三上真司って叫んじゃった」




 あれはShitシットではなくShinjiシンジだったのだ!




 さすがの三上真司さんも、カナダ人の大の男に風呂場の真ん中で名前を叫ばれているなんて、想像すらできないだろう。



 私は唖然とし、別の意味で結婚に不安を覚えたが、それよりも面白さが勝ってしまった。


 時を超え場所を越えても、オタクはオタクでしかないのかもしれない。


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