多くの商品はお客様の為にあります 第六話
今日は土曜日。
店長の週一回の休日の為、バイトのみで業務を回すのだ。
その山本君がインフルエンザになってしまった。
急遽、山本君と相良さんが交代になった。
今日は相良さんと一緒になる。
初めて会う人なので、少し緊張する。
いきなり怒鳴られたらどうしよう、うまく仕事を連携してできるのだろうかなどと不安は尽きない。
『笑顔を安売りするイケメン23歳』というのは店長の表現。
相良さんの到着は22時30分くらいになってしまうらしい。
それまでは、夕勤の田中さんが残ってくれていた。
このツンデレ系少女にはまだ慣れない。
どう対応したらいいのかが分からないのだ。
まぁ、特に話す必要もないので、俺は夜勤業務を進める。
入口のドアの音が鳴った。
俺がその方向を見ると、ジャニーズ系の男性が入ってきた。
もしかして、この人が相良さんか。
田中さんの反応から、俺の勘が的中していたことが分かった。
「お疲れ様です」
俺も続けて、
「店長から聞いているよ。
唐木田君だっけ?」
「唐松田といいます。
よろしくお願いします」
「あぁ、ごめん。
人の名前間違えるなんて、俺、さいてーだな」
額に手を当てて、大げさにリアクションする。
俺は少しひいてしまった。
もしかして、ナルシストなのか。
リアクションの大きい人はナルシストって感じがする。
そんな風に思っているのは俺だけか?
俺だけなのか?
相良さんが、着替えを済ませ、外に出てくる。
「相良勝馬、よろしくな」
半身になって、身を乗り出すようにして握手をもともめていた。
駄目だ、俺、この人、苦手。
「よろしくお願いします」
俺は手を差し伸べて握手をした。
しかし、こういう人、駄目だ。
「いらっしゃいませ」
げっ、こんな時にかつさんまでやってきた。
もう、俺の苦手な人ばかり集まるな。
俺はもう、定例業務しかやらんぞ。
調理器具の洗浄をしていると、かつさんがレジにやってきた。
レジは相良さんがやっていた。
やっぱり相良さん目当てなのだろうか。
俺は調理器具を洗いながら横目で見る。
「うへぇ、何だ、あの量は!」
籠一杯に色々な物が入っている。
2ℓジュース、ポテトチップス、チョコレートなどなど。
これから宴会か、というくらいの量だ。
「1826円になります」
さらに、相良さんが合計の値段に俺は驚いた。
コンビニで1500円越え、複数人で飲むのなら分かるが、、、
かつさんは支払いを終えると帰っていった。
「すごい量買っていきましたね」
「そうか、いつもよりは少ないぞ」
普段はどれだけ買っているんだ。
それにしても、コンビニ店員目的で1500円も超える買い物とは。
オソレイいります。