多くの商品はお客様の為にあります 第八話
今日は強い雨が降っている。
『あーあ、すごい雨だなぁ~』
俺はレジから外眺めていた。
夜勤はそろそろ終わるのだが、雨は止む気配はない。
『帰り、どうしようか……』
そんな風に考えていると、シュップさんがやってきた。
駐車場からそんなに距離はないはずだ。
それなのに、ずぶぬれである。
入口で服についた水分をぬぐっている。
その後、シュップさんは奥に向かっていった。
「今日はサンドイッチかな?」
予感的中、サンドイッチと珈琲を持ってレジにやってきた。
俺は、それにシュップを加えてスキャンをする。
「今日の雨はひどいですね」
俺がそう言ったからなのか、シュップさんは傘を追加してきた。
コンビニの傘で凌ぎきれるのか分からないが、俺にはそれは関係ない。
購入して頂けるのなら、店としてはそれでいい。
「風邪ひかないようにしてくださいね」
「あぁ、ありがとう」
いつも通り、声が小さい。
「898円です」
シュップさんが財布から1000円札を取り出す。
そして、小銭入れを確認する。
今日は1円玉あるのか?
それとも5円玉と1円玉3枚か。
どちらで攻めてくるんだ、シュップさん。
8円だせるのか、シュップさん。
俺の手が汗でにじんでくる。
心なしか、シュップさんの額にも汗がにじみ出ているように感じる。
シュップさんの手が止まった。
1000円札を俺に差し出す。
やはり駄目だったか。
俺はレジの上に1000円を載せ、お釣りを渡す。
「ありがとうございました~」
シュップさん、残念でした。
今度は、1円玉を多めに用意しておいて下さいね。