多くの商品はお客様の為にあります 第五話
やってくる。ほぼ毎朝、シューホープの煙草を購入する少し太めの中年男性がやってくる。
日によって、おにぎりだったり、サンドイッチだったり購入物は異なるが、
シューホープだけは欠かさない。
この為、従業員の間では、シューホープの略称のシュップから『シュップさん』と呼ばれている。
今日は、おにぎりとお茶だった。
俺は、事前にシュップを準備しておき、商品に加える。
「今日は冷え込みますね」
「、、、」
特に反応はない。
いつものことだ。
でも、話しかけられるのは好きなのか、少しシュップさんの顔がほころぶところが好きだ。
俺は続ける。
「体調はどうですか」
「まぁまぁ、、、」
声が小さい。
「784円です」
シュップさんが財布から1000円札を取り出す。
そして、小銭入れを確認し始めた。
そう、シュップさんは小銭を出したがる。
必ず小銭を確認するのだ。
俺はそれを待つ事にも慣れてきていた。
1円玉を探しているようである。
俺はそれを見て1000円札はそのままにしてある。
シュップさん、1円あるのかな。
少し表情が緩んだ。
あるんだ、あるんだな、1円玉。
数を数えている。
1つ、2つ、3つ、、、
1つ足りな~い、そんな声が聞こえたような気がした。
「1000円で……」
心なしか、残念な表情をしている。
「ありがとうございました~」
店を出て行くシュップさんの背中は少し寂しそうだった。
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