心と体
まだ物語は始まりません。
内容自体は短いのですぐに読み終わるかと思います。
自分の趣味がおかしいってことはもうずっと前から気づいていた。
中学生の頃、部活の後輩が河原で拾って肩とか言っていた、いわゆるエロ本を一緒に見たことが気づくことになった契機だろうか。
半裸の女性が、写真の中でソファーに這い蹲り、視線はこちらに向け、扇情的な表情を浮かべていた。
一緒に見ていた部活の同級生の股を見れば、ポコリと小さな山ができていた。
それは彼に限った話ではなく、一緒に見ていた他の部員たちにも同じことが言えた。
しかし、僕にはそんな気配がなかった。
頭の中では多分、興奮していたんだと思う。
下半身に血が集まるのも感じていた。
でも、あまりそこまで興奮しなかった。
家に帰り、シャワーを浴びて部活で汚れた体を洗った。
当時僕はテニス部の部長を務めていて、それほど女性に対して興味もなかったからむっつりすけべなのでは、じゃあむっちゃんって呼ぼう。
なんて、同級生や、後輩からそんな不名誉なあだ名をつけられていた。
帰宅した家の中には誰もおらず、リビングには母さんが作り置きしてくれていたのだろう、卵焼きと焼き魚が乗ったプレートが置かれていた。
ご飯を炊飯器からつぎ、プレートと一緒に電子レンジで温める。
「いただきます」
食事の前にはきちんと手を合わせ、命をくれた食材たちに感謝する。
「ごちそうさまでした」
食べ終わったら食器をシンクに運び、水につからせる。
いわゆる僕はぼっちというやつで、午前中だけで部活が終わった日なんかは、ずっと家の中でダラダラしているか、勉強しているかだった。
おかげで学校での成績はだいたいいつも一桁の順位をキープしていた。
田舎の中学で、平均点が低かったというおかげもあるけど。
まあ、どこの学校にも一人か二人はいる、コミュニケーションが苦手な秀才タイプの人間だった。
部活のキャプテンという肩書きも、いつの間にか先生から強制されてなったものだった。
「…暇だな」
リビングの大きな窓辺にあぐらをかき、正面にある少し大きな?山というか、林というか、まあ、緑をじっと見つめて時間を潰す。
太陽光が窓から僕を照らし、体がポカポカしてくるとだんだん眠くなってきた。
なので、自室に戻り、ベットにくるまり午睡をとることにした。
目が覚めたのはだいたい6時ぐらい。
キッチンの方からは、いつの間に帰ってきたのか母さんが何かを調理している音。
「あ、おきたんね、おはよう、もう夕方よ?」
「んー、眠いから寝よった」
寝ぼけ眼のまま、リビングに向かい、テレビをつける。
「本日、〇〇国の首相が〜〜」
チャンネルを色々と変えてみるけど、田舎と放送局だ。
そもそも選べるチャンネル自体が少ない。
結局面白そうなのはなかったので、たまたま初めについていたニュースを見ることにする。
「かあさん、なんか日本にあん人来るらしいよ」
「んー?そうねー」
明らかに話を聞いてないと思われる返事。
僕としてもそこから会話を始める気も別になかったので、ぼんやりとテレビを見つめる。
気がつけばいつの間にか空は真っ暗になっていた。
できたばかりの晩飯を、テレビを見ながら食べる。
方や育ち盛りの中学生。
方や、無駄に食事を減らそうとする中年のおばさん。
食卓に並べられたご飯の量には大きな差があった。
物量的には大きな差があったけど、食べ終わるのは僕の方が早かった。
「ごちそうさまでした」
食器を重ね、母さんの分も空いているのがあればシンクに運び、部屋に閉じこもる。
途中、母さんが何か言いたそうな顔をしていたけど、なにみ言わなかった。
布団をかぶり、また眠ることにした。
僕は、まあ周りと比べるなんてことしたことないけど、よく夢を見る方の人間だと思う。
枕の下に絵本を置いておけばその夢が見れる、なんてよく聞くけどそんなの無くても目をつむり、最近読んだ本の内容を思い出せばそれに関する内容が出てくる夢を見ることが多かった。
今日も今日とて、先日読んだライトノベルの内容を頭の中で映像に書き換えて再生する。
その日はたまたまファンタジーの本だった。
読んでくださり、ありがとうございます
アドバイス等あればよろしくお願いします