多くの商品はお客様の為にあります 第七話
深夜のコンビニは寂しいものだ。
夜で車の往来も少なく、来客もいない。
有線放送の声が大きな音に感じられる。
俺はそんな中、ダンボールを外のゴミ箱に持っていく。
「うわっ、さむっ」
俺は、ダンボールを廃棄したらすぐに店内に戻る。
お客は一人もいない。
そこにいるのは店長と俺だけだ。
閑散としたコンビニは奇妙だ。
多くの商品があり、光が溢れている。
それにも関わらず、お客が誰もいない。
このスペースを2人で独占しているのだ。
何だか贅沢な気分だ。
この感覚はバイトをした人間にしか分からない。
「うーん、なんかこの感覚はムズムズするなぁ」
俺がそんなことを考えていると、店長が声をかけてきた。
「休憩しようか」
この時間帯はお客も少なく、定例の業務もない為、休憩時間に充てられる。
この時間帯は夜食タイムだ。
自宅から弁当を持ってくる者もいたが、ハンバーガーが無料で1品支給されるので、俺はハンバーガーを選択する。
「今日は何にする?」
「パストラミバーガーにします」
ファーストフードは自分で作り、それを持ってバックヤードまで行く。
店長の横にあるパイプ椅子に座る。
「頂きます~」
何気にこの時間が楽しみなのだ。
無料で、コンビニのファーストフードを楽しめ、お金ももらえるなんて、
何て贅沢な暮らしをしているんだろう、俺は……
そんな考えをしていると自然と笑顔になる。
店長がそれを見て、
「お前の笑顔いいなぁ。
それをレジの時に出してくれよ」
「俺、そんなに仏頂面ですか」
「いや、そう言うわけじゃない。
だけど、今の笑顔を出してくれれば、かつさんも浮気しちゃうぞ」
「そんなによかったですか」
「そうだよ、100万ドルにも匹敵する笑顔だよ」
「店長、、、あれは電気代が100万ドルということですよ」
「まぁ、それほど、光輝いていたということだよ」
俺は店長の独特な表現に苦しむのであった。