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さん






これは一体何が起こっているのだろうか…。




「あの、姫君…今は殿下とお茶のお時間では…」

「殿下の許可は得ています。」

「なにかご用件がおありでしょうか…?」

「…貴方を見ているとなんだか心がざわつくわ…」

「え、ざわ、え…?」




その距離15センチ。

私は今、殿下の婚約者であらせられる姫君と部屋で二人きり。しかも椅子に座っている私を覗き込むようにマジマジと見てこられるものだからどうしていいやらわからなかった。



「姫、何かわかったかい?」



ガチャリ、とノックもなしに入ってきたのは殿下だった。普段ならノックの件を注意するだろうが今はそれどころではなく、彼が救世主にすら思えた。



(やっと解放される!)



見られ続けてかれこれ一時間経とうとしていた。従者が待つ控え室に姫君が入ってこられた時も驚いたが、私などを一時間も見つめ続ける姫君の真意がわからない…。







「粗方は…でも手をかけると輝きすぎてしまう可能性があるわ。」



ふう、と真剣な表情で溜息をつく姫君。

美しいブロンドがさらりと揺れる。

姫君の名は、パトリシア・ウォーカー。実際はもっと長いらしいが略すとこうなるらしい。噂では美しいと有名だったが、それは噂通りの姫君だった。美しく、凛々しく、中性的なお顔立ち。蒼い瞳に美しいブロンド、とまさに絵に描いたような姫君だった。

少し以外だったのは中性的なのはお顔立ちだけではなく、その性格も甘やかな女性というよりは青年のような爽やかさをもっていたことだった。




そんなパトリシア様からのガン見。

拷問である。

思わず「私はゴミです」と言いかけるほどの拷問だ。美しい絵画のような方だもの私なんてゴミといっても過言ではない。

しかし、その真意がわからなかった。



察するに殿下は承知のことのようだが、一体なんだというのか…とりあえず早く終わらせていただきたい。切実に。





「眉はもちろん、メガネを我が国の最新技術を使いやめさせる。そして顔の産毛を剃り、しばらくは化粧より肌のコンディションのためにスキンケアをし、それから化粧とスキンケアを併用して…髪は週に二度のパックを義務付け、ストパー?いや、いっそパーマでゆるく大きなウェーブを…?しかし彼女にパーマの手入れが出来るかしら…何か足りない…うーん、危うさ?いや…」





ぶつぶつと、なにやら腕を組み難しそうな顔の姫君。それを殿下が微笑ましく見ている。

あ、仲は良さそうで安心。と側近らしさを滲ませた所で姫君がパッと顔を上げた。



「ギャップ!!!」



彼女は叫んだ。

え、ぎゃ?え?と戸惑う私と感心気な殿下。いやいや、「ほほう」とか言ってないで、殿下もどうせわかってないでしょ、と思わないではない。



「殿下、わかりましたわ。」

「お聞かせ願おう。」




近くにあった適当な椅子に二人はそれぞれ腰掛けた。

姫君がなにやらキラキラした表情で私を見ている。なにを言われるやら不安だが悪いことではなさそうだ。





「貴方の輝かせ方、思いつきましたわ。」

「……ん?」



私には理解のできない言葉だった。

コノカタハナニヲ…。



姫君の提案(?)はこうだった。


一、眉を整えろ

二、メガネは仕事中のみ

三、姫君の指定した美容院に通うこと

四、制服をスカートスーツとポンチョに

五、二月ほど毎朝姫君の所へ行くこと




これが義務付けられた。

理解できないまま了解する。




「殿下、これは一体…」

「彼女ね、国では密かに出版社を経営して女性誌を出してるんだって。」

「はぁ。」

「彼女が言うには君は原石なんだってさ」


にこにこと殿下はご機嫌らしい。

姫君はうんうん、と頷いている。どうやら嘘ではなさそうだ。


「こんな素敵な殿下の側近が原石のまま黒子の如く働いているなんて堪えられません…でも仕事中は今までのような美しいながらも控えめな隠れに隠れた埋もれる原石の美しさで、仕事が終わってからはまるで違う美しい蝶のように明るい人生を楽しんでほしいのです!」

「ひ、姫君…」

「だからそのメガネは度なしにして仕事中はかけておいてください。貴方の視力は私が手配して治して差し上げます。」



「安心して、身を任せて頂戴。」とそっと私の手を包み込むパトリシア様。

空気に飲まれたとはこのことか。


いつのまにか私は目を潤ませて感動してしまっていた。こんなに私のことを評価し、成長させてくれようとするなんて…まるで村のみんなや殿下に初めて出会った時のような暖かな心境になった。




このノリに乗せられよう。

私と姫君との秘密?の特訓が始まった。

「パトリシアの人たらし振りは相変わらずだね。」と殿下が呟いような気がしたが気にしない。






そんなこんなで私は変わったのである。













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